【特集】大阪のホタルコーポレーションは昨年、ミマキエンジニアリング製のフルカラー3Dプリンタ「3DUJ-553」の世界一号機を導入。3Dプリントで1000万色を超えるフルカラーサービスを提供している。
世界遺産である軍艦島を完全再現した立体モデルを制作し長崎市や長崎大学に提供したことでもマスコミの注目を集めた。
もともとオフセット印刷を手掛ける螢印刷の子会社で、「紙以外へのデジタルプリント」を専業にしてきた同社。
3Dプリンタ「3DUJ-553」導入の目的と今後の展望をホタルコーポレーションの福永進取締役に聞いた。
ホタルコーポレーション
http://htc.hotaru-printing.com/
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――3Dプリンタ「3DUJ-553」がどういったものか教えてください
3Dプリンタ「3DUJ-553」は、1000万色を超えるフルカラーでの3Dプリントに対応しています。2Dプリンタに近い感覚で使えるマシンで、そこが気に入って導入しました。
――これまでも色を付けられるタイプの3Dプリンタはありましたが、違いは
石膏タイプ3Dプリンタでは、色を表現できるものがありましたが、造形後に劣化があり、長く残すことが難しいと聞いていました。また、プリントの色は鮮明ではなく、グラデーションなどの表現も物足りません。クオリティーを高めたければ造形した後に、人が表面を加工する作業が必要でした。
これに比べて「3DUJ-553」は、非常に細やかな色の表現が可能で、3Dプリント後に色を付けたり、磨いたりといった人の手が介在する必要がほとんどなかったのです。
――省力化できたという意味でしょうか
省力化したというだけではありません。
最大のポイントは、3DCGをつくるクリエイターが、自分の考えたキャラクターをそのまま現実世界に取り出せるという点です。
先程も言ったように、これまでの3Dプリンタでは、造形後、人が色付けをする、磨くなどの必要があり、完成品はCGクリエイターが考えていたものと違ってしまうケースが多かったのです。
これをイメージ通りにプリントできるのが、この「3DUJ-553」の最も優れた点と私は考えています。
もちろん、当社は小さな会社で、人手のかかる機械をできるだけ入れたくないというのは、その通りですが…(笑)。
――CGのクリエイター自らが色付けすることはできないんでしょうか。その気になれば立体造形もできそうですが
CGクリエイターの方たちは、ソフトの中で絵をかいたり、立体の絵をつくったりということは得意ですが、リアルで造形することはできない人が多いのです。もちろん、両方できる人もいますが圧倒的に少数派です。
――それは知りませんでした。実際にフィギュアを作成しましたか
すでにキャンペーン用のプレゼントで使用されたフィギュアで活用事例があります。
また「ゲーム用3DCGフィギュア化作戦」というタイトルを私自身がつけ、CGクリエイターと組んでゲーム用データを3Dプリントするまでのドキュメントを専門誌と一緒に行いました。
「せっかくならCG業界で有名になってみたい」という思いがあったので、積極的に売り込みに行きました(笑)。
実際にフィギュアを作ったところ、クリエイターさんに本当に喜んでいただいています。
作り手にとってモニターの中のものが、リアルな世界に飛び出してくるというのはまさに夢の世界の話で、フィギュア業界に衝撃が走っているんですよ。
――まさに革命的で、破壊的な技術ですね。しかし、3Dプリントではデータ作成が大変と聞きます
その点ですが、やはり私も心配になりまして(笑)、導入以前からセミナーに参加するなどで、勉強しました。今ではいただいたデータを3Dプリントできる状態にするにはどうしたらいいかわかりますし、簡単な3Dデータなら作れるようになりました。
これは私が昔通っていたバーの模型ですが、このデータは私が最初から起こしたものです。面白いもので、自分で一から作ってみるとわかるのですが、立体空間は丸と三角と四角でできているんですよね。そういった発見をしながらデータづくりをできるのも、この3Dプリントの仕事の楽しみです。
ただ、データでは課題もあります。
――どういったことでしょう
お客様から支給いただくデータが、おそらく石膏タイプの3Dプリンタを想定して作られているものが多いのです。このため、新型3Dプリンタの「3DUJ-553」の性能を100%活かしてきれているとは言い難いのです。
「もっと、こっちが無理というくらい作り込んだ細かいデータ持ってきてください」と呼び掛けています(笑)。
この3Dプリンタは、繊細なグラデーション表現や髪の毛の一本一本のディティールを再現できる非常に精巧な力を持っているので、これを活用できるようなデータでプリントしたいと思っています。
――さて、大きな話題を呼んだのは世界遺産「軍艦島」の立体モデルの寄贈です。テレビ局からも取材を受けたそうですね。こちらのきっかけは
これも私が仕掛けたもので、長崎大学大学院工学研究科の出水享工学博士に飛び込みでお話を持って行き。出水博士が3次元計測した3DCGデータからプリント可能な3Dデータを作成しました。
――作成はスムーズでしたか
480分の1サイズ全長約62cmという大作をつくったのは初めてのことで、最初はスケールの小さなモデルから作り始め、何度も失敗をしながら、最終的な作品を作り上げました。
最初に作った小さなモデルをキーホルダーに加工したもの
――どんな失敗があるのですか
データの不備に起因するものなどさまざまですが、最も大きな失敗は積層していくうちに、色が出ず真っ白な塊がプリントされるという現象が起こりました。我々はこの白い部分が動物の牙のように見えるので「ホワイトファング」と呼んでいます。このフルカラー3Dプリントは新たな技術なので、これまでにない現象を表現する用語がなくて勝手に作らせてもらっています(笑)。
こういった失敗から学んだことの蓄積が今の業務に大いに役立っています。現在は、長崎大学に納めた軍艦島の倍サイズにあたる120㎝の作品も作りました。
完成した作品は、「3DUJ-553」の0.02㎜という細かな積層により、島内の起伏や大型の建物などはもちろん、ベルトコンベアの支柱跡や地面の陥没箇所などまで再現しています。
――さあ、今後の展開は
まずはゲーム関係のCGを造形することを進めていきたいです。
また、美術大学や専門学校の卒業制作での活用や軍艦島を作ったようなアカデミックな展開もしていきます
今あるものを移行するだけといったビジネスではなく、当社が仕掛けて「新しい市場を創る」ということを目標にしています。
従来にはない技術を提供できますので、もっとユーザーの皆さんと一緒に使い方を考えていきたいです。
ホタルコーポレーション
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NCC長崎文化放送
http://www.ncctv.co.jp/news/49917.html
このほか、NBC長崎放送、テレビ長崎などでも報道された。
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