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【この人に聞きたい!】応募総数187万句「お~いお茶新俳句大賞」のコミュニケーション 伊藤園 広告宣伝部 広告宣伝課 横山佳史氏

【2018年2月20日】パッケージは顧客との最後の接点で、最初のアフターサービスでもある。
そんなパッケージの一部を使い、平成の初めから日本の文化である「俳句」を掲載し続けている飲料がある。
それが伊藤園の「お~いお茶」だ。

俳句は、TwitterやインスタグラムなどのSNSを通じて発表する機会が増えたことなどから、現在さまざまな層の人に親しまれるようになっている。
今回はその先駆的な取り組みをしてきた同社の「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」について、伊藤園 広告宣伝部 広告宣伝課の横山佳史氏に話を聞いた。

伊藤園 横山 佳史

 

きっかけはあのベストセラー!?

――「お~いお茶」で名物になっている俳句の記載はいつからで、どんな経緯で始まったのでしょう?
「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」は、「お~いお茶」の発売された平成元年1989年にスタートいたしました。
前年に、俵万智さんの「サラダ記念日」がベストセラーとなったほか、「奥の細道」300周年も重なり、短詩形文芸が盛り上がった年でした。

サラダ記念日

緑茶という日本の飲料で、俳句という日本の文化を発信するのは自然な流れで、コンテストを企画しました。
当コンテストは、創作上の制限をできるだけ省き、五七五のリズムで自由に表現する「新俳句」という設定にし、季語も気にしないというものにしました。
募集を開始したところ、俳句に興味はありつつも作っていなかった人や、自分の作品を世の中に出すコンテストがなかったという人から多くの作品が寄せられました。

――募集はどのような形で行っていますか
一人6点まで応募可能で、募集期間も毎回11月~2月(団体は2月10日頃)までと、比較的長くとっています。
また、毎回、季語やテーマにとらわれず、感じたこと、思ったことを自由にのびのびと詠んだ作品を募集しています。
特に応募が多いのは団体からで、全体の約90%が教育現場から送られてくる作品です。

第二十八回(2016年度)では、小学校、中学校、高校合わせて約2,600校からご応募頂いており、教育の一環として取り組んでもらっています。こういった日本文化を発信するという形で、約30年近くにわたり、お客様とのコミュニケーションを図っているキャンペーンとなっています。
お~いお茶 商品

 

――応募の方法は変わってきていますか
当初はお手紙やはがきやFAXが中心でした。スーパーやコンビニエンスストアに専用はがきを置いて、そこからというのも多かったです。今はインターネット、当社サイトの応募コーナーからも増えています。
今後はSNSなども活用し、応募促進を図りたいと考えています。

――選出はどのように行っていますか
第28回(2016年度)のコンテストでは約187万句の応募がありましたが、その中から2000句を入賞作品として選出します。
選出の1次審査では、俳句の先生をされているような俳人の方のべ約200名にお願いし、すべての句を選考していただき次の審査にあげてもらいます。
審査員は感性がそれぞれ異なるので、必ず読み手を一度替えて敗者復活のような形で2回審査してもらっています。
1次審査で約16,000句まで絞り込み、2次審査では1次審査とは別の俳人の方々に佳作以上となる7000句を選んでいただいています。

そこから、俳人とは別のジャンルである大学教授や元ジャーナリストの方々に3次審査を行っていただき、その後最終審査員の皆様に審査をお願いし、入賞2000句を選びます。
さらに、盗作がないか、同じものがないかといったことも、さまざまなデータベースを検証して最終的に各賞を確定します。

2月に募集を終了し、発表は7月ですので、約5カ月間、時間をかけて選出しています。

――なるほど。選出はかなり大変なようですね
それはもう(笑)。
毎回、審査員の方にお願いすると「この季節が来ましたか」という返事を苦笑いでいただくこともあります。
もちろん、応募者の皆さんが懸命に考えていただいた作品なので、余すところなく公平に審査しなければならないと考えており、審査員の方には本当に真剣に選考していただいています。

それにしても応募数は年々増えていますし、約30年の歴史で累計の応募数は3170万句という膨大な量です。これだけたくさんの応募をいただき、多くの作品の中から選んで発表させてもらえたことを毎年感謝しています。

 

入賞の2000句はすべてパッケージに

――掲載による効果や顧客とのコミュニケーションは
応募いただいた方には、掲載される感動を楽しんでいただいています。
「お~いお茶」のパッケージに、自分の句が載るというのはやはり皆さんなかなかないことなので、それは喜んでいただいていますよ。

