【2018年3月30日】日本印刷産業連合会(日印産連)デジタルプレス推進協議会は3月29日、東京都中央区新富の日本印刷会館で、「『デジタル印刷の現状と展望』に関する調査報告会」を開催。印刷関係者やマスコミなど約130人が参加した。
同報告会では、日印産連が会員企業向けに行った「デジタル印刷に関するアンケート調査」をもとに報告やパネルディスカッションを行った。
冒頭、日印産連の小野隆弘常務理事が次のようにあいさつした。
「今回は募集から3、4日で満席となる盛況ぶりだった。2010年から今回のような形で、JAGATの力を借りて行い8回目の開催となった。アンケートの報告会に続いてパネルディスカッションを2本行い、デジタル印刷機械メーカーの方にお話をいただく。このセミナーがビジネスの一助になればと思う」。
【関連記事】
【レポート・後編】日印産連「デジタル印刷に関するアンケート調査」を報告 5年後のデジタル印刷は?
第1部の「印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケート調査報告」では、まずモデレーターの郡司秀明氏(日本印刷産業連合会、デジタルプレス推進協議会座長)が、アンケートのサマリーを次のようにまとめた。
「デジタル印刷の割合は10.6%」
「平均保有台数は4.22台(昨年度は3.86台)」
「デジタル市場の期待を集めるのはDM」
「受注一件当たりは500枚以下が56.4%(10,000枚以上は9.9%、データプリントの平均ロットは92,000枚)
「デジタル印刷の売り上げは今後とも、従来印刷を超えることはないと答えたのは60.6%。(だが昨年は63%)」
続いて日本印刷技術協会の花房賢氏がアンケート全体の説明を行った。
この中で「デジタル印刷は従来印刷を超えるか」という質問に対して賛否両方の理由を紹介した。
NOの意見では
「設備やランニングコストが高く、償却期間が短い。大ロットでは代替機にならない」
「書籍をメインとする印刷会社の取ってまだ課題が多い」
「軟包装用のインキが不足」
「小ロットの化粧品パッケージに採用したいが耐性面の要求を満たさない」
など、現在の仕事を想定したものが多かった。
一方、YESの意見では
「活版がオフに製版がDTPに、刷版がCTPに変わったように印刷機も変わる」
「オフが主流はあと10年、1万、2万部はデジタルの範囲となる」
「B2サイズインクジェットにすれば、CTPのコストが1日12万円浮く。1台1億円切れば導入する企業が増えるだろう」
と今後を見据えた意見が多かった。
第2部パネルディスカッション「デジタル印刷の技術動向」では、各メーカーなどから技術動向として「今後のデジタル印刷機はどのようになってゆくのか?」について議論した。
コーディネーターは郡司秀明氏。
パネリストとしてデジタル印刷機メーカーから3氏が登壇し、以下のように述べた(概要抜粋)。
コダック エンタープライズインクジェットシステム事業部山田明伸氏
すべてのユーザーが成功しているわけではないが、アプリケーションが当たっている会社は稼働率が高く、データプリント以外でもビジネスが確立し始めている。バリアブルであれば、当社の技術が使われることが多いと感じる。
当社はヘッドも印刷機も作っているが、印刷機は顧客が仕事を持っていなければ、ビジネスにならず、新たな市場が必要だろう。いつデジタルがどのくらいの割合になるかというのは非常に難しいが、大幅に伸びる可能性があると思う。
キヤノンプロダクションプリンティングシステムズ マーケティング本部池本親明氏
デジタル印刷は、ロットによって最適なデバイスが異なる。トランザクション系は追い刷りが多く、カラー印刷をしたことがない。一方、商業印刷系はデータのハンドリングが弱い。ビジネスを考えた時は印刷する種類を絞る方が効率はいい。例えば名刺などは、受注をかき集めて生産していく、ウェブtoプリントに集約されるだろう。
デジタルの選定は、どの紙を使いたいかということで決まる。アプリケーションを知らなければ、印刷機をつくることもできない。
海外で印刷は、グラフィックアーツと呼ばれているが、10年後はオフセット印刷を芸術としてカッコイイというアーティストが出てくるのではないだろうか。
富士フィルムク·ローバルグラフィックシステムズ デジタルプレス事業部宮城安利氏
デジタル印刷が一般連帳では500部で採算に乗る。DMなどを印刷するトナータイプでは、ボリュームゾーンはもっと下の部数。品質や色に関しては、あまり最終ユーザーは関係ない。日本では「品質」という呪縛に陥るが、耳を傾けざるを得ない。一方、海外であればある程度の品質でOKとなる。
今日は、冊子のページの片方がオフ、片方がトナーという見本をお持ちした。以前はこんなことは怖くてできなかったが、今はできることを覚えておいてほしい。
我々は印刷会社のワークフローを学んでいる。どこに何のアクセサリーが必要かを学んでいるということだ。
デジタル印刷がシェアの過半を占めるのはという質問だが、5年後は資材が安くなっているはずで、デジタル印刷が2,000部ほどでペイするようになる。そのタイミングでオフセットの切り替えが来た時に、一気に変わるのではないか。5~10年の間と見ている。
以下につづく
【レポート・後編】日印産連「デジタル印刷に関するアンケート調査」を報告 5年後のデジタル印刷は?
Copyright © 2025 プリント&プロモーション . ALL Rights Reserved.