【2023年9月19日】ジャニー喜多川氏の性加害事件に端を発する「ジャニーズのCM打ち切り問題」について、ネスレ日本元社長の高岡浩三氏が9月11日自身のフェイスブックで「いったい何をこんなに騒いでいるのだろうか?という感覚でジャニーズ問題を見ている」と発言。CM打ち切りを決めた大手企業を痛烈に批判し話題となった。
同氏は「キットカットの受験生応援キャンペーン」や「ネスカフェアンバサダー」などの企画を成功させ、マーケティングの業界では知られた人物だ。
その後、週刊現代の取材に答え、ジャニー氏の性加害について「単なる噂とはいえ昔から耳にしていた」「グローバルの常識では、噂の段階でもNG」とし、急に契約の打ち切りを決めたクライアントやメディアに対し「その前に反省しましょうよ」と呼び掛けた。
まったくその通りだと思うし、「知らなかった」などと言っている大手広告主たちには「インテリジェンス」がないのだとも感じる。インテリジェンスとは、知識や知性ではなく「情報収集と取捨の能力」のことだ。
広告を発注する側には、広告に対する知識もなければ、判断する人材もいない、このために大手広告代理店の言いなりになってしまうという構図がある。
高岡氏はインタビューで、タレント起用の際も広告代理店に頼まず「自分が金額の交渉までしていました」と話しているが、このようなケースはまれだ。
実はネスレは以前から、広告業界に疑問を投げかけていた企業だ。
20年以上前だが日本広告業協会(現・日本アドバタイザーズ協会)という広告主だけが集まる会の勉強会を取材したことがある。
その勉強会のパネルディスカッションでは、広告主に加え広告代理店を招き意見交換した。この中でネスレの広告担当者は、日本の広告代理店の報酬制度について、かなり耳の痛い提言を行い、その提言をもとにした勉強会もそれから繰り返し行われていたと記憶している。
日本の広告費用は基本的に「グロス(総額請求)」もしくは「コミッション(手数料)」での支払いになっている。一方で海外は「フィー(作業報酬)」での支払いが一般的だ。
違いを簡単に言えば、前者は広告会社がすべての予算を管理し、後者は広告主が予算管理するシステムだ。ネスレの主張は「グロス請求なんて中身がブラックボックスで、どこに何が使われたのかなど、広告主にはほぼわからない」というものだったし、実際その通りなのだ。
こういった違いのために、日本では海外と異なり広告代理店に比較的力があり「広告枠を売ってあげる」というような売り手市場とみられるケースも多い。
SNSの陰謀論で「また〇〇か!」「〇〇の情報操作だ!」と大手代理店の名前が出てしまうのは、こういった制度からくる印象の違いのためだろう。
ネスレは20年以上前から「こういった制度はおかしい」と踏み込んだ発言をして、ほぼ孤立無援ながら、孤軍奮闘していたのを思い出す。
ジャニーズ問題をBBCが取り上げてやっと日本のマスコミも動いたように、日本では国内から発言することが難しい環境にある。あれだけ政治家には「忖度をするな」と言っていたテレビ局も新聞も、ジャニー喜多川氏やジャニーズ事務所には忖度していたし、今でもしているのだ。
デジタルプリント業界の著名人である大野インクジェットコンサルティングの大野彰得氏も「日本は黒船が来ないと変わらない」と20年近く前から発言していた。
業界関係者は、自ら変わろうとしないし、業界紙誌もクライアントや業界団体にベッタリで問題点を追及しない。
横並びでインテリジェンスのない体質は、どこの業界でもジャニーズやビッグモーター事件を起こしかねないと思うし、もう起こっているかもしれない。
自分も胸に手を当てて、もう一度報道の在り方を考えてみようと思うし、これを読んだ読者の方たちも考えてほしい。
誰の言葉かは忘れたが、人生はいつも「show must go on(始まったら最後までやり遂げなければならない)」だ。
その前に情報を取捨し、しっかりと発信する能力を持つよう準備をしておこうと思う。
【独自】《ジャニーズCM打ち切り問題》元ネスレ社長独占告白! 看板商品のCMに退所後の香取慎吾さんを起用…「タレントには罪がない」という理由
https://gendai.media/articles/-/116334
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