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【レポート】広州・上海 2大展示会を行く③  「APPP(上海広印展)」 超巨大プリンタ並ぶ異質の市場 日本上陸はあるのか⁉

【2025年4月7日】3月の初め、中国でプリンティング関連の展示会が広州と上海でまったく同時期にプリンティング関連の展示会が開かれた。
一つは広州市の「Print South China2025(華南国際印刷展)」をはじめとする4つの展示会群、もう一つは上海市の「APPP(上海広印展)」で、いずれも3月4日~7日までの期間に開催された。

今回は「Print South China2025<デジタル印刷機編>」「Print South China2025<デジタル印刷機編>」に続き「APPP(上海広印展)編」をお届けする。

 

APPP(上海広印展)

「APPP(上海広印展)」は、上海の国家会展中心(NECC SHANG HAI)で開催された。
同展示会場は屋内だけで40万㎡と広州の会場よりもさらに広い。ホールは2階建てで1~8ホールまで。「APPP」では1、2、5、6、7、8ホールの2階部分で行われた。

この展示会場、ホールが一点を中心に放射状にホールが広がっているのだが、その中心部分が通り抜けできないためにぐるっと回って反対のホールに行かねばならず、なかなか不便。広州の展示会場の方が巡回しやすかった。

さてAPPPだが、こちらは主に屋外広告に関する資機材やサービス、部材、技術などを集めた見本市。
このため、超大型プリンタの出品が目立った。
日本メーカーでは、もっとも大型でも3m幅のプリンタしか販売していないが、これは小さい方で5m級が当たり前のように並ぶ。
それを超える超大型では、四川晶絵科技「CJ-10000PLUS」、神画「MJ-6600」、STO世通の「DI6600hybrid」6.6m、美西MEIXIのプリンタも6m級だった。

最大は旭成電子科技(広州)の「XULI7200MAX」で7.2m。こんな大きなプリンタを作ってもメディアがないだろうと思ったが、3m幅のメディアを2つ掛けるという使い方ができると聞いて納得した。

屋外広告規制が緩いため、大型のメディアを張り合わせてつくる巨大広告も求められるのだろう。
10億人以上の人口を抱える巨大市場の中国だ。単純に言えば屋外広告も日本の10倍の需要があるということだ。

こちらもやはり、ほとんどがUVインク搭載のプリンタだった。理由はレポート②で書いたとおりだが、溶剤系と異なりエイジング(プリント後にインクを定着させる時間)が必要ないことも中国人の合理性には合っていると思う。
さらにこのUVプリントの特性を生かし、積層プリントを実演するブースがあった。最も厚みがあるものでは2㎜以上という厚さを出せる製品もあった。

プリンターの出力品質はというと、ほぼ全部が及第点以上。「品質の差はない」と日本のメーカーも言い切るほどに、中国製プリンターの性能は良くなっている。

このほか目立ったのはUV-DTFとそれで作成されるデカールプリンタだ。
転写用フィルムの上にUVインクで出力し、これを金属やガラス、木材、布などにこすりつけると転写できるというものだ。

曲面や多面体へのプリントは直印では難しかったのだが、このデカールを使えば簡単にでき、グッズづくりにかかる手間と時間が大幅に削減される。中国では大人気で、1人で2000台を販売したという営業マンもいるという。
日本では3月にイメージ・マジックミマキエンジニアリングがこのタイプのプリンタを発売した。

ビザなし渡航が可能になり、比較的近隣で、大きな展示会が開催される中国。日本からも行く人は増えるだろう。実際に上に上げた二つの展示会に行ったという人もちらほらおり、会場で知人にも会った。日本では見ることができない機器が並ぶ見本市に日本人が行けば触発されるのは無理もない。

では、これらの機器がすぐに日本に輸入されて活用されるのだろうか?それはすぐにはないだろうと思う。
一つには保守サービスの問題があるからだ。
中国のプリンタメーカーは今でこそ保守サービスがあるが、かつては売ったら売りっぱなしというケースも多かった。保守は別の会社が行うというざっくばらんなシステムだ。
これは日本では通用しない。かつて日本のプリント屋さんで、海外製品を導入して出力していた会社があったが、故障の際に「部品の到着が1カ月後」と言われ、仕事にならなかったという話を聞いたことがある。
さすがに今はそんなことないと信じたいが、導入を検討する方は、この辺りの体制をしっかり確認してほしい。

中古のヘッドを販売する会社ブースも(撮影:大野インクジェットコンサル)

もう一つ、超大型プリンタが目立ったが、これらの機械は日本には大きすぎるのだ。

中国は人口100万人都市は93カ所、1000万人以上の都市は10カ所ある。ここにさまざまな屋外広告を供給するには、巨大な機械が必要だ。
しかし、日本は100万都市は11のみで、1000万都市はない(東京が約987万人)、屋外広告規制も厳しく(東京都では商業地域で100㎡以下)であることから、大きな危機を導入しても小回りが利かなず、もてあます。

屋外広告規制が緩く、ビルの壁面全部を使用した100㎡以上の巨大広告が並ぶ広州。街も巨大で人口は約1900万人

さらには工場環境も狭小であるケースが多く、置く場所もない。
残念ながらというか、幸いにというか、これら超大型プリンタが輸入されることはほぼないだろう。

一方で、屋外広告規制が緩い新興国には、どんどん中国製の機械が売れていく。上記展示会でも中東やアフリカなどからの来場者を多く見かけた。また、米国も巨大広告物が好まれ、国土も広く、大きな人口を抱えており、これらの機器が日本よりは受け入れられる土壌があるだろう。

日本のメーカーはそのクラスの機器はつくっていないが、今後も同じだろうか…。
「日本はガラパゴス化している」という声も聞こえてくるが、どう対抗していくのか注目していきたい。

レポート④では、中国視察出張の豆知識などをお伝えする。

【レポート】広州・上海 2大展示会を行く④ 中国渡航まめ知識 事前準備~渡航~街歩き

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