【2016年3月8日】段ボール製造で知られるダイナパックは3月7日、自社に導入した大型デジタル印刷機「HP Scitex 15500 コルゲートプレス」披露見学会を開催。午前中は印刷・広告関係者やメディアなど約50人が、午後は得意先など約70人が参加した。
HP Scitex 15500の導入は日本初となる。
「HP Scitex 15500 コルゲートプレス」は、UV硬化型のインクジェットプリント技術を使った超大判デジタル印刷機。製版の必要がなく、段ボールに前処理なしで直接印刷可能なため、工数を大幅削減でき、短納期に対応する。また、フルカラー印刷を小ロットで対応し、バリアブル印刷などの可変情報印刷も実現する。
従来、段ボール業界では直接印刷する場合は、色数の少ない印刷をフレキソ印刷機で行うケースが多かった。写真画質の多色刷りを使用する場合は、オフセット印刷機を使うか他社に依頼して印刷してもらい、でき上がった印刷物を段ボールと貼り合わせる必要があった。
「HP Scitex 15500 コルゲートプレス」は最大印刷サイズが1600×3200、紙厚は最大25mm、最小0.8mm。
この日の出力デモでは900×1250mmの段ボールを1時間に59枚のスピードで印刷した。
高画質なプリントモードでも、1時間に14枚の印刷が可能。
また、同機に合わせてカッティングプロッタ―「ZUND G3 サンプルカッター」を導入、後加工もデジタルに合わせ、刃型が必要のない工程を実現した。
披露会での登壇者のコメントは以下の通り。
ダイナパック杉山喜久雄社長
今年1月の社長就任時に「イノベーティブで存在感のある会社にする」ことを自社の目標として掲げた。段ボール業は、自社をどうやって際立たせるかが非常に難しいのが現状だ。
当社では既存の4つの事業にデジタル印刷事業を新たに加え、これにメリハリをつけて経営していく。
まず主力は段ボール事業。ここで得た資金を他の事業に配分投資していく。
「デジタル印刷事業」の役割はイノベーションにあり、事業創造と夢創造していくつもりだ。
今日のこの会場にもデジタル印刷事業部のスタッフが1カ月かけて作ってくれたさまざまな展示物がある。ワクワクするようなサンプルになった。
さて、段ボール市場を端的に言うと「伸びていない」ということになる。リーマンショックの落ち込みをじわじわ回復してきているが、典型的なGDP産業。安定味があるが面白みはない産業ともいえる。
段ボールの用途はほとんどが箱。しかし、当社では他にもいろいろな使い道があるのではないかと考えている。
その用途開発により、段ボールそのもののパイを広げていこうと思っている。
Scitexを使ってわれわれが新しい時代を作る。
Scitexの特徴は「美粧性」「バリアブル」「短納期」これに加えて大型の印刷ができること。従来の大量生産の箱を作るのではなく、ディスプレーやPOPなどテストマーケティング、オリジナルギフト、玩具、ペット用品などさまざまに用途を広げる。
デジタル事業部には、女性スタッフが多く入っており、若い力で事業創造してくれると期待している
若手の創造する新しい世界に加え、お客様のニーズこれにより新しい需要創造ができ、力強いデジタル事業ができるようになると思う。
HP Inc. アジアパシフィック&ジャパン グラフィクスソリューションビジネス ジェフ・デ・クレインディレクター & ゼネラル・マネージャー
デジタル印刷は大きな流れの中にあり、世界の市場も大きく変化を続けている。
パッケージの役割も変化し、包むというだけではなくなっている。
現在、包装は輸送と保護から販促ツールに変化している。
もはや説明するまでもないが星の数ほどのブランドがあり、店舗の棚には限りがある。
たくさんのブランドの中から、いかに選ばれるかというマーケティングコミュニケーションが求められている。
面白い調査データがある。
ユーザーの76%はお店に入ってから購入するブランドを決めているというのだ。
つまり、最も効果的なマーケティングコミュニケーションはパッケージということになる。最後の1mでユーザーにどう選んでもらうかが重要だ。
小売店はプライベートブランド(PB)を増やしている。PBはCMなど打たず、お店の中だけでコミュニケーションするブランド。店舗内でのコミュニケーションの重要性は増している。
大きなビルボードやポスターの代わりに、パッケージがお客さんに語りけるのだ。
Amazonは箱を広告媒体として売り出し始めた。パッケージは消費者とブランドを結びつけるツールとしての働きがあり、対話を生み出し、売り上げを増大させるだろう。
「もっと多様に」「より早く」「スマートに」この三つがデジタルの特徴。細分化に即したメッセージが送れる。地域や小集団に対し、統合的なマーケティングができるようになる。
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