【2022年12月19日】気づけばもう師走も半ばを過ぎ。
今年を振り返る時期に入ってきました。
何と言っても印刷業界最大の話題は、11月に行われた「IGAS2022(国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展)」でした。
ちょっと時間がたってしまいましたが、この項では「IGAS2022」のイベント全体について、振り返ってみます。
まず、全体の規模ですが、今回は218社/団体が出展しましたが、前回の2018年が345社・団体の出展なので、6割ほどに規模が小さくなってしまったということです。
東京ビッグサイト東展示場1、2、3、5、6ホールで行われ、初めて東館全体を使用できませんでした。また、来場者数は33,078人、前回が38,857人、前々回が56,533人と、徐々にその人数を減らしています。前回、前々回は6日間であったのに対し、今回は5日間だったということを含めても、厳しい結果となりました。
目玉の展示では、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(FGGS)は、参考出品のB2サイズ機「Revoria Revoria Press B2(仮称)」を披露しました。
製品は、乾式トナー方式を採用し、高速モードの5400sphが、B2インクジェット印刷機で世界最速だそうです。
同社はインクジェット方式のB2サイズ機を販売していますが、それに加えてトナー方式を発売するというのはかなり大胆ですよね。
担当者も「以前の当社なら出すという選択はしなかったと思う」というだけあって、ゼロックスとサヨナラした後にいろいろ考えたんだろうなあというのと、コロナによるオフィス市場の激減なんかが響いているのだと思います。
リコージャパンも、B2サイズの枚葉インクジェット機「ProZ75」を参考出品しました。
菊半裁やB2サイズの用紙に対応し、ワンパスでの自動両面印刷が可能。最大出力解像度1,200×1,200dpi で、片面時で高品質3000枚、最大4,500枚/時を実現しているそうです。
担当者は「高い生産性と低ランニングコストでの運用により新たビジネス領域の獲得したい」と話していました。
リコーもやはり、新型コロナウイルス感染拡大により、オフィス市場を失った会社。そこの分を取り返すには、産業用市場を狙っていかないといけないという決意が見て取れました。
そしてこれ以外、デジタル印刷機で特に目立ったものはありませんでした(見逃してたらごめんなさい)。
ちなみに、最も多く来場者を集めていたデモンストレーションは、小森コーポレーションとリョービMHIグラフィックテクノロジーのオフセット印刷機でした。
みなさん、やはりアナログ機が動くところが好きなようで、迫力のあるデモンストレーションには、多くの人が引き寄せられるのだと思います。
一方で、11月24日に行われたパネルディスカッション「Smart Factory化がもたらす未来の印刷工場」では、登壇者が口々に「デジタル印刷にしなければSmart Factoryや自動化は実現できない」と話していました。最終的にプリントする部分がアナログでは絶対にWeb to Printは実現しないという内容だったと記憶しています。
まあ、生産の中心はまだまだアナログ印刷であることは間違いないですし、これがゼロになるとは思いませんが、「情報」の受け渡しに関しては、どんどん紙からデジタル媒体になっていく今、以前と同様の 大量印刷・大量廃棄を続けていいのかという問題は、言われ続けていることだと思います。
IGASで気になったのは、会場でささやかれた言葉。
「もう四大印刷機材展じゃないね」「中国の展示会に行った方が面白いものが見られる」という声が聞かれました。
悲しいですが、出展者が減り続けている現状を見ればその声も仕方がありません。
以前は、最低でも2日、ゆっくり回れば3日以上かけて全体を回らなければならなかった「IGAS」ですが、今回は駆け足なら1日で回れてしまいました。
一抹の寂しさとともに、「海外展示会に行かなければならないな」という使命感のようなものも感じました。
そうそう、海外の展示会といえば、海外では当たり前の主催者によるフリーWiFiが、展示会場やセミナー会場はもちろん、プレスルームにもありませんでした(東京ビッグサイトの遅くて使いものにならないWiFiはあります)。
プレスルームの惨状などは、大野インクジェットコンサルティングの大野彰得代表がたくさん書いているので、こちらをご覧ください。
別に「記者を特別待遇しろ」と言っているわけではないのです。海外では常識になっていることが、日本では何一つできていないんです。
主催者を少し擁護すれば、WiFiは日本の他の展示会でもほとんど準備されていません。だから「そんなもんだろう」とどの展示会の主催者も思っているであろうことも想像できます。しかしながら「日本が、展示会後進国になっているんだなあ」というのを痛烈に感じて悲しくなる部分でもあります。
IGASのテーマは「Venture into the innovation!」だそうですが、日本の展示会はIT革命も、IoT革命もまだ起こっていないのが現状です。
そしてこれは、IGASの主催者とは直接は関係ないのですが、東京ビッグサイトは使い勝手が悪すぎます。東館から会議棟への移動は(西館への移動も)、どう頑張っても10分以上、往復で20分はかかるんです。
展示会を見ている最中に、気になるセミナーやパネルディスカッション、記者発表も顔を出すとなると、往復で20分が無駄になります。
そこで、あの妙ちくりんな建物を設計したのは誰だ?と調べたところ佐藤設計という会社だそうです。最初は100mの高さにあの建物上部の会議棟が載るはずだったのですが、航空機の飛行経路であることなどから、大幅に高さを引き下げたのだとか。
高さを引き下げたもう一つの理由は、来場者の輸送能力。「100m上まで人を運ぶのは大変だから」って、そんなもん最初に気づけよ!って言いたくなりませんか。日本の建築家は頭が悪い人が多いのでしょうか?
もちろん今の場所でも、十分使いづらいです。海外の一般的な展示会場の場合、展示スペースの真上の階にセミナールームが備えられているケースが多いです。製品発表やセミナーを上階で行った後に「では展示会場に降りて実機をご覧ください」となるので、流れがスムーズなのです。
今回。「IGAS」は4ホールが空いていました。あそこでパネルディスカッションや記者発表をしてもらえば、かなり移動が楽だったのではないでしょうか。
ちょっとお小言が多くなってしまいましたが、日本の展示会主催者には本当にまじめにこれを考えていただきたいと思っています。
来年は海外の展示会もまたレポートしたいと思った振り返りになりました。
【参考文献】
ラピュタになりそこねた会議棟
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tsudax99/bigsight_hiwa/060_laputa.html
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