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【この人に聞きたい】リコー 大判プリンタへ本格参入 「ラテックス」「フラットベッド」2シリーズの開発者に聞く 佐野武司氏・牧野剛志氏

【2021年5月7日】リコーは3月、ラテックスインク系大判インクジェットプリンタ(IJP)「RICOH Pro L5160e/L5130e」と、UV硬化型フラットベッドIJP「RICOH Pro TF6251」を発売した。

ラテックスプリンタは従来機から、出力速度を向上。また、フラットベッド機は海外では事例があるものの、国内で販売するのは今回が初めてとなる。それぞれ用途が異なる製品シリーズの発売により、リコーがサイングラフィックスなどの業界へ本格参入を果たすという意思が感じられる。


「RICOH Pro L5160e/L5130e」(左)と「RICOH Pro TF6251」

今回はリコーで「RICOH Pro L5160e/L5130e」の開発を担当した佐野武司氏と、「RICOH Pro TF6251」の開発を担当した牧野剛志氏に話を聞く。


佐野武司氏と牧野剛志氏

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開発経緯と位置づけ

――両シリーズ開発の経緯を教えてください。まずは「RICOH Pro L5160e/L5130e」の佐野さんお願いします
佐野 はい。開発を始めたのはラテックス自体の開発は2016年。POP・サイングラフィック向け市場を狙いエントリーモデルを開発することが目的で、完成したのが従来機種の「RICOH ProL4130」でした。
新製品では、出力速度を2倍に向上し、市場の要求に応える性能としています。

――つづいて「RICOH Pro TF6251」の牧野さん、いかがですか
牧野 「RICOH Pro TF6251」は2019年、フラットベッドだけでなく、ロールのメディアも給紙できるプリンタとして開発を始めました(ロールユニットはオプションで幅2190㎜対応)。
フラットとロールメディアの両方を1台で可能にしたハイブリッドプリンタは欧米での人気が高く、これ以前の機種は欧米で販売されていました。
新製品も今年1月から欧州で先行発売しています。

――大判プリンタの中の位置づけと特長を教えてください
佐野 「RICOH Pro L5160e/L5130e」はロールタイプで、サイングラフィック向けの製品です。また、ラテックスは水系インクなので、においが少なく、VOCをほとんど含まず、人体への影響が少ないため、壁紙など内装材への使用も可能です。
リンテックサインシステムとの協業で、メディアの推奨も行っています。

牧野 「RICOH Pro TF6251」は、UVインクを使用しており、メディアを選ばずプリントできるため、幅広い用途での採用を想定しています。
サイングラフィックスはもちろんですが、木材や石、金属などにも出力できることから、インドア・アウトドアを問わず建装材市場もターゲットであると考えています。

 

プリンタメーカーとして

――プリンタメーカーとしては比較的後発になりますが、他社と差別化できる点はどこでしょうか
佐野 ラテックスインクを使用しており屋内でのディスプレイや装飾に向いています。さらに、インクはCMYKに加え、オレンジとグリーンを追加しており、色の再現性は非常に高く、出力品質には自信を持っています。また、ホワイトインクを搭載しており、ウインドーグラフィックなど透明素材へのプリントにも対応しました。
また25㎡/hという出力速度により、高い生産性を提供できます

牧野 「RICOH Pro TF6251」に関しては、二つの大きな特徴があります。
まずは、クラス最速の116㎡/hという出力速度です。3列スタガの12プリントヘッドを搭載し、非常に高い生産性を誇ります。
また、ソフトウェアを刷新し、操作性を大幅に見直しました。操作は極めてわかりやすくしています。欧米で発売されていた従来機種に比べ、余分な情報を削りながら、機能は損なわず、視覚的・直感的な操作が可能になりました。

――海外で先行発売されていた「RICOH Pro TF6251」の発売が、日本でこの時期になった経緯は?
牧野 この機種は建装材での採用も見込んでおり、その市場は欧州の方が進んでいました。まずその欧州での市場と使用法を確かめました。
一方の日本はサイングラフィックス市場が非常に大きく、建装材に関してはあまり事例がありません。ですから、海外での知見が整ったこの時点での発売となったのです。

 

コロナ禍での開発そして反響

――コロナ禍により、開発は大変だったのでは?
佐野 開発自体は粛々と進めましたが、製品の出力物に関して評価を行うことに苦労しました。リモートワークが多くなり、全員そろって出社しないケースが増えたことから、担当者が一堂に集まり、出力物を評価できない苦しさはあり、開発スピードにも影響はあったかと思います。
ただ、状況に慣れてくるに従い、臨機応変に対処できるようになりました。

牧野 同じですね。出社制限があり、開発者全員がそろい検討する機会が減りました。ものづくりの現場に関しては、やはりどこかで集まって検討することは必要です。
それを克服して開発でき、「JAPAN SHOP」に間に合ったことは本当にうれしいです。

――展示会「JAPAN SHOP」での反応はいかがでしたか
牧野 たくさんの方に見ていただき手ごたえがありました。
お披露目でき、品質にも満足の声を聞けました。さらに努力してこれをお客様に届けたいと思っています。

佐野 多くのお客様が、足を止めてプリントを見守ってくれたのが印象的でした。
「リコーがこんなの出してきたのか」と驚きをもって迎え入れられたと感じました。


「JAPAN SHOP」での展示の様子

――すでに引き合いも来ていますか
佐野 販売活動はリコーの販売子会社であるリコージャパンが行っていますが、何件かいただいています。

牧野 想定よりも、多いお客様からお声をかけていただいています。

――両製品を見たいというお客様もいると思います。今後どのような形で披露しますか
佐野 コロナ禍で感染防止対策をしながらのご披露になると思いますが、「RICOH Pro L5160e/L5130e」はリコージャパンプリンティングイノベーションセンター(東京都港区芝浦4-2-8 住友不動産三田ツインビル東館13F)および、リコーテクノロジーセンター(神奈川県海老名市泉2-7-1)に展示しています。

牧野 「RICOH Pro TF6251」はリコーテクノロジーセンターに設置しております。お越しいただければ、デモをお見せできますし、メディアを提供いただければテストプリントも致します
同機では、サイングラフィックス市場に適したインク「GP120」と幅広いメディアに対応しながら曲げ伸ばしもできる「DG130」を用意していますので、その違いも実際に目で見て、触って確認していだきたいと思います。

――このほか、ユーザーへメッセージなどを
佐野 ラテックスインクは、サイングラフィックスはもちろん、印刷業者や内装関連などでも活用されると考えています。オレンジ、グリーンに加え、ホワイトインクの搭載も可能になったことから、微妙な色合いが求められる屋内の広告や内装、クリスマスシーズンのショウウインドーなど、さまざまな用途で活用いただけます。

牧野 UVインクで、木材やガラス、鉄板など何でもプリント可能です。素材の厚さも110㎜まで可能としているので、壁材や建材、自然物など面白い素材へのプリントを試していただきたいです。
我々は、このプリンタを導入していただくユーザーとともに、市場を活性化させ、成長していければと考えています。

RICOH Pro L5160e/L5130e
https://www.ricoh.co.jp/pp/pod/pro_l/5160e_5130e/

RICOH Pro TF6251
https://www.ricoh.co.jp/pp/pod/pro_tf/6251

 

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