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廣済堂の新サービス「印刷のサブスク」ロール1本単位で印刷・配送まで~SCREEN GAとの共同企画【この人に聞きたい!特別編】

【2021年2月5日】SCREENグラフィックソリューションズ(SCREEN GA)は昨年、自社製品の国内向けカタログの生産を廣済堂に委託し、オフセット印刷から同社のデジタル印刷機「Truepress Jet520HDシリーズ」に切り替えた。
製品カタログは50種類以上あり、このすべてをデジタル印刷に切り替えている。カタログは、同社の倉庫を経由することなく、廣済堂からSCREEN GAの支店や各営業所に必要分を小分けにして配送される。

SCREEN GAでは「ジャスト・イン・タイム生産」と呼ぶこの方式。これには廣済堂の新サービス「カタログ印刷のサブスクリプション」の取り組みや、SDGsへの貢献、DXによる自動化など、「印刷の未来」を感じさせる取り組みが満載されている。
それも、カタログを受け取る顧客には、最新の洗練された情報が届けられるというのだ。


廣済堂の新家孝久氏(左)と佐々木徹郎氏

今回は、印刷を担当した廣済堂情報ソリューション事業部 生産本部の新家孝久氏、ソリューション営業本部の佐々木徹郎氏。そして、クライアントとしてこのプロジェクトを担当したSCREEN GA企画推進部の中谷路子氏に話を聞いた。


SCREEN GAの中谷路子氏

この記事の内容の詳細は、2月8日から28日(日)まで開催の「page2021オンライン展示会」のスポンサーズプレゼンツミニセミナー「カタログのジャストインタイム生産~『Truepress Jet520HD』の活用で、環境負荷低減とタイムリーな情報発信を両立~」で公開されている。

視聴リンクは以下をクリック(「page2021オンライン展示会」への登録が必要)

 

なぜ「ジャスト・イン・タイム」なのか

――まず、このプロジェクトをご説明いただけますか
中谷 当社の「Truepress Jet520HD」を使ったカタログ製作~配送までのサービスです。
50種類以上ある製品カタログを少部数ずつまとめて発注し、その生産を定期的に繰り返します。この方法で、外注倉庫での保管をやめ、タイムリーな情報更新を実現しています。

多品種カタログの「ジャスト・イン・タイム生産」フロー図

――これまでのサービスと、どこが違うのでしょうか
新家 SCREEN GAさんのカタログは、ペラ1枚から36ページの中綴じ冊子までさまざまなものがありますが、これを印刷用紙1ロール(66,000ページ分)にまとめて印刷します。
それも、1種類のカタログを連続して刷って後から仕分けするのではなく、1カ所分のカタログ複数種をロール上で連続して印刷。これを裁断・製本し、梱包して発送します。

佐々木 さらに「1ロールに(印刷Jobを)詰め放題」として、印刷料金は毎回定額にしています。
また、これを当社は「カタログ印刷のサブスクリプションサービス」としてお客様に提案しています。

――なるほど、ロール上で各支店分をまとめているのですね
中谷 発注側も楽になります。
デジタル印刷の登場で少部数印刷が可能になったものの、小口の発注が増えれば、その分発注側の作業も増えます。印刷会社から見積りを取り、それを上司に見せてOKをもらい、発注書を作って、という作業を都度行うのは大変なんです。
このサービスでは、「1ロールに詰め放題」で、印刷内容が変わっても料金は定額なので、都度の見積りは不要。発注は「配送先」「カタログの種類」「部数」を指定することで、多品種カタログが一括で注文できます。


配送先ごとに印刷順をまとめて生産するイメージ

――印刷品質はオフセット印刷との違いなどは出ませんでしたか
新家 もちろん絵柄にもよりますが、オフとの違いは、一般の方が見ても絶対に気づかないレベルです。色域ではオフを超えた部分もありますし、オフとデジタルどっちが良いという話ではなくなっています。

佐々木 高額商品のカタログとして、しっかりと商品の良さをお伝えできる高画質の印刷を実現しています。
営業の現場でも、よほど故意に見られない限りオフセットとの違いを指摘されることはないですね。デジタル印刷の価値は、単なる品質の違いだけで語るべきでないと思っています。

オフセット印刷とTruepress Jet520HDで印刷したカタログ
(右がTruepress Jet520HDで印刷したカタログ、ほとんど違いは感じられない)

 

