【2025年4月1日】3月の初め、中国でプリンティング関連の展示会が広州と上海でまったく同時期にプリンティング関連の展示会が開かれた。
一つは広州市の「Print South China2025(華南国際印刷展)」をはじめとする4つの展示会群、もう一つは上海市の「APPP(上海広印展)」で、いずれも3月4日~7日までの期間に開催された。
それぞれ異なる性格の展示会で「Print South China2025」は一般印刷からパッケージ、ラベルを中心に、ポスターなどで活用される大判インクジェットプリンタ(中型)までを扱っていた。
一方の「APPP」は、サイン&ディスプレイが中心で、大判プリンタやカッティングプロッタなどが展示されていた。
いずれも日本未上陸の製品が展示されるなど、興味深い展示会だった。
プリント&プロモーションは両展示会を連続で取材。コロナ禍で情報の入ってこなかった中国プリンティング業界の現状を、両展示会の開かれた都市の様子などとともにレポートする。
「Print South China2025」は、同展と「SINOLABEL」「SINO PACK」「PACKINNO」からなる展示会群。
「Print South China2025」は一般印刷やデジタル印刷、パッケージ印刷を、「SINOLABEL」はその名の通りラベル印刷とその後加工、「SINO PACK」「PACKINNO」は主に食品包装に関する機器を取り扱っていた。
当サイトではプリンティングにかかわりの深い「Print South China2025」と「SINO LABEL」に絞ってレポートする。
まず会場の中国輸出入見本市会場だが、広州市内の新興開発地区に建てられた巨大な施設だ。屋内展示スペースは約33.8万㎡と、ビッグサイト11万5000㎡の約3倍もあり、会場に入った瞬間に「これはすべてを取材することは不可能」と思わせるような光景が広がっていた。
これを見てほしい。
会場の入口から通路を見ているのだが、向こうの端が見えない。
会場内も、一つのホールがビッグサイトの1.5倍以上あり、それが完全に2階建てになっているのだ(実際には1階と4階が展示会場)。
一方で、展示会場が完全に2段重ねなので、上を見てから、折り返して下の階を見るといった回遊のしやすさを感じた。余談だが、これが東京ビッグサイトだと、東館と南館はまだよいが、西館や会議棟などに行くには10分から15分かかり、往復すればその倍の時間もかかる。世界最悪に近い展示会場があの東京ビッグサイトだと思う。
さて、そんな絶望感いっぱいで始まった展示会取材。
会場の公用語は当然中国語で、各ブースに1,2人は英語を話せる社員も配置している。
記者は中国語に堪能で、英語もペラペラ…だったらいいのだが、挨拶程度しかできない。
そこで活躍するのがGoogle翻訳などの翻訳アプリだ。
Google翻訳はほとんど聞き取りミスもなく、「会話モード」にすれば互いの言語を押してしゃべるだけで、言葉のキャッチボールができる。
出展物だがデジタル印刷機が中心。特に「SINO LABEL」は、ラベル印刷をデジタル化しようという動きが大きく見えた。
日本ではまだそれほどラベルのデジタル印刷は進んでいないが、中国は多くの人が興味を持っている。
なぜかというと日本は品質に厳しく、デジタル印刷の画質に特に印刷屋さんが満足しないからだ。
展示されていたラベル用デジタル印刷機の特徴としてあげられるのはUVインクを使っていること。これも日本ではなかなか厳しい。ラベルの用途として最も多いのは「食品」だからだ。「食品」に使うにはUVインクは臭気が強すぎるのだ。UVインクには開始剤という紫外線を当てると硬化する素材が入っている。これがUV臭と言われるにおいの原因で「食品にはとても使えない」というのが、日本の企業の共通認識になっている。それでも日本のUVインクはかなり臭気が少なくなっており、素人から見れば使えなくもないと思うのだが…。
珍しい展示物では、この理想智能のこのデジタル印刷機。ロールtoロールと枚葉(A4)の両方に対応してロールの場合45m/分とのこと。この会社、理想科学工業のロゴマークをブースに掲げていたので現地法人かと思ったら、「まったく関係ない会社です」と理想科学の方から教えていただいた。理想科学が買収した東芝テックのヘッド技術を活用しているそうで、このためにロゴを掲出したのだとか…。
中国ではいまだによくあることで、日本製品はしっかりしているというイメージのためだろう。
これ以外にもUVのデジタル印刷機は多数展示されていた。中国の会社ではこれが当たり前なのだが、各社ともにどこのヘッドを使っているのか公表している。
最も多いのがエプソンで8割ほど、次にリコー、京セラと続く感じ。
あとで裏事情を聞いたが、エプソンは現地に多くのそれも決裁権がある社員さんを送り込んで営業活動しているそうで、中国でどんどんヘッドを売っているのだとか。
というのも、それまでは家庭用プリンタを購入して外したヘッドを売ったり、ヘッドを横流しされたりなどがけっこうあったそうで、「他人に売られてしまうぐらいなら自分たちで売ろう」ということになったようだ。
出力速度は40~60m/分が最も多く、各社のフラグシップ機では100mを越えるものもあり、最速では普理司(PARISI、広州)の奥比达AOBEADブランド「DSMART-220pro」が160m/分だった。
枚葉では笙阳が飛陽聯合(FYUNION)ブランドのインクジェットデジタル印刷機「FY-V JET750」が2000枚/時(390×543㎜)だった。
日本からは、コニカミノルタが「AccrioLabel 400」(39.9m/分)、「AccrioLabel 230」(23.4m/分)という330㎜幅の2機種を出品していた。
出力幅は330㎜幅が最も多いが、これは日本も同じで、ラベル印刷でちょうど取り都合がよいのがそのサイズなのだ。
代理店では至簡知印COPITEK(広州)が、日本のリコー「C7200」「C5210」、京セラ「TASKalfaProC150」といったプロダクションプリンタを展示していた。
メーカーの応援説明員も来ており、話を聞いたところプロダクションプリンタの中国市場は1位はコニカミノルタ、2位はリコーか富士ビジネスイノベーションという。
レポート②に続く
Copyright © 2025 プリント&プロモーション . ALL Rights Reserved.