【2015年6月29日】「第1回 未来の新聞勉強会」が6月26日、東京都渋谷区神宮前の朝日新聞社メディアラボ渋谷分室で開催された。
未来の新聞勉強会は、デジタル印刷機や周辺機器を使った新たな新聞制作を考える会で、この日はメディアや印刷会社、周辺資機材メーカーなどから約20人が参加した。主催はブライター・レイターの山下潤一郎代表。
第1回のテーマは「《未来の新聞》の可能性を深めよう!」とし、セミナーとパネルディスカッションを行った。パネラーは朝日新聞社メディアラボの雨森拓児主査、共同通信社の黒澤勇経営企画室委員、 奥村印刷の山田秀生執行役員・プリプレスセンター長。モデレーターは山下代表が務めた。
第1部のセミナーではパネラーが各自のテーマで話した。
朝日新聞社の雨森主査は「新聞社が考える『デジタル × 新聞』の可能性」のテーマで、メディアラボで行った取り組みのうち、受験生用アプリの広告として作成したうちわや「週刊英和新聞Asahi Weekly」で行ったアプリで新聞を読み上げる企画などを紹介。
「デジタルであれば折り込み広告の代わりに、読者が必要な広告を新聞の形で届けるなどのビジネスも可能。しかし、可変情報を持った内容は個人情報となるので、しっかり配送できる仕組みが必要」と述べた。
共同通信社の黒澤経営企画室委員は「未来の印刷とは?~デジタル印刷ビジネス動向~」と題して話し、欧米の会社でのデジタル印刷機による新聞印刷の事例を解説した。これによると「多くの人種や宗教の違う多くの 人が住んでいる米国のシカゴでは、彼ら向けの少部数新聞を発行し、成功している会社が存在」「ハワイでは空港を利用する日本人に向けに、直近の日本の朝刊を発行している」などの事例があるという。
奥村印刷の山田秀生執行役員・プリプレスセンター長は「デジタルが変える印刷」のテーマで、自社の事例を織り交ぜながら、近年のデジタル印刷事情などを話した。
「バリアブル印刷は地域新聞や学級新聞など、少量新聞の発行に応えるられるだろう。また、インバウンド市場で外国人向けの新聞を出すことも可能だ。新聞の情報を2次利用しスクラップブック的な内容をまとめて配達することにも利用できるのではないか」と新ビジネスで活路があることを示した。
第2部のパネルディスカッションでは、山下代表がいくつかのテーマを提示し、これにパネリストが応えた。
あなたが想像する未来の新聞とは
雨森 インターネットで新聞記者の取材した内容が拡散することで、今まで紙の新聞を情報として手渡し、対価を得ていた新聞の収益が減少し続けている。メディア全体に言えることだが、このままでは取材する人がいなくなる。
黒澤 以前、大学で講演した時。聴講した学生300人中1人しか新聞を取っていなかった。一方でニュースアプリはほぼ全員がスマホに入れている。メディアは正しい情報を伝えていくことが使命だが、対価を得られなければそれが果たせなくなる。ただし、紙の新聞がなくなるかといえば、そんなことはないだろう。
マニア向けの新聞を少部数で作った場合、その新聞や広告に価値はあるか
山田 当社には気に入った写真を選択し写真集として届ける技術がある。これを使ったサービスでは、撮られたアイドルの写真をすべて選んだ方もおり、写真集10冊分の分量になったことがある。さらにこういった熱心なファンはこれを2部ずつ買うこともある。マニア市場は有望ではないか。
黒澤 マニア向けにバリアブル印刷ということであれば、それは個人情報を扱うことになる。この場合、やはり確実な配送が課題になるだろう。絶対に間違わない仕組みを提供できるのは、現在ならAmazonくらいか。
雨森 アプリなどネット上のものは対価を直接得にくいが、紙ということであれば、そのファンから直接お金をいただける仕組みが作りやすいと思う。
今後新聞はどうなるか
雨森 今のままの新聞が続くとは思っていないし、今でも変わりつつある。代表的なのは株価の面。これを朝からチェックする人はもういないだろうが、いまだに載っている。こういった部分から変化があるだろう。
黒澤 キヨスクでは新聞の積まれる量が少なくなっている。あれはガムなどに比べ、坪効率が悪い商材だからだ。こういった問題も含めてどう解決していくのかで、新聞の未来は変わっていくと思う。
山田 若者に新聞をどう読ませるかが重要。若い世代を取り込むことで、今後新聞が続いていくかが決まるのではないか。
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