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【この人に聞きたい!】「生茶」をリニューアルし売上144%に! その秘密とは!?  キリンビバレッジマーケティング本部 水上寛子主任・前編

【2018年7月30日】「キリン 生茶」は「お茶にも生があったんだ。」というキャッチコピーで2000年に発売され、新しい本格緑茶として大ヒット。しかし、徐々に他社製品に押されシェアを落としていった。
2014年夏に「新・生茶プロジェクト」がスタートし、中味に加えパッケージもリニューアルし、ブランドイメージを一新。これによって売り上げも大幅にアップし、ブランドリニューアルの成功例としてさまざまな業界から注目されている。
今回はインハウスデザイナーとして、このリニューアルを担当したキリンビバレッジ マーケティング本部マーケティング部 商品担当水上寛子主任に話を聞いた。

 

緑茶のイメージ変えた商品「生茶」

――「生茶」リニューアルなどお話をお聞きします。よろしくお願いします
はい。まず「生茶」の歴史からご説明しますね。
「生茶」は、2000年に松嶋菜々子さんをイメージキャラクターとして「お茶にも生があったんだ。」のコピーでデビューし、緑茶の持つ深いうまみをアピールし、一気にシェアを伸ばしました。


2000年発売当時の初代「生茶」

――確かに緑茶飲料のイメージを変えた商品でした
デビュー時の2000年には、代表的なヒット商品にも選出され、2005年に売り上げはピークを迎えました。

しかし、2004年に「伊右衛門」、2007年には「綾鷹」という競合商品が現れ、次第にシェアが奪われていきました。「生茶」もお客様や市場をみながら、(もしくは時代に即した)リニューアルを繰り返していましたが、シェアは4位まで落ち、後がない状態でした。

――そこで「新・生茶プロジェクト」が開始されるのですね
2014年にプロジェクトがスタートしました。
まず緑茶の置かれている背景を考えました。「緑茶飲料がコモディティ化していたこと」「急須から入れたお茶を知らない世代が増えたこと」など、緑茶文化は危機的状況でした。。

緑茶はもともと平安時代に海外から持ち込まれた貴重品でしたが、時代とともに変化し、その価値が徐々に失われているということも感じていました。
「生茶」のリニューアルは、商品を売りたいということだけでなく「緑茶文化そのものを、どうにかしたい」という思いもあり、市場主義的な発想ではない、緑茶の本質と向き合った「現代にあう、おいしいお茶を作りたい」という気持ちで取り組みました。

 

リニューアルで「生茶」再生へ

――その中から生まれたリニューアル。コンセプトは
「お茶の生命力をまるごと引き出した緑茶」というコンセプトにしました。

まず、なぜ「生茶」なのかということを議論しました。「生茶」の「生」は象形文字で、「大地から植物の新芽が芽生える様」が漢字の語源と言われており、それを「茶葉の生命力」と定義しました。

中味は「栄養豊富な緑茶葉を食べる」という発想を生かしました。
ハーブは細かくちぎると香りが引き立ちます。緑茶葉を細かくすればうまみや香りが引き出されるのではないか、と試行錯誤。
新「生茶」では、かぶせ茶を細かく刻んだ「微粉砕茶葉」を使用したことが、味づくりのポイントになっています。また、茶葉を低温抽出することで苦みのないうまみを引き出すなどの工夫もしています。

――パッケージデザインは外部デザイナー(宮田識氏が代表を務めるDRAFT)が考案されたそうですね。どのようなやり取りで、制作されたのでしょうか
パッケージデザインをお任せするだけでなく、先ほどお話した商品企画からDRAFTさんに入って頂いてます。

議論に議論を重ね、「お茶の生命力をまるごと引き出した緑茶」というコンセプトを打ち出し、まるでガラス瓶のように見えるパッケージや一貫性のあるコミュニケーションで、ブランドイメージを新生させました。

2016年にリニューアルされた「生茶」

――キリンビバレッジではそういったパッケージ開発の方法をとっているのですか
場合によりますが、一般的なパッケージ開発は、コンセプトを当社で決めてから代理店やデザイン会社にオリエンテーションし、デザインワークに入っていただくことが多いです。

DRAFTさんのとの進め方は特殊で、パッケージだけではなくコンセプト段階から入っていただき、ものづくりの本質的な部分まで一緒にご相談させていただくことが多いです。

――その方がやりやすいですか
コンセプト段階から関わって頂くと、ブランドとして同じ方向を向いている状態ではあるので、そういった点ではスムーズだったかもしれないです。

――パッケージの最初のイメージもバッチリでしたか
コンセプトから、「革新」「進化」「茶葉の生命力」「未来のグリーンティー」などのキーワードが出てきて、そこからプロトタイプのデザインを作っていただきました。
このデザインが現場だけでなく上層部にも評判がよかったです。このあと更に紆余曲折し、試行錯誤しましたが、最終的には最初のプロトタイプのイメージに近い形になりました。

――紆余曲折があったというのは?
今回は、容器を、一から作ったこともリニューアルの大きなポイントでした。特に大変だったのはプロトタイプのデザインがガラス瓶のようなフォルムをイメージしたものだったたため、そのイメージに近づくようさまざまな工夫をしました。
PETボトルでガラス瓶のような形状は、炭酸飲料ではよくみられる形ですがこれは炭酸ガスの圧があるため成り立っている形状なんです。炭酸以外では、ボトルの強度を保つために、リブ(くぼみ)やパネル(平滑部)を側面に施さなければならないため、なめらかな凸凹のない形状は、実は難しいんです。

生茶 ボトル
「生茶」のボトルは8面体のパネルで構成。丸いガラス瓶のように見える

「生茶」では、ガラス瓶のようなイメージを保ちつつ、どのようにして強度を保つかが課題でした。
当社のパッケージデザイン研究所がさまざまな検討をし、最終的には、全体のフォルムを崩さないようになだらかなパネルを入れることで、強度を保ちつつ、ガラス瓶のようなボトル形状のイメージを崩さない形に仕上がりました。

後編につづく

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