【2025年7月4日】中国最大規模の印刷・パッケージ業界展示会「第11回北京国際印刷技術展覧会(CHINA PRINT 2025)」が5月15日から19日まで、北京・中国国際展示センター(順義館)および首都国際コンベンションセンターで開催された。
同展示会は4年一度開催される印刷関連の展示会で、開催規模は中国では最大級で、世界の印刷資機材見本市の中でも世界最大と言われる「drupa」を超える勢いがある。
今回は、デジタルプリンティングを中心に、その周辺機器などをレポートする同展示会をレポートする。
同展示会は、前回の来場者数が約13万6000人と、すでに世界4大印刷展示会と言われる「Print(米国)」(1万5,000人)、「IPEX(英国)」(2万人)、「IGAS(日本)」(5万4000人)を超えた。今回もわずか5日間で約13万人を集め、「drupa(ドイツ)」(17万人)には勢いで勝るといったイベントになっている。
この展示会のほかにも、中国には開催規模では大きく4大展を超える展示会があり、4大展の名称は有名無実になりつつある。
「CHINA PRINT」は、出展者も充実している。日本からは小森コーポレーションやコニカミノルタ、リコー、富士フイルム、エプソンなどが、他国ではコダックやハイデルベルグ、HP、KBA、BOBST、LANDAといた大手や新鋭のメーカーが参戦するなど充実しており、これも「drupa」以外の展示会はすでに規模では抜かれた印象だ。
さらには中国ローカルの新興企業も多く出展しており、日本では見られない資機材が多数並べられた。中国製と聞くと、「価格は安いが低品質」といったイメージがあったが、その進化は目を見張るものがあり、少なくとも低品質ではない。
実際、drupaも最も多く出展したのは中国の企業で、「これなら中国の展示会に行った方が面白いものが見れるのではないか」という声も聞かれたほどだ。
この声から、プリント&プロモーションでは3月の「Print South China2025」(広州、11万6000人)、「APPP(上海広印展)」(上海、18万人)といった中国の展示会を取材してきた。
レポート①では、進展目覚ましい大判プリンタについて報告する。
広州市傲彩数碼科技は大判プリンタ「SC-1612UV」は、蒸着紙のようなメディアへプリントした。
このような反射するものへの出力はインクジェットプリンタのセンサーが「用紙がない」と誤認識してしまいがちで、どちらかと言えば苦手だが、問題なくできることをアピールしたい思惑がある。
さらにこの展示会が印刷資機材が中心の見本市であることから、ラベル印刷でよく使用される蒸着紙のような反射素材へのプリントに対応していることを示す展示のようだ。
「HY-ETG700ST」はUV-DTFのデカール用プリンタで、中国では非常に人気がある。
3月に上海で行われた「APPP(中国広印展)」でも出品があった製品で、布用のDTFと同じくインクをフィルムに転写し、それをさらにプリントしたい素材に貼り付けることで、強力に接着され、水洗いでも落ちない強度になる。金属や陶器など平滑な物品に貼りつけでき、曲面や段差があるものなどインクジェットプリントが苦手な素材へのプリントに適している。
来場者はインクが転写されたフィルムを手に取り、真剣な様子で品質を確認し、何やら議論をしていた。購入する会社は同じ機械を複数台、多い会社は10台20台と設置したいと考えているので、DTF選び熱が入るのもよくわかる。
同社ではプルーフ用のインクジェットプリンタで水性の「HY-1302」「HY-1908」を展示。
「HY-1908」は日産約1,000㎡が可能という。
担当者は「年間数千台を販売している。品質には自信があり、顧客も満足してくれている」と語った。
北京華技恒潤智能科技の「RobotJet」は、今年発売のダンボールをはじめとしたパッケージ用プリンタだ。CMYK4色水性顔料インクを使用し、フルカラー300dpi時で48m/分でプリントできる。印刷幅は1645mm以上、各プリントヘッドは329mm幅で、1~5個以上のプリントヘッドを使用可能。カートンやカード、紙袋など、オプションの組み合わせでさまざまな物品へのプリントに対応している。
Sitech(太倉新思特新材料)は、「SCAP」インクを展示した。水性インクでありながらフィルムへのプリントが可能。起動後30分で、前処理無しのフィルムへ出力でき、速乾性があり手離れも早い。ピエゾ式とサーマルインクジェットの両方のヘッドで使用できる。
この日は、フィルムを載せたロールタイプのプリンタにインクを搭載し、デモンストレーションを行った。
「印刷の展示会ということでグラビア印刷などのプルーフをイメージしたデモを行った」と担当者。
同社は秋の展示会で日本へ出展する予定だ。
JHFはボード用の大判プリンタを展示。「VENUS33X-S」は350㎡/時のプリント速度がある大判フラットベッドプリンタ。搬送装置を前後につけており真空グリッパ(吸盤)のついたロボットアームで大きなボードをテーブルに乗せ、自動搬送し、排出・スタックできる。最大出力幅は3200㎜で、出力長はテーブルによって調整可能。
同じくボード用の「HS2516」も展示し、こちらは最大出力サイズが2500✕1500㎜、最大出力速度が800㎡/時。
同社は日本でも導入実績があるメーカーだ。
希望数碼 (hope tech)もインクジェットプリンタを複数台展示した。
同社プリンタは4色水性のロールタイプで、「G3-12K」が3250mm幅の新製品。先行して発売している「G1-PRO」は1900㎜幅で、こちらはすでに10台を中国国内で販売している。
昇華転写タイプに仕様変更可能で、ヘッドは京セラ12ヘッドとエプソン24ヘッドから選択可能。
同社ではラベル印刷機も開発販売しており、デジタルで横串を刺しながら、さまざまなプリンr品具の分野に製品を供給している。
中国ではこうしたタイプのメーカーが多く、自社を「サイン・ディスプレイ」「商業印刷」「ラベル印刷」といった分野で区別せずに、持てる技術をすべての分野に投入するスタイルが一般的だ。こういた面は日本のメーカーも見習うべきだろう。
広州卡诺電子科技がインクジェットプリンタ「E120」「P130EP」を展示。
「E120」は8色のフラットベッドプリンタ、印刷見本や箱などの見本づくり、アクリルキーホルダーなどのグッズ作成に活用されている。
「P130EP」はロールタイプで、印刷用プルーフを展示した。
日本からはエプソンは新製品の水性インクジェットプリンタを展示した。
「SC-P9830」「SC-P7380」ともに印刷前出力を意識した展示で、オフセットとの少量生産に代わる高精細ぶりをPR。「P9580」では、ラベルのプルーフをイメージし、「P7380」ではポスターをイメージしたデモンストレーションが行われた。
同社はこのほか小型のカッティングプロッターでラベルの抜き加工を、小型プリンタの「カラーワークスC8030」で狭幅のラベルプリントをイメージした展示も行った。
京セラは、インクジェットのプリントヘッドを展示した。
ラベル印刷など幅広い用途対応の循環型インクジェットヘッド「KJ4A-EX1200-RC」や、業界最速クラスの101.6m/分で出力可能な「KJ4B-EX600-RC」などを展示。「北京の展示会は印刷のクライアントも多い」と担当者は述べた。
このほか、富士フイルムやHP、リコー、フローラといった大判プリンタでも知られる会社が出展していたが、実機の展示はなかった。
デジタル印刷機編に続く
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