【2018年6月12日】漫画「いとしの印刷ボーイズ」が今日6月12日、学研プラスから刊行される。
この漫画は、GetNavi webで人気の連載「今日も下版はできません! 」をもとにした単行本で、印刷会社の営業マンである刷元正(スリモトタダシ)が、個性豊かな登場人物たちとともに、さまざまな印刷トラブルに苦しみそれを克服したりしなかったりという、愛と感動のギャグマンガである。
すでに発売前から印刷業界では話題騒然のこの漫画。
今回は著者で元印刷会社の営業マンの「BOMANGA」こと奈良裕己さんと、発刊する学研プラスGetNavi web編集長の山田佑樹さんに話を聞いた。
「BOMANGA」こと奈良裕己さん(顔出しNGです)
――印刷会社にお勤めだったとのことですが、どのくらい在籍されたのですか
奈良 最初は中小の印刷会社で、その後広告制作会社などを経て、最後は大手の印刷会社に勤務し、そこでの経験が一番長かったです。
印刷にかかわったのは全部で10年ちょっとで、すべて営業部門でした。クライアントは百貨店や自動車関連、そして広告代理店などでした。
その後、会社を退職し、フリーランスでイラストや漫画を描いています。
――「今日も下版はできません!」の連載はどのような形で始まったのでしょう
奈良 以前からGetNavi本誌でイラストなどの仕事をさせていただいてました。その中で、2016年の夏に当時のゲットナビの統括編集長から「GetNavi webで何かやりませんか」と言われて、持ち込んだ3つの企画のうちの一つです。
山田 その編集長が熱意をもっていろいろ始めていたんですよね。
――「今日も下版はできません!」以外は、どんな企画を持ち込んだのですか
奈良 「子育て」と、趣味の「剣道」、そして「印刷会社」の3つです。
「子育て」の漫画はけっこうありますし、「剣道」も有名な剣道漫画がありまして、二つはボツとなりました。
ところが「印刷会社」の漫画は、見当たらないし「これはオモシロイかも!」となって始めることになりました。
――そういえば、あまり聞いたことがないですね。「広告代理店」や「出版社」なんてのはありますが
奈良 実はその後、調べたら印刷会社の漫画もいくつかあったんですが(笑)。
僕が描こうと思っているテーマ・テイストと被る作品はありませんでした。
「今日も下版はできません!」は、刷元たちがトラブルに巻き込まれるドタバタ劇ですが、印刷あるあるネタを根っこに、読者が思わずクスッと笑えるような話を目指しています。
――企画から連載開始まではどのくらいでしたか
奈良 「何か企画はないか」と聞かれてから2週間ほどで設定を考え、A4ペラ数枚くらいでキャラクターなどを描いて提案しました。
山田 1カ月ちょっと後には連載が始まっていましたよね。
――掲載後の反響はいかがでしたか
山田 思った以上に反響はありました。ウェブなのでPVが集まっているのが分かりますし、SNSなどでもコメントされていました。これは「いいな」という印象でしたね。
奈良 実は軽い気持ちで始めた連載だったので、思った以上の反響でちょっとビビりました(笑)。以前勤めていた会社の会議などでも、「こんな漫画がある」と話題になったとか…。
――漫画では、印刷会社のさまざまなトラブルが出てきます。元営業マンの奈良さんですが、あれは実話ですか?
奈良 いや~!僕の経験したものもありますが、仲間や知り合いの失敗談、ありがちな印刷トラブルを骨格にして話を膨らませているケースの方が多いです。
今でも昔の仲間との雑談の中からネタを拾ったりしています。
――連載では第1回の「ツンツン」(ピンホールをペンでツンツンして消す)から、かなりきわどい内容でした。クレームの心配は?
