【2024年8月5日】サントリー食品インターナショナルは2023年4月、オリジナルラベルドリンクを作成できる「TAG LIVE LABEL(タグ・ライブ・ラベル)」をリリース。
「TAG LIVE LABEL」は、導入企業がラベルデザインシステムを使って画像とテキストをインプットし、プリンタから作成したラベルを印刷。それを専用缶に貼り付けることで、その場で様々なオリジナルラベルドリンクを作成できるサービスだ。
今回はこのシステムの開発や販売に関わっている同社SBFジャパンイノベーション開発事業部ビジネス開発部の田中裕貴氏に話を聞いた。
サントリー食品インターナショナル田中裕貴氏
――サントリーさんと言えば飲料ですが、オリジナル缶を作って販売するという事業に至った経緯を教えてください
今は缶の状態で提供していますが、ここに来るまでには紆余曲折ありました。
――最初からこの形ではなかった?
はい。2019年に「TOUCH-AND-GO COFFEE(タッチ&ゴーコーヒー)」というモバイルオーダーにより待ち時間なしで購入できるコーヒーのお店を日本橋に出店しました。
アプリで注文と決済を済ますと、店舗内のロッカーで味もパッケージもカスタマイズされた名前入りボトルコーヒーを待ち時間無しで受け取れるというサービスで、当時はまだモバイルオーダーも珍しかったことから注目を集めました。
ローンチ前は忙しいオフィスワーカーの方が、仕事の合間にドリンクを受け取ってオフィスに帰ることを想像していましたが、なぜか店舗のエリア外の方も多くいらっしゃいました。そして、店舗に滞在して、ボトルと一緒にスマートフォンで写真を撮っている姿がありました。
――それはなぜですか?
コーヒーはペットボトルで提供しているのですが、ラベルに印字される色はランダムで提供されるのです。その色が「推しの色と同じ」「担当(グループの中の好きなメンバー)の色と同じ」になったという方が写真を撮られていたのです。名前を入れられるので、そこに推しの名前を入れるといった楽しみ方をしていた方もいらっしゃいました。
それを見て「こんな需要もあるのか」「推し活とカスタマイズというのはマッチするんだ」と気づいたところが開発の始まりです。
――なるほど。ペットボトルでの提供から缶になりラベルを貼っての展開になったのは?
「TOUCH-AND-GO COFFEE」は、大きな注目を集めましたが、店舗の固定費が重く、またコロナという逆風もあり、ビジネスとして成立せず残念ながら閉店することになりました。
その後、プロジェクトの第2弾として「TAG COFFEE STAN(D)」を始めました。これは完全にターゲットと価値を「推し活ニーズ」に振り切って、ペットボトルにオリジナルのラベルを貼ってお渡しするというものにしました。
サントリーのファウンテンを取り扱ってくださっているシネコン様(大型映画館)に設置していただき、お客様がカスタマイズしたオリジナルラベルドリンクを提供するサービスです。この「TAG-COFFEE STAN(D)」は現在も好調に推移しています。
しかし取引先は給排水設備があるところに限られてしまうため、ビジネスとして中々展開スピードが上がらないことも分かりました。
そこで出てきたのが「提供形態を缶に変更しカスタマイズはラベルだけに絞ったサービスにしてみるのはどうか」という意見でした。それが現在の「TAG LIVE LABEL」です。
――缶なら提供が楽ですし、サントリーさんはその技術も持っていますね
はい。本業ですから(笑)。
缶に卓上プリンタで出力したラベルを貼る形式なら場所も取らず、物販として導入しやすいですし、缶とラベルの相性も良く、「お客様の体験を特別な1本で」というコンセプトを体現できています。ラベルは2層ラベルを使用しており、飲み終わった後もステッカーとして楽しんでいただくことができます。中身はウーロン茶とレモンスカッシュの2種類で、もちろんサントリー製品ですので安心して飲んでいただけます。
プリントはエプソン社製のプリンタで行っている(日経メッセ「エプソン販売」ブース)
――現在、導入先は何カ所で、どのようなところに採用されていますか?
23年末で約80企業様に導入されており、現在も続々と導入いただいています。映画館やスポーツ施設、グッズショップ、テーマパーク、劇場、神社、水族館、動物園など様々な業態で採用してくださっています。
――導入はどういう形式ですか?
システム導入費・プリンタレンタル費は無料のため、導入費用はゼロになります。費用としては、無地缶・ラベルなどの資材代と、システム利用料として販売売価(税抜)の20%をいただいています。
――卓上の家庭用に近いプリンタで作成されていますが、印刷についてはもっと高い品質を求められることはありませんか
お客様にご納得いただける品質水準が担保できており、満足いただいています。
――これは印刷やプリンティング業界のいけない部分だと思うのですが、すぐに「この印刷品質だと商品にならない」というようなことを言ってしまうんです
私たちは飲料のプロですが、印刷のプロではありません。そのため印刷業界の方とはアプローチが異なったのかもしれません。それが結果的に良かったのだとも思います。
大切なのは印刷品質ではなく「体験」という田中氏
印刷品質ももちろん重要ですが、「お客様の体験を特別な一本で」という価値を感じていただけるかが最も重要です。最初のプロジェクトから紆余曲折を経て、現在のサービスに至っているので、その内容に自信を持ってリリースしました。
――価値を見出す部分が違うのですね
このサービスの価値は、例えばライブの日に会場に来て「TAG LIVE LABEL」をつくり、その缶と一緒に撮った写真をSNSに上げたり、野球の試合を観に来て好きな選手がホームランを打った記念に作ったりという「体験」なのだと感じています。
――新たなサービスを開始されたそうですね
新サービスの「Snap Drink(スナップドリンク)」を今年3月にローンチしました。
お客様がスマホなどで撮影した思い出の写真を、その場でプリントしオリジナルラベルドリンクにできるサービスです。水族館でイルカと子どもが一緒に写った写真をラベルにし、日付などを入れた思い出の1本にできるといったイメージです。
――今後の展開は?
缶やプリントしたものをただ売るのではなく、お客さんに楽しんでいただける「体験」を提供していければいいと思っています。ブレずにこれを提供していきたいですね。
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