【2018年3月30日】日本印刷産業連合会(日印産連)デジタルプレス推進協議会は3月29日、東京都中央区新富の日本印刷会館で、「『デジタル印刷の現状と展望』に関する調査報告会」を開催。印刷関係者やマスコミなど約130人が参加した。
第1部、2部に続き第3部パネルディスカッション「デジタル印刷ビジネスの動向」では、デジタル印刷機メーカー4社をパネリストにディスカッションを行った。
レポートではその内容を紹介する(一部抜粋)。
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第3部でも引き続きコーディネーターは郡司秀明氏が務めた。
パネリストは以下の4氏。
日本HPデジタルプレス事業本部 山田大策氏
富士ゼロックスグラフィックコミュニケーションフロンティア部 杉田晴紀氏
リコー新規事業本部 鎌足嘉彦氏
SCREENグラフィックソリューションズ新規事業開発部 八田耕治氏
――アナログ印刷機を若い人が勉強しても、その人が40歳くらいになった時にあるのかなと思うのでは?また、デジタルに置き換わっているが、印刷はどうなるか
鎌足 価値の低いものはWebに移行し、価値の高いものや、人の思いがこもるものは印刷物として残っていく。紙の可能性はAR当社でいう「クリッカブルペーパー」などにあると考える。
杉田 自分も印刷業にかかわらせていただいて20年。若手の印刷会社経営者とコラボすると印刷業界以外の話ばかりになる。
最近の話題では、ICTに飲まれると「規模」か「特化」かに分かれる。世界の企業はフォンハイの規模に負けた。一方で日本の大田区はニッチがある。印刷も同じで、規模か地域特化型かを選択しなければならず、地域特化の場合はデジタル印刷になるだろう。また、成功している会社はパッキングや物流も一緒にやっている。
中抜きされるので、二次受けや三次受けの下請けは厳しくなる
八田 「印刷物とは?」と考えると情報を伝えるメディアだった。しかし、それはデジタルデバイスにシフトしており、この流れは止められない。
印刷は広告物になる。しかし、人は1日、3~5万の広告に触れ、記憶に残るのはその中の5件という。そうなった時に、おっと驚く媒体が必要で、紙もその一つ。
山田 まさに広告主サイドの紙に対するイメージが変わった。「紙なんか」という考え方から揺り戻しが起こり、「紙でしか伝わらないよね」という価値が話され始めている。若い印刷業の人たちには「印刷ってもっと面白くなるよ」と言えるようになる夢ができたと思う。
――HPは軟包装にも力を入れているが、日本での状況は
山田 軟包装はここ5年かなり伸びている。日本は遅れ気味だったのが、逆にリーダーシップ取っている。「Indigo20000」で、コカ・コーラやロッテのパッケージを印刷した。パッケージは、単純な印刷ではなく媒体戦略で、投資をしていく対象に代わっている。
品質に厳しい日本でできたことで、海外でもこれを認める動きがあり、広告代理店もブランドも訴求の威力を否定できない。
――デジタル印刷が持つカスタマイズの力は
鎌足 マーケティング戦略に沿ったカスタマイズとなる。限られた層に高級感を与えるような販促物がだろう。
杉田 新聞が50%切るからヤバイと言っていたのは10年前。マルケトなど大きなMA(マーケティングオートメーション)もあれば、小さなMAもある。DMをやりたいという人は非常に分析しており、どこに刺さるかを考えている。デジタルマーケティングのみではだめで、DMただ送るのもだめ。最初にDMを送りその個別URLから誰が見ているかを分析するなどの工夫が必要という点でカスタマイズが利用される。
八田 じゃあ、どうやってその仕組みを作るのかというと難しくなる、DMのリード10,000人の中でどういう分類をするのかも難しい。そこに印刷が入るとさらに難しい。
DMをどう作るかは、セキュリティーの課題もあり、ソフトでカバーしているが、パーツ的な状況なのでシステム全体から、AIなどを入れて設計していかなければならないと考えている。
――AIの活用法などは
山田 AIでリコメンドするのはデジタル印刷と親和性が高い。ポイントは紙の価値を広告主が理解することで、「DMは減らしたら怖いけど、増やす対象じゃないよね」という意識を変えなければならない。
――ディノス・セシールの例は
山田 あれはタイミングの選択だと思う。ネット通販でカートに入れっぱなしにした商品を、次の日にDMで進められたらうれしいということ。広告主と印刷会社が、これを理解し始めている。デジタル側の人でも「デジタルマーケで何でもできると思うのは、もう格好よくない」と言い始めている。紙も含めて考えて、適切なプレイヤーがマーケティングをサポートすることが大事だろう。
杉田 オートメーションは「残業時間なし」「人を採用できない時代でも仕事が回る」ということ。印刷会社もデジタル化の効果として、クライアントへ相乗効果がある提案をしていくことが大事だと考える。
――5年後、デジタル印刷はどうなるか
鎌足 印刷市場は縮小するがデジタル印刷は広がっていく。メディアとともに価値を高めていくことが大事だろう。
杉田 今、デジタル印刷は10%程度だが、どこかでドカンと需要が来て50%までシェアが上がるだろう。欧米では7割と予測するが、日本はオフの技術がすごいのでそこまでは行かないという予測。人口減で、今のままではもうダメだという日が来るはず。5年後ではなくもうちょっと先だろう。
八田 全体の6割までデジタルになると予測する。広告を考えた時にパーソナルが3割、セグメントが3割、マスが3割で、パーソナルとセグメントを合わせて60%がデジタル印刷という計算だ。時期は2020年から5年程度たったあたりになるのではないか。
山田 気持ちはあと5年くらいで50%になってほしいし、そこに向けて何を行うかを考えている。
すでにスタートアップ企業に、さまざまな業界が壁を壊されてるので、その速度に影響されるだろう。5年先の予測はできるが、10年後は分からないのが今の世の中。HPも10年後にはパソコンを売っているかもわからないし、これだけ変化が激しいと10年後考える意味がないと思う。
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