【2021年9月10日】大日本印刷(DNP)とAI翻訳サービスを展開するMantraはこのほど、マンガを多言語で制作するシステム「DNPマンガオンラインエディトリアルシステム MOES(モエス)」に搭載する、独自のAI翻訳エンジンを開発した。
今回のエンジン提供により、翻訳者がすべて手作業で行ってきたマンガの翻訳を、高いレベルでAIがサポートする。
2020年には、国内での電子によるマンガの市場規模が、約6,000億円を超え、最大となった。このため現在、海外の読者の開拓に向けて、日本のマンガを多言語に翻訳してグローバルに展開していくための制作・製造・流通体制の整備が進められている。
その中でも特に、マンガの翻訳については、話し言葉が多く、吹き出しごとに文章が途切れるため翻訳にAIを用いることは困難だった。また、人の手で制作するコストと負荷が大きく、翻訳タイトル数を抑える出版社も多かった。
こうした課題を解決するため、DNPとMantra社は、マンガに特化することで精度を高めたAI翻訳エンジンを開発し、MOESに搭載して制作時の生産性の向上を実現する。
MOESは、翻訳版のマンガ制作に必要な翻訳・レタリング・校正・進捗管理等を行うクラウドシステムで、2016年から印刷物や電子書籍におけるマンガ翻訳の制作工程で活用している。
これにより、DTPソフトを使わずに、画面上に表示されるマンガのレイアウトの吹き出しの中に、翻訳した文章を直接入力する。確認や修正も同様にレイアウトを見ながら行えるため、文章の入れ間違いなどを防止する。
ユーザーは、時差のある地域で作業する翻訳者や翻訳チェック者等の間での、データ授受や業務の進捗管理が容易となり、大幅な作業負荷軽減や作業時間の短縮を実現。すべて手作業で行っていた翻訳を、あらかじめ自動翻訳された状態から始められる。
翻訳会社による評価テストでは、従来と比較して30 %以上削減されるという結果を得ている。
DNPは、同システムの2021年度中の実用化を目指し国内外のマンガ制作関連事業で、5年後までに120億円の売上を目指す。
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