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全国グラビア協同組合連合会 「第50回通常総会」初のオンライン開催 田口会長の挨拶を全文掲載

【2020年6月15日】全国グラビア協同組合連合会(全グラ)は6月3日、オンラインで「第50回通常総会」を開催。当日は、8単組21理事・2監事の全員が参加した。

議案は5月25日、書面開催された理事会で議決し、これを議案として上程する形で承認。軟包装のイメージアップを図り、グラビア印刷業界の社会的地位向上のための14の事業活動骨子を採択した。

 

「事業活動の骨子」

(1)省エネ、省資源とプラスチック資源循環による地球環境保全への対応
(2)(一社)日本印刷産業連合会と連携し、行政関連経済支援策・下請適正取引・優越的地位の濫用等に迅速な対応を図り、関連行政官庁との連携強化
(3)環境対策の推進
1)「グラビア印刷(軟包装)グリーン基準」に基づくGP制度の啓蒙と認定取得の奨励・周知活動
2)「規制と自主的取組のベストミックス」によるVOC排出削減へ向けての支援
3)地球温暖化防止のためのCO2排出量削減への取組
4)省エネ法への対応の取組
5)環境関連条例等への対応策の検討と規制緩和の推進
6)海洋プラスチックごみ問題について資材メーカーとの連携による資源循環に関する情報収集
(4)「品質判定ガイドライン-軟包装(インキ抜け)-」のセミナー開催等、理解と周知を得る活動の展開
(5)会員・賛助会員の増強
「グラビア印刷(軟包装)グリーン基準」に基づくGP制度の啓蒙と認定取得への近道として、組合加入促進を図る。
(6)(一社)日本印刷産業連合会への積極的な参加と、関連業界団体との連携強化
(7)青年部の育成と拡大
(8)機関誌「GPJAPAN」の内容充実と広告獲得、拡販
(9)(一社)日本印刷産業連合会の連携とホームページ運用による広報の取組
(10)外国人技能実習制度の業種認定を受け、技能評価試験の実施体制確立と実施
静電気火災の予防と対応への周知
(11)サイバーセキュリティー対策への取り組み
(12)消防法、有機溶剤中毒予防規則、改正大気汚染防止法、改正食品衛生法(容器包装のPL制度導入)、働き方改革、民法改正等の周知と遵守の徹底
(13)軟包装のイメージアップキャンペーンの展開推進
(14)新型コロナウイルス感染症の予防対策の徹底、収束後

 

田口薫会長あいさつ(全文)

記念すべき50回目の通常総会だが、新型コロナウイルス感染症対策から、皆さんと直接お会いして開催できないのは残念。

しかし、皆さんの力添えを得て、全グラは活動を継続しており、昨年度も、海洋プラスチック問題対応やフレキシブルパッケージのイメージアップキャンペーン活動について踏み出している。我々の存在意義も、ある程度は認められるまでになってきている。
ポスト・コロナについては、まだ分からないことが多いが、外国人技能実習制度については、あと一歩の段階にまででこぎ着けている。

今後、我々の業界がどう歩むべきか、どうすれば社員や仕入先を含めハッピーになれるかを一生懸命考えなければならない」と語り、業界の変遷と、現状について、次のように分析し、組合とは何かについて問いかけた。

我々の組合は、発足当初は中小企業組合法によって、大企業との差を埋め、中小零細企業の成長を促す目的で発足し、税、金融面での優遇などもあり、大きな成果を挙げ、経営の近代化を果たした。特に設備の割増償却制度は、企業にとっては魅力的で、手続きは組合を通して行われ、その手数料で組合は潤った。
参加した企業は、大規模な設備投資によって工場は立派になった。各社、設立当初は市街地に小さな工場を構えていたが、火災による危険防止等の理由から郊外に移転し、同時に、印刷機等の高度化を図った。

しかし、組合に加入しないアウトサイダーはそのまま留まったため、こうした流れからは取り残された。
そして、取り残されたのはハード面だけではなく、従業員の安全や周囲の環境に対する配慮や、社会的要請、軟包装材を供給する企業の使命とは何かについても情報を得ることなく、立ち遅れていった。更に、事業承継に際しても、立ち遅れた企業は難しい場面に直面している。

目先の事象に場当たり的に対応するしかないというのは、業界としては非常に残念なことである。
そうしたアウトサイダーの企業は、すべての面において事業継続に難があり、火災事故や行政により重大欠陥を指摘され、突然廃業することも多く、食品包装の安定供給面で不安がある。単に低価格でやってくれるから使い勝手がいいと考え、安価を要求したとしても、続かねば、客先で設備をすることになり、結局は『安物買いの銭失い』となる。