カタログの効果は

――実際に運用を始めて効果はいかがでしたか
中谷 一番大きい効果は「倉庫代」で、今のやり方にしてからは、年間200万円強かかっていた倉庫代はゼロになりました。
廃棄も圧倒的に減りました。オフセット印刷の場合、スケールメリットで多めに発注してしまうことがあったのですが、今はその時に必要な数だけを発注できるようになり、環境負荷の削減にもつながりました。

――部数はどのくらいなのですか
中谷 毎回発注内容は変わっていますが、例えば2020年7月の発注例だと、最少では30部、最大でも610部、平均は268部ですね。
少部数しか刷らないので、情報の更新が早くなりました。前は情報を更新したくても「まだカタログ在庫がたくさん残っているからダメ」というケースもありましたし、長期間の保管で紙焼けしてしまったカタログを、営業担当から「お客さんに見せられない」と言われたこともあります。また、「誤植」や「住所変更」があると、廃棄するか、担当者が頑張ってすべてに訂正シールを貼るしかありませんでした。シール貼りなどは手間も時間もかかるので、働き方改革が推進される中ではやりにくい業務です。

――作っても配られないものがあるのは、悲しいですね
中谷 従来はカタログを作ることがゴールになっていて、利用者の声が反映されていませんでした。現在のシステムに変えてからは、定期的に印刷の機会が巡って来るので、発行後に発生した急な「情報変更」や、「お客様の声」、営業担当からの「この部分は表現を変えた方いい」と指摘を受けたアドバイスにも柔軟に対応できます。
こういった「次回は、さらに良いカタログに変えられる」という社員のマインドチェンジの部分が実は最も大きい変化であり、効果だと感じます。マーケッターが、発信内容を随時アップデートできることは大切で、今の時代に合っていると思います。

 

印刷現場は?

――データが随時更新されると管理は難しいのではないですか
新家 いいえ。オフセット印刷の方が版の管理など大変なことが多いです。デジタルの場合、基本的に完全原稿ですし、面付などの処理も自動化しており、こちらは印刷をするだけです。

――今までオフセットで印刷していたものを、すぐにデジタルにするといったことも可能ですか
新家 先日もそんな話がありましたよ。オフのデータはすぐにデジタル印刷にできます。
データも完全原稿なら、朝に入稿していればその日に出荷も可能です。

――仕事を受ける側も便利なのですね
佐々木 「印刷サブスク」には、業務負荷軽減・営業レスという大切なテーマがあります。
システム化されているので、事務効率も格段に上がり、Webからの発注データは営業を介さず印刷工程に流れ、配送までまわります。現地立ち合いも必要ありません。

新家 Web受注とコンテンツ管理を、レゾロジック社の「Edition PriBiz」というツールで自動化していることが非常に大きな効果をもたらしています。従来のやり方をしていたら、相当に手間がかかります。
クライアントが書類を作成したら、営業も現場のオペレーターも、すべての人がそれを読み取らなければなりません。この時間や手間、そしてミスが発生するのもこの時です。今のシステムでは、データを自動処理しており、すべて省略されています。
トータルでここまで楽になるとは思わなかった、というのが正直な感想です。

――1ロール定額料金に不安や難しさは
新家 廣済堂では初の試みですが、逆にロールで買い取っていただくことで、受注側としてもしっかり売り上げが計算できるメリットがあります。

中谷 発注者としても、定額化はありがたいですし、(詰め放題は)太っ腹に感じます(笑)。

――何かもう、デジタル印刷機が自社のプリンタになったようなイメージですね
中谷 そうです。情報更新の頻度を上げれば、その分忙しくなるはずなのに、かえって楽になっている。新しいことができる、手間が減るから続けやすい。提供されるのは、出来上がった印刷物の価値だけではないこの感じです。

――このシステム、廣済堂さんではもうセールスされているんですか
佐々木 すでに営業活動を開始しています。多くのお客様に、このサービスのメリットをご理解いただいています。Webとの連携やSDGsといったキーワードがあるので、価格だけの問題ではない、もっと幅広いソリューションとして捉えていただいています。

よく訪問先で「ウチはデジタルで(販促を)やっているから、紙はいいよ」という声がありますが、いつもまず初めにOMOのお話をさせていただきます。消費者は媒体を選ばず、いいなと思うものを選んでいるのですから、シーンによっては印刷も必要になりますし、デジタル印刷ならWebなどデジタル施策との相性も抜群です。
また、D2C支援やBPO業務など印刷周辺業務に対応していくのに、この仕組みは合っています。当社はオフセット印刷も展開しているので、用途に応じて使い分ける提案も可能です。

