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フォトブック通販のトップ企業「しまうまプリント」 執行役員兼マーケティング部 部長 八坂勝也氏〈シリーズ二刀流②〉

【2023年11月6日】今年2月、矢野経済研究所が発表した「国内の印刷通販市場調査」で、2021年の国内印刷通販市場規模は前年比102.3%の1,237億円だった。
この「印刷通販」という分野は、印刷市場が1991年の8.9兆円をピークに、2019年の4.9兆円まで縮小する中で、唯一成長している業態と言ってもいい。
このシリーズでは、主業にプラスしさまざまな取り組みで元気な印刷企業のトッププレイヤーらに話を聞き、印刷業界の今を明らかにしていきたい。

第2回は印刷通販の中でも「フォトブック」でトップを走る「しまうまプリント」の執行役員兼マーケティング部 部長の八坂勝也氏に話を聞いた。

 

生産を集約しコストリーダーに

――貴社の概要や創業2008年から現在に至るまでどのような変遷があったかお教えください
まず概要ですが、当社の事業は大きく分けて5つのプロダクトがあります。

――どのようなプロダクトでしょうか?
当時、銀塩写真のプリントがかなり減っていたことから、店舗型写真店の出力機があまり動いていない状態でした。
この出力機へネットを使い注文を集約するというのがというのが当社の戦略でした。これにより、価格は店舗型の6~7分の1と、一つの注文あたりは安価なりますが、1注文あたりの数量が多くなることで利益が確保できるようになりました。
「安く」「品質よく」「スピード出荷」ということがウケて、大きなプロモーションをしなかったのですが、口コミでこれが広まり大きなシェアを獲得できました。

戦略としては、コストリーダーシップ戦略です。ラインナップを絞りユーザーにメリットがある価格設定を行い、多くの方に利用いただき生産を集約することでコストを削減できるのです。

――2つ目のプロダクトは?
2つ目は「フォトブック」です。写真プリントで初期に得た多くの会員に向けクロスセルする意味で提供を開始しました。写真を撮って、アルバムに収納するという作業がいらない商品で、ユーザーの作業をワンストップ化するサービスです。
ところが、いざサービスをスタートしたところ写真プリントユーザーのフォトブックへの切り替えは限定的でした。写真プリントでは満足できない新しい顧客群をフォトブックで獲得することとなり、これは嬉しい誤算でした。

――やはり「写真」と「フォトブック」が主力事業ですか?
もちろんこの2つの事業は主力ですが、徐々に他の事業も拡大しており、売り上げは分散傾向にあります。

異なる分野へ進出

――他の事業もお教えください
3つ目は年賀状。年賀状はフォトブックと近いタイミングでリリースしたのですが、クロスセルできるかと思ったら、写真やフォトブックとはユーザーがかぶっていませんでした。ですから違うやり方で顧客を獲得していきました。年賀状を出す人が減ってきてはいますが、未だにプロダクトの柱の一つです。
登録者は全プロダクトで合計500万人を突破しています。

――違うやり方での顧客獲得されたとのことですが、どのような方法でしょうか
当り前のことですが、従来事業とは異なるものなのでバリューチェーンを検討し、しっかりと企画し、その層に向けて広告を打ちました。さらに、生産は品質を向上し、アップセルしていくということです。

――お客さんが違ったのですね
クロスセルは限定的でしたね。写真関連は感情に訴えかける「エモさ」が求められているんですが、年賀状は業務や儀礼的な挨拶といった部分になるからと分析しています。あてが外れたことで戸惑いもありましたが、違う層のお客様に出会えたのは良かったと思いますし、年賀状を出す人が減る中でもシェアを伸ばしています。
このほかに新規状業があります。

――新規事業とはどのようなものでしょう
「しまうま出版」で、これが4つ目です。同人誌などの出版を請け負う事業です。
出版印刷は従来、最低受注数が大きいことが普通でしたが、当社では1冊からプリントします。これもフォトブックの生産技術を転用することで実現できました。
また、コンシューマーにとって商業印刷の入稿データの作成は、ハードルが高いものとなりますが、フォトブックで培ったUIを転用し知識や経験がなくても画像のドラッグ&ドロップで誰でも簡単に入稿できる注文画面を作成しました。

5つ目が、昨年11月から行っている「アルバム販売」です。

――あのアルバムですか?写真を入れる?
そうです。
主たる撮影デバイスがデジカメからスマートフォンに変わったことにより画像データのアスペクト比が変わったのにアルバムは変わっていないということに、このままでいいのかという思いを感じていました。
スマホで撮影するためL版縦で注文するお客さんが多くなっています。縦長のL版写真が増えてきたのにそれを格納するアルバムは横長がメインになっている。そこに違和感を感じて、消費者の声をヒヤリングしたところ同じようなことを思っている人がいました。
そして「もっと消費者がワクワクしながら写真整理できるアルバムが必要なのではないか」という思いも当社は持っていました。
ですので、自社で作って自社で売る、アルバムを進化させることにしました。
アルバムはその目的も変わっており、昔は「閲覧」だったものが、デジタル技術の進化により今は「コレクト・収集」になってきています。

 

出版進出でボーダレスへ

――なるほど。ユーザーの意識の違いにも目を向けているのですね。少し会社全体の話もお聞かせください。現在は「カメラのキタムラ」で知られるキタムラ・ホールディングスの100%子会社ですね
2年前にグループに入りました。
サービスの融合も始まっており、当社で受注した写真や印刷などを、カメラのキタムラで受け取れるサービスを行っています。

――大きな分類で行くと貴社も印刷通販業界といえると思いますが、現状と課題は?
当社は、純粋な印刷市場とは立ち位置が違います。印刷通販の中心は「オフセット」で、我々はあくまで「オンデマンド」です。このため印刷通販全体としてのお答えになるかどうかわかりませんが、デジタル印刷機の進化でオフセットとオンデマンドのボーダレス化が進んでいるのは間違いないと思います。
当社の「しまうま出版」も、そのボーダレス化の一つかと思います。
ユーザーの方も印刷会社に持ち込むのはハードルが高いですが、当社のようなインターネットでの簡易的な注文画面であれば頼みやすいのではないでしょうか。
印刷全般において、店舗からネットへという動きになっていることは、間違いないと思います。

――貴社の今後の展望やPRなどをお教えください
やはり立ち上がったばかりの「しまうま出版」を推していきたいと思います。今は同人誌の受注が中心ですが、当社の写真技術などとの融合で、高品質なカタログやパンフレット、ノベルティーでの活用もできると思っています。
ユーザーのこんなサービスがあったら、こんな風な生活ができたらという声が次の事業につながると考えていますので、それを聞きながら新たな提案をしていけたらと思っています。

 

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