【2023年9月4日】大日本印刷(DNP)グループのDNPメディア・アート(DMA)は8月、「LLマンガ」の制作サービスを開始した。
「LL」は、「やさしくてわかりやすい」という意味のスウェーデン語「Lättläst(レットラスト)」の略で、できるだけ多くの人に読書の楽しみや必要な情報を提供することを目指してつくられている。
こうした考え方や技術・ノウハウをマンガに展開させたものが「LLマンガ」。
海外では、知的能力や教育環境に問題がないにも関わらず文字を読むことが困難な学習障がいがある「読み書き障害(ディスレクシア)」や「自閉症等の人」「視力の衰えのある高齢者」「日本語を母語としない人」など、読むことに困難がある人々にとって、読みやすく制作する本「LLブック」が流通している。
左のコマの各種情報を右のコマでは抑制
「LLマンガ」制作サービスでは、マンガ特有の表現を分析し、ストーリー性を配慮してコマを分解するなど、シンプルな設計や改善のレギュレーション(規則等)を構築している。
また、ロケーション(場面)や背景、表情による心理表現などを抑えてセリフで伝えることで、わかりやすさを向上。
わかりにくいテキスト・文章や複雑なコマ構成や、デフォルメや誇張表現をはじめとする「略画表現」の改善も行っている。
これらにより、直感的に理解できる文章を心がけるとともに、背景の誇張した表現を抑えることで、わかりやすさを向上している。
サービス開発の背景には、2019年6月に国内で「読書バリアフリー法」が施行され、障がいの有無などに関わらず、すべての国民が等しく読書できる環境を整備する必要性が一層高まってきたことがある。
こうした中でマンガのコンテンツは、ページの構成やコマ割り、説明・表現などが複雑な場合もあり、すべての人にとって理解しやすいとは言えない状況だった。
今回DMAは、読書のバリアフリー対応に対して、これをマンガコンテンツにも広げ「LLマンガ」に加え、ガイドラインとフローも構築し、サービス提供を開始する。これにより、日本語のマンガコンテンツを読むことが困難な人も含めて、できるだけ多くの人がマンガを楽しめる環境づくりを目指す。
同サービスの開始に先駆けて、『障害のある人たちに向けた LLマンガへの招待』(樹村房、2018年)の著作者で京都精華大学教員の吉村和真教授監修のもと、コニカミノルタウイズユーの社員教育の中で、「LLマンガ」を活用した理解度向上の検証を行う実証実験を行った。
コニカミノルタウイズユーの人事制度の説明資料では、従来のテキスト主体の資料をベースに、通常のマンガと、吉村教授監修による「LLマンガ」の2種類を制作。これを知的障害や精神障害を抱える同社のメンバーに読んでもらい理解度を検証。この結果、参加者の約86%が「LLマンガ」の方が「よりわかりやすい」と評価した。
今後、DMAは同サービスを、2022年に構築したマンガ制作スタジオ「MANGA CREATIVE WORKS」のコンテンツ制作機能と連動さて、出版社や企業、教育機関などにも提供していく。DNPグループは同サービスを通じ、「D&I(多様性と包摂)」を一層促進し、多様な人材の育成や障がい者雇用の定着といった企業の課題解決を支援するとともに、継続的な出版文化の発展にも貢献していく。
「MANGA CREATIVE WORKS®」について
https://www.dnp.co.jp/news/detail/10162244_1587.html
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