【2019年3月20日】「第3回 デジタルテキスタイル研究部会講演会」が3月19日、東京都渋谷区の文化学園大学で開催され、プリンティングやアパレル関係者、デザイナーなど100人以上が参加した。
「デジタルテキスタイル研究部会」は、2017年4月に設立され、企業と消費者との関係が変化する中、ファッション産業の新しい飛躍を目指して、情報提供や意見交流を行っている。
今回は「デジタルとファッションのものづくり」をテーマに、3氏が講演を行った。
文化学園大学 服装デザイン学研究室 教授の河本和郎氏は「つながる社会のつながるファッション(Fashion as a Service)」のテーマで以下のように講演した。
私の授業では、今の学校にいる企業も一緒になってもらい、学生にテキスタイル・アパレルの現場に出てもらい、また現場の人に来てもらい一緒に授業をしている。
授業では「ものづくり→もうちょっと大きな取り組み」という形で仮説を立てて行っている。
現代のコミュニケーションはLINEでなどのメッセージアプリが中心で、メールすら見なくなった。授業でも、スマホを出して使いながら行うのも当たり前になった。音声認識や画像認識、翻訳も非常に発達し使いやすくなり、海外ソフトのマニュアルも一気に訳してくれる。このように人も物もインターネットを介して「つながった社会」になった。
さて、昭和の最後にアパレルの市場規模位は10兆円だった。それが下がったとはいえ今も9兆円ほどのマーケットがある。
一方で、購入物価指数は1990年を100とすると今は60を切っており、事業者も半減し、毎年10億枚が売れ残っている。
時代は「つくる・うる」から「つながる」へ移行している。
また、ものを「売るためのサービス」から「サービスを売る」時代になった。
アパレル業界も「物を作る」だけでなく、「管理する」「洗う」「再販する」「処分する」などのサービスにつながった状態でなければ意味がない。
アパレルの9兆円市場は、他の業界からみると魅力的で、どんどん参入がある。一方でアパレルにもともと板庇宇都田T利は元気がない。
つながる社会によって、暮らしや働き方まで変わっていくので、これに合わせて、我々もがんばっていこう。
また、リコー 執行役員 CIP開発本部 本部長、CIP事業本部 副本部長の森田哲也氏は「インクジェットで広がるアパレルビジネスの新しい可能性」で以下のように話した。
テキスタイル業界で課題となっているのは環境への負荷。産業界での排水汚染の20%が繊維から、またテキスタイルの廃棄物は全体の5%にも及ぶ。
大量生産・大量消費から、必要なものをつくる時代になったそれに適しているのはデジタルプリントだ。
アナログとデジタルを比べた際、「絵柄の自由度」「カラーマッチング」「絵柄変更時間」「少量生産時の単価」「生産納期」を比べるとデジタルプリントが勝っている。アナログが優位なのは「大量生産時の単価」くらいだ。しかし、いまだにテキスタイル全体に対するデジタルプリントの割合は5、6%に過ぎない。
リコーでは成長戦略の中で「オフィスプリンティング」から、プリントしたものが販売できる「デジタルビジネス」へのシフトを計画している。
ガーメントプリンタでは小型で店頭用のプリンタ「RICHO Ri100」や、買収したアナジェット社の産業用プリンタ「RICHO Ri3000/6000」などを展開。同じく、買収したスウェーデンのカラーリールの刺しゅう機は、白い糸にIJで着色して刺しゅうするため、自由な色を再現でき、これまでの刺しゅうでは不可能だったグラデーションにも対応している。
リコーの「デジタルマクロファクトリー構想」では、さまざまな製品をデジタルプリントで生産するが、これをコンバーター、ブランドオーナー、消費者を繋ぎ、オンデマンドで無駄なく、環境負荷を下げた形で実現したいと思っている。
ぜひ、この構想に参加いただき、一緒に環境負荷の軽減に取り組んでいただきたい。
このほか研究会では、マークス ジェネラルマネージャーの樋上和則氏が「デジタルを生かしたものづくりの実践について」のテーマで講演を行った。
Copyright © 2024 プリント&プロモーション . ALL Rights Reserved.