――確かに多くの方の目に触れるパッケージに印刷されるのはうれしいですよね
当社では、入賞作品2000句をすべてプリントして発売しています。
まずは大賞など、上位入賞作品をメインの商品で掲載していき、1年間をかけて2000句を載せていきます。

――ラベルはグラビア印刷ですよね。相当大変では?
一つの版にできるだけ異なるデザインを付け合わせて、多くの俳句が載るような工夫もしていますし、「お~いお茶」ブランドは容器別などを含めると50近くの商品があり、ティーバッグ商品もあるので余すところなく載せることができます。

伊藤園 お~いお茶 俳句

一方で、できるだけ俳句の読まれた季節に合わせて載せているので、なかなか印刷されない作品があるのも事実です。
入賞者からは「私の作品いつ出ます?」「出ているはずなのに見つけられません」といった質問が一番多く寄せられます。
ということで、一昨年から入賞者には特別にその人の句を載せた特製ボトルを発表後まもなく1ケースお送りすることにしています。これはデジタル印刷でプリントしたものになります。

このほか、入賞2000句、佳作5000句の、合わせて7000句を1冊にまとめた「自由語り」という作品集を毎回発刊しており、入賞入選者の全ての方に配布しています。

伊藤園 お~いお茶 俳句

――海外からも応募があるそうですね
累計81カ国からご応募があります。
英語俳句部門もあり、第二十八回(2016年度)は英国の13歳の女の子がつくった俳句で大賞を取りました。

――英国でも売っているんですか「お~いお茶」って
英国でも一部の日系コンビニエンスストアで売っています。
先程もお話ししたように入賞の2000句はすべてパッケージにして載せていくのですが、「氷水出し 抹茶入り お~いお茶」には英語の句を載せています。

――選出される俳句に傾向などはありますか
これは一致した意見ですが、上位に食い込むのは「考えすぎていない俳句」が多いです。
第二十八回(2016年度)に選出された上位作品もそのような傾向です。
文部科学大臣賞を受賞した作品は「水筒を垂直にして飲んだ夏」。
小学生の部大賞は「プールあと体が地球にへばりつく」。
中学生の部大賞は「夏帽子深くかぶって地面蹴る」。

伊藤園 お~いお茶 俳句

――なるほど、シンプルな言葉で、直感的に伝わってきますね
そうですね。
本当にその情景を、その時の気持ちで素直に読んだ句というのが伝わる気がします。
他の俳句コンテストなどとは異なり、景気や大きな災害などに内容があまり左右されることがないのも特徴です。

 

若者に五七五を楽しんでほしい!

――話は変わって、昨年から「PLAY俳句」「恋する俳句プロジェクト」などデジタルと融合した施策も始めています。これについては
「PLAY俳句」は、俳句と写真の組み合わせや、音楽、ダンスとの組み合わせなど、何でもありで俳句を楽しもうというもので、イベントも開催しました。
「新俳句」の特徴でもある季語や定型にこだわることなく、自分で感じたこと、思ったことを五七五のリズムにのせ発信するものです。
また、「恋する俳句プロジェクト」は、若者の身近な関心事である恋愛をテーマとした俳句を掲載した、「お~いお茶 秋のLoversボトル」に合わせたキャンペーンです。

PLAY俳句 伊藤園 お~いお茶 俳句

「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」は現在、9割が団体からの応募で、これは非常にありがたいことです。
しかし、団体での教育的な取り組みに加えて、一般の方、特に若年層の方にも、この俳句の楽しさをもっと伝え参加してもらいたいという思いがあり、これら「PLAY俳句」「恋する俳句プロジェクト」を開始しました。
メッセージを五七五で伝えていくこと、俳句って楽しいんだよ、という機会をつくるための企画です。

Twitterなどでは写真をお題に俳句を作るといった流れがあり、そういった新たな楽しみ方の後押しをしていきたいと考えています。

恋する俳句プロジェクト 伊藤園 お~いお茶

 

――今後の「新俳句」そして、「お~いお茶」のパッケージの展開は

2020年に五輪が開催されることもあり、日本には外国の方が多くいらっしゃっています。

その中で伝統的な日本文化である俳句は伸びしろがあると感じています。
伊藤園ではその可能性をさらに広げていきたいと考えております。
また、日本文化であるお茶、そして、それを飲むシーンは、コミュニケーションの瞬間です。これを「新俳句」を通じて、楽しい時間にしていただきたいと思っています。

 

伊藤園お~いお茶新俳句大賞
https://itoen-shinhaiku.jp/

「PLAY俳句」
https://play575.jp/

「恋する俳句プロジェクト」
https://koi575.jp/

 

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