――新しい価値観を動かしているイメージですね
佐々木 やはり社会の仕組みや価値観も変わって、印刷物もこんなことができるというコトを見せていかないといけないですね。最新のデジタル技術との組み合わせなどによって、印刷サービスの価値観を変えていくような時代だと思います。

新家 WEBとの連携が可能であることは、やはりデジタル印刷の強みですね。

 

構想と展望と

――このプロジェクトは、いつくらいから構想を始めたものなのでしょうか
中谷 始まりと言うと、なかなか難しいのですが、オフセットコート紙への印刷対応、高画質という装置の特長から「Truepress Jet520HD」を発売したときから、社内にはいつかはこの印刷機で自社のカタログをつくりたいという意識はありました。

――そんなに前からなんですか
中谷 会社としてはそうですね。ただ、オフセット印刷と同じことをデジタル印刷で置き換えるのではなく、「Truepress Jet520HD」の長所を生かした方法で取り組みたい、と思っていました。
実際に廣済堂さんにご相談に行ったのは2019年9月のことで、そこから約半年かけて廣済堂さんにシステム開発と印刷サブスクリプションのビジネスモデル開発を行ってもらい、2020年4月にはこの「ジャスト・イン・タイム生産方式」の運用をスタートさせました。


SCREEN GAが発行する製品カタログの一部

――一方で、その話を持ち込まれた時、廣済堂さんとしては「驚き」でしたか、それとも「ついに来たか」という感じでしょうか
佐々木 「狙い通りのお仕事をいただいた」と感じました。
「Truepress Jet520HD」が何に使えるのかというのは、導入以前から模索してきたことです。「多品種・少量でもジョブをまとめて大ロットにして効率的に処理し、低価格で提供する」という構想ははじめからありました。
つまりこの目的を完全に実現できるお仕事をいただいたと感じました。

当社では、「Truepress Jet520HD」にあわせ、ホリゾンのデジタル印刷機用製本システム「StitchLiner(ステッチライナー)」を導入し、ジョブをまとめて冊子を作り、それを自動処理で小分けして配送する仕組みを構築しています。冊子にすることが得意なので、この特性までを生かした仕事なのです。

新家 「Truepress Jet520HD」は、ロールtoロールタイプなので、印刷速度がカット紙(枚葉)タイプに比べ、圧倒的に速いのです。この生産性の高さも導入のポイントだったので、ロール紙に1社のさまざまなカタログを詰め込んで印刷するというのは理想的。当初、実現しようと思っていたモデルに近いですね。
さらに、内容に可変要素や1ロールに複数の会社を入れて少量印刷を実現できれば、我々が考えていた通りのモデルになります。

中谷 可変印刷やバリエーション展開は、今後取り組んでみたいことの一つ。そのお客様専用のカタログや、各営業マンのカスタマイズ版などのイメージです。
印刷機器サプライヤーは、訪問営業が主体なので、新型コロナ感染拡大で、人と人が会う価値をあらためて認識しました。お客様にお目にかかる貴重な機会に、パーソナライズ要素を盛り込んだ「専用カタログ」をお渡しできるなら、紙媒体の中でつながりを演出するコミュニケーションツールとして、そこから会話が生まれるのではないでしょうか。

2021年1月 オンラインで 聞き手中村
【内容は当社がまとめたものをPR用に構成し直しています】

 

この記事の内容の詳細は、2月8日から28日(日)まで開催の「page2021オンライン展示会」のスポンサーズプレゼンツミニセミナー「カタログのジャストインタイム生産~『Truepress Jet520HD』の活用で、環境負荷低減とタイムリーな情報発信を両立~」で公開されている。

視聴リンクは以下をクリック(「page2021オンライン展示会」への登録が必要)

 

出席者プロフィール

株式会社 廣済堂
情報ソリューション事業部 生産本部 プリプレス部
担当部長 新家孝久氏
製版DTPなどプリプレス工程での業務経験を経て、現在はロール式高速インクジェット印刷機Truepress Jet520HDの生産リーダーを担当。

株式会社 廣済堂
情報ソリューション事業部 ソリューション営業本部 ソリューション開発部 営業企画課
課長代理 佐々木徹郎氏
1991年入社。特許関連やアーカイブ・システム、通信関連会社に出向などを経て、2017年から、デジタル印刷商材の営業企画担当。

株式会社SCREENグラフィックソリューションズ
企画推進部 主事 中谷路子氏
06年入社。2013年まで、プロモーション業務を担当。2013年からは、ソフトウエア製品・オンライン技術サポートの企画業務を担当。2018年から再びプロモーション業務を担当している。

 

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