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「シリーズ デジタルプリント」第11回 OKIデータ・前編 大判プリンタ事業は高生産性で優位

【2018年3月14日】新たなデジタル印刷の潮流を探る「シリーズ デジタルプリント」。
11回目の今回は、OKIデータで話を聞いた。
OKIデータはOKIデータ・インフォテックを子会社に持ち、生産性の高さで支持されている大判のインクジェットプリンタ(IJP)「ColorPainter」シリーズを販売。また、OKIデータでは「MICROLINE VINCI(マイクロライン ヴィンチ)」を5年前に発売し、白色を搭載したトナープリンタというユニークな製品をヒットさせた。

大判IJPはOKIデータ商品事業本部インダストリープリント事業部の竹内宏之部長に、「MICROLINE VINCI」については、同事業部の宮本裕美チームリーダーにそれぞれ話を聞いた。

前編では大判IJPについて竹内宏之部長に聞く。

 

OKIデータ 竹内宏之部長

――大判プリンタ事業ですが、現在のラインアップは
竹内 溶剤系で3機種を用意しています。
最も大きな「ColorPainter H3-104s」は最大メディア幅が2642 mm (104インチ)、M64s 一番グローバルで出ている「ColorPainter M-64s」は最大メディア幅が1626 mm(64インチ)。またエントリーモデルのEシリーズは、国内ではE5、最大メディア幅が1372 mm (54 インチ)となる「ColorPainter E-54s」も販売しています。
このうち国内で最も台数が出ているのが「ColorPainter M-64s」です。

OKIデータ

――「M-64s」が最も販売台数が多い理由は
竹内 このクラスでは生産性がいいというのが理由かと思います。競合他社は200万円以下の価格で、製品を上市していますが、当社の製品はそれらに比べ出力速度が高いため、生産性を重視するユーザーに好まれています。

――ユーザーは生産性を最も重視するのですか
竹内 エンドユーザーは屋内外の大判の広告出力をしている企業が多いのですが、こういった大判広告が一般化していく中で、利益を確保していくにはビジネス戦略として「生産性を上げる」「コストを落とす」「高品質で付加価値を付けていく」のどれかを選択されています。
この中で、「生産性を上げたい」と考えたユーザーが当社の製品を選択しているものと理解しています。

――ユーザーが生産性以外で求めている点は
竹内 一つは、出力物の視認性の高さ。特に屋外広告は濃度が重要で、しっかりと色を出せるものが好まれます。
また、出力量が多いお客様の中には、24時間連続運転という会社もあり、壊れた時に迅速に直せる「保守」の信頼性も求められています。


サイン&ディスプレーショウでのデモ

――今、紹介いただいたのはロールタイプのみですが、フラットベッドの展開は
竹内 要望は来ていますが自社製品は発売しておりません。基本的には「溶剤」そして「ロール」のビジネスに注力しています。
ただ、ラインナップとしては韓国のInkTec(インクテック)社のUV硬化型フラットベッドIJP「JETRIX」シリーズを日本国内で販売しています。
OKIデータ JETRIX
UV硬化型フラットベッドIJP「JETRIX」シリーズ

――「溶剤」そして「ロール」のビジネスとのことですが、ユーザーの用途は
竹内 5年前までは「横断幕」や「懸垂幕」への出力が多かったようです。
現在のユーザートレンドでは、バスや電車などへの「ビーグルラッピング」や、「電飾」を伴う広告用途が増えています。掲出場所では交通系が増加しています。

ラッピングは、貼り付けたものを痛めずに、貼り剥がしできるため、「痛車」や「ラッピング電車」「航空機」などで採用の幅が広がっています。
航空機は昔は塗装でしたが、素材の耐久性向上や、グラフィクスの複雑化から、デジタル印刷によるラッピングが増えています。

――やはり大きなくくりでは広告用途ですね
竹内 広告以外では交通広告での採用の話が増えています。
現在、大判IJPのインクは屋外耐候が約3年からラミネートをすると10年というものもあることから、交通広告にも適しています。

交通広告は、2020年の東京五輪オリンピックの影響で、書体の変更や外国語への対応、グラフィックを変更・挿入するケースが出ており、一種の特需となっています。

プリント品質もグラデーションに対応しており、従来のスクリーン印刷ではできなかった新しいタイプのグラフィックに対応しています。
特需は今年がメインで19年上期までは続きそうです。

――製品に対しての要望や課題は
竹内
 溶剤はやはり、臭気があり、これを何とかしてほしいという声はあります。お客様の作業環境、またはエンドユーザーの使用環境によっては対応できないこともあり、この点は課題です。
溶剤を弱くすれば、インクの食いつきや乾燥、仕上りに問題が出ますし、簡単には変えられないのが実情です。
ただ、こういった課題に応えて、顧客やその先の環境を良くしていくことはメーカーとしての責務と考えており、さまざまな形で解決に取り組んでいます。

OKIデータ

――ビジネスとしての課題は
竹内 サイン業者の方が主なユーザーでしたが、ほぼIJPがいきわたった感があり現在は買い替え需要がメインです。今後は建材や内装といった衣食住に近い分野へも事業拡大していきたいと考えています。
ユーザーの傾向では、大判IJPの出力のみという仕事ではなく、企画し、付加価値を付けて販売・施工するというユーザーが近年増えています。

――大判のグラフィック市場は今後どうなっていくと考えますか
竹内
 まずは現在、世界で環境対応が進んでいることが挙げられます。
プリンタそのものの環境対応ももちろんですが、出力物の廃棄への対応や、塩ビを使用するメディアが好まれないといった事情もではじめています。
使用されるメディアも環境対応、耐久性、施工しやすさなど多角的な要望から、これに合った資材が求められていくと思います。

また、産業用のプリントから衣食住に近い分野へ、プリンタの活用がシフトしています。この背景にはこれまで掲出されていた広告が、一部デジタルサイネージに切り替わるといったこともあり、これに対応した提案を求められているのです。

 

後編 白トナーで幅広い用途「MICROLINE VINCI(マイクロライン ヴィンチ)」につづく

 

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