【2017年6月21日】サントリーの「クラフトボス ラテ」が売れすぎて出荷停止となった。
以前にもサントリーは「ヨーグリーナ」で出荷停止という事態になっているし、日清のカップヌードルでも最近、出荷停止があった。
ちょいちょい起こるこの「売れすぎて出荷停止」について、今回は書いてみたい。
今回、出荷停止という不名誉なことになった「クラフトボス ラテ500ml」は6月13日に発売された商品。そして6月16日には出荷停止と、わずか3日という短い販売期間での出荷停止となった。
これにSNSやネット掲示板では、厳しい声が相次ぐ。
「わざとやって話題作り」
「またサントリー?」
「炎上商法」「出荷停止商法」「枯渇商法」
「出たよ、お得意の…」
完全にそのままではないが、こんな感じのコメントが並ぶ。
さらには
「スーパーの〇〇〇にはあった」
「コンビニで普通に売ってるよ」
という生存確認報告があり「やっぱり品薄商法じゃないか!」という結論に達する人が多数見られた。
では、品薄商法だとすればサントリーにメリットはあるのか?
結論から言うとほとんどない。
まず最大のデメリットは
「販売機会の損失」
この品薄情報で消費者は売り場に走っても、品物がないから購入できない。その1回のチャンスを逃すと次に商品が出回った時に買ってもらえる保証はない。
さらなるデメリットは
「問屋や小売店からのお叱り」
かつて、ある飲料が品薄で話題になった直後に、その会社の人に話を聞いたことがある。
「出荷停止」が起こった場合、会社の中は大変なことになる。
特に小売店舗からは「売りたいのにない」という状態の時、非常に激しい叱責がブランドオーナー(メーカー)に飛んでくるという。
コンビニなどは狭い店舗で、棚を空けて待っているのに「売れるはずの商品がない」というのはめちゃくちゃ損している状態なのだ。
契約によっては想定分の商品を用意できない場合
「ペナルティー」
を要求されるケースもある。
米国などではスーパーなどの棚は、その商品を並べ続ける契約も存在し、この場合、品切れすれば即ペナルティーなる。
さらにはブランドオーナーが、賃貸料を払って一定期間、棚を買い取るという販売方法もあり、品切れすれば賃貸料分だけ、ブランドオーナーは損してしまう。
さすがに日本ではここまでのケースはほとんどないが、売れる商品がないというのは、小売店に大きな迷惑をかけている状態なので、
「商品の価格交渉(下代交渉)などでものすごく不利になってしまう」
「次は(ほかの商品でも)棚を空けてもらえない」
という恐ろしい事態が起こる。
もっと言えば、最初に戻るが
「炎上商法」
「いい宣伝になったね」
などとSNSで叩かれれば、「ブランドイメージを損なう」のは分かり切ったことだ。
こんなわけで、「品薄商法」をする意味はほとんどない。
すくなくとも「シメシメ話題になったぜ」などと考える余裕はまったくない。
ちなみに、出荷停止後もスーパーなんかに置いてあるのは
「ブランドオーナーの営業担当者の腕がよかった」
「小売店や卸のバイヤーが商品を見る目があった」
のどちらかで、その在庫が終わってしまえば、次回納品まで時間が空き、棚は他の商品に取られてしまう。
桃屋の「食べるラー油」などは、品薄の間に他社製品が出回り、スタンダードになる機会を失ってしまったというのは皆さんの記憶にもあるだろう。
さらにネットでは
「大会社のくせにマーケティング能力ないのかよ」
「何度もやってるのに、予測できないの?」
という声もある。
確かにその通りなのだが、ドリンク類は大手の場合、リニューアルも含めて年間100種類程度をリリースする。
そして、そのほとんどが1年を待たず市場から消えていく。
怖いのは売れ残り。おのずと初回に生産する数量は最低数量になってしまう。これは大手の食品メーカーでも同様だろう。
で、マーケティングだが、一応すべて予測している。
予測しているのだが、最近は予測を超えてしまう事態が頻繁に起こるのだ。
有名人がその飲料を飲みながら「これおいしいね」とTwitter(ツイッター)やインスタグラムでつぶやくと一気に売れる。
あるいは、一般の人のでも「これは変な味だ」とつぶやかれ、リツイートが始まり、あっという間に話題が拡散、まったく予測外の売れ行きとなってしまうこともある。
これはマーケティングでは予測不能なのだそうだ(さまざまな研究が進んでおりますが)。妙な仕掛けをすればステマと言われてしまうし…。
なるほど、メーカー担当者の心労はいかばかりか。
たぶん、「出荷停止騒動」が起これば、次の人事での昇格とかそういうのは、一切なくなるだろうし、クビのあたりが寒くなるなんてことも…。
そもそもなぜ販売中止という事態が起こってしまうのか、なのだが、今回のサントリーの発表では、「想定の3倍の数量を売り上げた」というような理由になっている。
「ならば、すぐに作ればいいじゃないか」
という声が聞こえてきそうだが、新商品リリースの場合、ものにもよるが、発売までの約1カ月間で生産した商品を倉庫に入れておき、それを発売と同時に市場投入する。
だから、一度倉庫がカラになると出荷できる程度まで貯まるには、早くても2~3週間程度はかかってしまう。
もちろん、生産ラインもそのために切り替えなければダメで、ほかの商品を生産するつもりであったラインを空けるやり繰りが必要になる。
でも「めちゃくちゃ無理すれば、商品自体の生産はすぐできる」のだそうだ。
他の商品をどこで作るとか、そういう面倒くさいことはかなぐり捨てて、何も考えずに作ろうと思えば、次の日にでもラインを回すことは可能。
「だって俺たち飲料屋だもん。材料と設備はなんとかなる」
と言うことらしい。
しかし、問題は中身ではない。
容器とラベル、段ボールなどの包材が間に合わないのだ。
ラベルと段ボールは最低でも1週間ほど、容器はもっと時間がかかる。
特に今回の「クラフトボス」の場合、BOSSの顔が浮き彫りになっているオリジナル容器なので、既製のボトルを使うようなことはできない。
だから
「ないなら作ればいいじゃん」
というネットの声に応えるのはまず無理なのだ。
というわけで、まとめ
①品薄商法はありえない。「ペナルティー」「悪評」などリスクが大きすぎる
②予測はSNSの登場で非常に難しくなった
③中身はわりとすぐ作れるが、包装・容器は無理なので、製造までに時間がかかる
皆さんも、「出荷停止」で、「炎上商法だ!」と言っている人がいたら、ぜひこの話を教えてあげてほしい。
※べつに、飲料メーカーさんの回し者じゃありません
p-prom.com
コード スニペットをコピー
Copyright © 2025 プリント&プロモーション . ALL Rights Reserved.