奈良 確かにピンホールのツンツンをはじめ、結構きわどい内容もあります。実際ツンツンでは知り合いから冗談交じりで「ネタばらしして、大丈夫なのか」と怒られました(笑)。
でも、あれは印刷会社が「どれだけ品質に気を使って、より良い印刷物を納めようとしているか」ということを描いたものです。本当に一般の方では気づかないようなピンホールでも印刷会社の社員は気になっちゃうんです(笑)。
――それも含めて、全編に印刷への愛情が感じられますね。刷元くんのトホホってなる瞬間に印刷関係者は感情移入しています
奈良 印刷関係者の飲み会で一番盛り上がるのが「トラブル体験談」なんですよ(笑)。それも大きなトラブルであればあるほど、みな聞き入って盛り上がる(笑)。みんな印刷が大好きなんです。
この漫画も「トラブル体験談が盛り上がる」というのがヒントになって企画を練っていきました。
――思い出の回などはありますか
奈良 「交差法」が出てきた回(第6話)です。
交差法は、目を寄り目にする立体視を利用して2つの原稿を見比べる校正技術なのですが、これをやっているキャラクターの墨賀さんは、実在のモデルがいます。大変お世話になった人で、思い出に残るすごい技術だったので、描きたいと思っていた内容でした。
印刷会社時代に交差法を教わった時はできなかったのですが、この原稿を書いている最中に何度も試していたら、できるようになって感動しました(笑)。
――キャラクターは実在の方が多い?
奈良 いえ、墨賀さん以外は、モデルになっている人はいないですね。知っている人、何人かのイメージを重ねて、「印刷会社にはこんな人いるよ」という人物にしています。
――好きなキャラは?
奈良 墨賀さん以外では、なんといても赤羽さんですね。昔、工場の主で、ぷかぷかタバコを吸って、その火を指で消す人が昔いました(笑)。
もちろん、今はたばこを工場の中では吸えないですけどね。
――さて、いよいよ書籍化ですが、発刊に対する反響はいかがでしたか。記者の周りでは「絶対買う」という声をたくさん聞きました。
奈良 僕のところにもSNSで「会社で教科書にする」「デザイナーさんにプレゼントする」といった声が届いています。
山田 広告代理店やメーカーなど、カタログやチラシで紙や印刷物に携わる方から多くの反響をいただいています。
やはり、「印刷のあるある」は印刷会社の方だけでなく、印刷関連の誰でも共感してもらえるものだと感じました。「この本を読めば、笑いながら学べる」というメッセージもいただいています。
――「ここを読んでほしい」というポイントはありますか
奈良 今回、本のプロデュース・編集をしていただいた著述家の石黒謙吾さんのアイデアで、刊行にあたりほぼ全ページの小口側に合計120個以上の「用語解説」を入れています。
印刷をまったく知らない方にも分かるような内容にし、漫画とこの解説を読めば、印刷の用語を理解できるようにしました。普段、文章を書かないので大変でした。
また、プロローグとエピローグ漫画を描き下ろしており、ここも見どころになっています。
山田 全部で160ページ。
奈良、山田 「16ページ折りが10折りぶん」です(笑)。
――最後に読者へメッセージを
山田 この漫画はこれまでもさまざまなタイアップを行っています。ハードワーカーなサラリーマンの刷元くんたちは、世の会社員から非常に共感されやすいようで、コンテンツとして非常に優秀です。
書籍化を機にさらにいろいろな仕掛けをしていけると思っています。
奈良 印刷会社は大変そうなイメージですが、個性豊かな人が多く、僕はどんなトラブルが起きても、徹夜をしても、今思えばとても楽しく仕事をしていました。
みんなトラブル体験談をとても楽しそうに語っていることが頭にあり、それを楽しく描いた漫画なので、いろいろな業界の方に読んでいただきたいと思っています。
今後はさらに刷元や他の登場人物たちの人間ドラマも描いていくので、ご期待ください。
主人公・刷元正(スリモトタダシ)は印刷会社の営業マン。毎回巻き起こる「下阪できない」印刷トラブルやミス、クレームの数々に、読者は胸を痛め、涙を流しながら笑い転げるという捧腹絶倒のストーリーが展開される。
160ページ、1,296円(税込み)。
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