【2026年5月21日】先日、パッケージ関連で大きなニュースが飛び込んできた。カルビーが「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」など主力商品の パッケージを白黒化するというのだ。
理由はご存じのとおり、ホルムズ海峡の通行が困難になっていることからの原油やナフサの不足。これにより一部インクや溶剤の不測の可能性があり、これを解決するための措置として白黒にするというもの。
テレビなどではトップニュースかそれに近い扱いで報道され、ワイドショーなどでも大きく取り上げられた。

パッケージとプロモーション関連のニュースを多く取り扱うプリント&プロモーションの記者がこれらの情報を見て思うのは、「うまくやったな」と「パッケージ軽視されすぎ」の2つだ。
まず「うまくやったな」についてだが、パッケージ白黒報道で多くのニュースで取り上げられたことで、その広告効果は絶大なものだろうということ。以前ある商品がニュースで取り上げられたことについてメーカー話を聞いたら「2日間ほどニュースや新聞で取り上げられるだけで5~10億円の効果がある」と話してくれたことがある。今回はもっと大きな取り上げられ方をしているので、その効果はこれ以上だろう。話題になったことで「一度は買ってみよう」という消費者が殺到することは間違いない。
さらにはトップニュースというのは歴史を象徴するものだ。おそらくこれから石油危機があるたびに、この話題が繰り返し報道され、アーカイブとして残り続ける。

元号「令和」発表時に登場し話題となった「コカ・コーラ令和ラベル」。広告効果は10億円とも言われた
この白黒戦略で重要なのは「最初にやること」「トップブランドであること」だ。
最初にやったことで、大きく取り上げられるし、他が追随しても「カルビーのマネ」と言われることは必至だ。湖池屋などが始めれば目も当てられない非難を受けるだろう(普通でもちょっと似てるしね)。
これは後の話にも関わってくるが、店頭に並んだ時、カルビーのポテトチップスが銀色は単体なら目立つだろうし、話題になったことで
「トップブランドであること」に関しては、彼らの製品がブランドとして確立しているから白黒は効いてくる。プライベートブランド(PB)やどこか知らない会社がこれをやっても「安物が安っぽいことをしている」「怪しい」としか見られないだろう。同じことができるのは、食品なら「カップヌードル」、調味料なら「キユーピーマヨネーズ」、飲料なら「コカ・コーラ」あたりだ。
ブランドが確立しているから、こういった風変わりで大胆な戦略が生きてくる。
これは後の話にも関わってくるが、店頭に並んだ時、カルビーのポテトチップスが白黒はものすごく目立つだろう。
さて、これらが報道される中で感じたのが「パッケージに関する軽視」だ。
特にワイドショーはひどい「過剰包装に一石を投じる素晴らしい取り組み」「脱プラにいい。これを機会に紙に切り替えては?」「ラベルも外した方がいい」と言いたい放題だ。
印刷業者やパッケージ業者から見れば「なんてバカなことを言っているんだ!」と、呆れてしまうような意見ばかりだった。
ご存じない方向けに書くので、業界関係者はここは読み飛ばしていただきたいが、ポテトチップスのパッケージはほぼ100%グラビアという印刷方式で製造されている。グラビア印刷と聞くと、グラビアアイドルを思い浮かべる方も多いかもしれないが、そっちのグラビアではない(厳密には一緒か…)。
グラビア印刷は、凹版とも呼ばれ、版にはインキを入れる「くぼみ」が彫られ、版に刻まれた微小な穴(セル)の深さや大きさでインキの量を調整するため、色調の深みや豊かな階調を再現できる。写真に近い表現力は、食品パッケージや雑誌、壁紙などに活用されている。グラビアアイドルの方も昔はこの精密な印刷方式が写真集や雑誌のカラーページなどに使われていたのでその名前が使われているのだ。

フィルムなどのプラスチックにプリントでき、水や薬品などへの耐性も高いことから、多くの製品に使われている。また印刷速度も最高200m以上と非常に速い、グラビア印刷機を見たことがあるという方はわかると思うが、機体は見上げるほど巨大で、1m以上の印刷幅がある。清涼飲料などは1回の製造ロットが数百万本だ。今年大ヒットしたサントリー「ギルティ炭酸 NOPE」は、発売からわずか1週間で出荷本数2,000万本を突破したこれをまかなうには、この巨大な印刷機で高速で刷ることが必要不可欠だ。
「ラベルをなくせ」という意見にも反対だ。
オフィス向けなど、段ボールで届くような飲料は別だが、店頭でラベルがない商品は売れないのだ。
実際にラベルがない商品が売られたケースが過去にある。あの東日本大震災の時、原発の事故のために水への不安が高まり、店頭からミネラルウォーターが消えた。
メーカーでは「水はすぐに用意できるが、ラベルの印刷が間に合わない」という状況になったのだ。そこで国は「特例としてラベルなしでの出荷を認める」としたのだ。

以前、別の稿で書いたが、たまに目にする「売れすぎて出荷中止」という商品は、商品自体がないのではなく、ラベルやパッケージが間に合わないのだ。ある飲料メーカーの方に聞いたところ「うちはジュース屋だから『ジュースをすぐに作れ』と言われれば、明日にでもラインをその商品にできる。でも容器は2週間、ラベルは1カ月近く入荷を待たなきゃならない。だから思わぬヒットの時は出荷停止になる」とのこと。
話を戻そう。
東日本大震災直後、ラベルがない水が店頭に並んだが、果たしてこの水はどうなったか?
結論から言えば、まったく売れなかった。
あれほど欲しがっていた水だからラベルなしで店頭に並べたのに、その水は在庫が余りまくった。
ラベルがないものは「怪しい水」と認識されてしまったのだ。
夏、冷蔵庫にある麦茶を飲んだら、麺つゆだった!という経験をしたことが誰でもあるのではないだろうか。麺つゆなら麺つゆとわかるようにしておいてくれなければこんな事故が起こる。
ラベルのない水も同じだ。それがいつ製造されて、誰が製造した商品なのか。それが汲み上げられた場所は、南アルプスなのか、六甲なのか、阿蘇なのかわからないと安心できない。そもそもそれが水なのか消費者は疑ってしまう。
「ラベルを外せ!」などというテレビのコメンテーターはこういったことを知らずに言っている。本当に底の浅い、誰でも言える、バカバカしいコメントをしていると感じ、怒り心頭に発した。
長くなったので後編に続きます
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