今、我々に社会が期待するのは、安値ではない。適正価格で、安定して、この先ずっと包材を供給することだ。そのためには、第一に、老朽化した設備の更新、新入社員の育成などに取り組む必要がある。この点、勘違いをしている向きが多いのは、日本の後進性を示している。製品を安くすれば事足れり、ではない。

価格強調主義に陥った例にオフセット業界がある。オフ輪と言うと、当初、10倍の生産能力を有する設備によって巨額の利益を上げた。オフセット印刷会社は、バブル時に、土地の暴騰により市街地の工場を売って郊外に移り、大いに業績を伸ばしたが、一方で、印刷加工賃は1/10に暴落し、一転、苦境に陥った。近年は、ペーパーレス化が加わり、更に苦しんでいる。印刷産業の売上は、昭和62年頃の9兆7000億円から、今は5兆400億円に大きく落ちているが、その差の4兆3000億円は量的なものよりも価格暴落による面が大きいとされている。

軟包材はオフセット印刷とは全く異なり、多種の基材の組み合わせによって内容物の保護、流通の利便性、包装適性を追求しているので、一般には理解されにくい。最近、安永研二副理事長が経済産業省、中小企業庁、公正取引委員会に対し積極的にアプローチし、軟包装についての誤解をとき、正しい認識を持っていただけるようになった。また、厚生労働省とは、日商グラビアさんが中心となり、3年の歳月を費やし、ようやく外国人技能実習制度の認定に目前にこぎつけている。

環境省とはVOC削減、大気汚染防止法改正の際、全国グラビア協同組合連合会より3名が印刷小委員会の委員となり、実現可能な規制値を導き出し、さらにVOC削減装置の探求、各工場、印刷機、ラミネーターとのカスタマイズに成功し、導入した工場の公開運転によって改良が進み、省エネ型VOC処理装置を各社が導入し、国家目標の30%削減をはるかに上回る70%削減に成功し、監督官庁はじめ社会的な信用は厚い。

そして長年業界が苦しんでいる過剰品質対策も、大手2社の協力もあり『品質基準書』の一部が完成した。
このように現在、全国グラビア協同組合連合会は、軟包材がその価値にふさわしい価格を認めていただくために、各社のボランティアでなんとかやっている。このことに目を向けないフリーライダー(ただ乗り)の企業があるなら、それは業界全体の陥没を意味する。

大日本印刷、凸版印刷の2大メーカーも日本印刷産業連合会(日印産連)に7名、共同印刷も4名の社員を派遣し、なおかつ軟包装衛生協議会にも大凸の2社は各1名を派遣し、人件費等、多大な負担をしてくれていることも忘れてはならない。西欧には“ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige:「高貴なるものは義務を負う」)”といって、国家の危機に際し、貴族が戦場に駆り出されたり、志願した例は数多い。

アメリカでも、名士がボランティア活動をするのは一般的で、これは企業のCSR活動としては重要なことである。我業界においても、フリーライダー的な企業は多いが、我々の周知努力の足らなさもそれを助長している。今後、自分達を別の角度から見つめ、社会的認知を向上させていきたい。

オブリゲーション(obligation)は、義務、義理、恩義、おかげと訳され、使い方としては、例えば、「中国は国際社会に対してオブリゲーションを感じていない。大国となったのであるから、かつて国際社会から受けたものに対し恩返しすべきである。
自分の利益のみの追求では世界の大国とは言えない」というように使う。日本の印刷業界につい言えば、日印産連には大日本印刷は3名、凸版印刷は4名、共同印刷は2名(昨年度4名)の役員を派出している。当然、人件費も相当分、各社負担である。グラビアの組合を見るとどうだろう。業界の上位にいる大企業が未だにアウトサイダーとなっている。当然、オブリゲーションを果たしていないと言える。

これまで、業界の存亡にかかわるVOC排出削減問題、労働安全、プラスチック削減、過剰品質是正、外国人技能実習制度のグラビア業種認定等に参加することなく、フリーライダーの立場で、メリットのみを享受し、本来、応分の負担をすべきなのにしていないのはいかがなものか。我々の力になって、業界の発展に力を貸していただきたい。さすれば業界は安定的発展を見るだろう。インサイダーもアウトサイダーも一考していただきたい。

 

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