【2022年10月17日】DMM.com(DMM)は今年8月、DMM.make 3Dプリント事業で「3Dプリント住宅模型サービス」の提供を開始した。
DMM.make 3Dプリント事業部 ちゃんすけ事業部長(ご本人の希望でTwitterのアイコンを使用)
同サービスは、ハウスメーカーや工務店の新たな営業ツールとして活用可能なリアル模型を3Dプリントで作製でき、「カラー模型」と「白模型」の2種類から選択できる。
「カラー模型」は、最も人気のあるフルカラー模型で、家族に愛着を持たれやすい。外壁や家具家電なども、データをもとに緻密に再現し、伝わりづらい間取りの説明なども丁寧に行える。
今回はDMM.make 3DPRINT事業部およびDMM.makeAKIBA事業部のちゃんすけ事業部長(本人ご希望でハンドルネーム)に話を聞いた。
――3Dプリント事業の概要は
「DMM.com」と、グループ会社の「DMMmake Base」が事業運営に携わっています。
「DMM.com」は、事業開発や受託造形サービス事業を行っています。また「DMM.com Base」は、3Dプリントセンターを要し、「クリエイターズマーケット」などを管理しています。
「クリエイターズマーケット」は、3Dプリントを通して、クリエイターさんと購入者をつなげるマーケットプレイスで約1850人のクリエイターが登録しており、約1万点の作品出品があります。
このマーケットプレイスではクリエイターは持つことがなく、作品を販売することができます。ご存じのように、3Dプリントのデータがあれば注文を頂く都度、DMM.com Baseで作品を造形しお届けできます。、多くのクリエイターの作品を紹介し、購入者は気に入った作品があれば、それを注文し手に入れられますし、在庫切れということがありません。
――受託造形サービス事業は、どのような用途が多いのでしょう
非常に多種多様です。法人用途ですと、産業用、製造業での原型試作や量産試作、最終製品であったり、個人ユースですと、鉄道模型、フィギュア、時計ケース、キーボードキャップ、電子部品のケース、スマホケース、生活冶具っぽいパーツ、車載パーツなどなど、上げればきりがありません。
我々が見ても、何の製品のどの部分に使われるのか、まったくわからない部品がほとんどで、完成品は1割未満です。
――完成品の1割というのは
例えば、UFOキャッチャーやガチャなどの景品になるようなものの初期サンプルなどです。
色付きのケースは少なく、ほとんどが単色での納品で、ストラタシス社製、MIMAKI製の3Dプリンタで造形しています。SLS造形方式のナイロンでの注文もあります。
――3Dプリンタの課題として素材や作業コストがありますが、これは解消されているのでしょうか
正直言いまして、直近は材料費が上がっています。要因はウクライナ情勢による原料高や米国を中心とした世界インフレによる円高などさまざまですが、価格にはどうしても影響が出てしまいます。当社のユーザーはスポットで、試作品が欲しいという方が多いので、それを実現するには3Dプリントが一番適しているという考えで使っていただいています。また、最近は小規模量産の注文も増えてきていますので、そこにも力を入れています。
損益分岐点はありますが、当社としてはコストを賄える適正な価格を出していきたいと思っています。
――3Dプリントの品質に関してお客様は満足されていますか
はい。ほとんどクレームが出ることはありません。
精度は問題なく、お客様からは満足の声をいただいています。
――フルカラー3Dプリントでのフィギュアなどマニア向けの商品製作に関してはいかがですか
それはまだ難しいと判断しています。造形は可能ですが、その作品やキャラクターを好きな方が満足するレベルには至っていないですね。
――受注形態はどのような形でしょうか
Webサイトからの受注が100%で、プッシュ型営業は一切しないことにしています。
オウンドメディアで、ブログで発信している程度です。テレアポや営業担当が法人を回るなどの活動はありません。
――なぜプッシュ型にしないのでしょうか。例えばネットの広告やセミナー、ワークショップなどはどうでしょう
これまでの経験から、3Dプリントだけでなく、DMM.makeのビジネスは、プッシュ型にしても反応が薄いことが分かっています。以前も何度かテレビCMなどの大規模な空中戦を仕掛けましたが、それで一気に事業が拡大するということはありませんでした。
セミナーやワークショップも同じで、それをやったからと言って、皆が3Dプリントを使い始めるわけではないのです。しかし、最近はネット広告によって3Dプリントにチャレンジしたいという法人企業が増えてきていますので、そのチャレンジに伴走して共に成果を出していきたいとも考えています。
――一気に広まらない要因というのはなぜでしょう
3Dプリントはデータがあれば、出力できるといいましたが、そのデータづくりには一定以上の知識が必要なので、やってみようと思ってすぐできるというものではありません。
もっと言えば、何かをするときに「3Dプリントで解決しよう」という風に考える人が、まだ少ないのが現状です。これを何とかしなければ、広がりができていかないと考えています。
――どのような形で広めていかれますか
私たちが発信することも大切ですが、3Dプリントサービスを使ってくれたクリエイターや商品を買ったお客様の口コミで広まっていくものと考えています。
TwitterなどのSNSでは、ユーザーやクリエイターが、当社の3Dプリントサービスについてつぶやいてくれています。「使ってよかった」「こういう使い方がある」という声が、3Dプリントをしてみようという考えにつながっていくのではないでしょうか。
それらの声がどんどん広がれば、プッシュ型の営業も有効になっていくと考えています。
――さて、8月に「3Dプリント住宅模型サービス」の提供を開始しました。この経緯は
住宅の3Dプリントは、もともと何度か注文がありニーズがあることがわかったため、ちゃんとサービス化してみようということで、スタートしました。一般的な建築会社や住宅販売会社は、設計図をCAD化し、データで持っているので、これを活用できるという部分でも親和性がある分野です。
従来デジタル上では立体で見ることができた建物を、フィジカルに物体として手に取り見られるところに価値があると思っています。
当然ですが、内部もしっかり作られていて、屋根をふたのように開ければ、内部の観察も可能です。
――需要はどのような形になるでしょうか。マイホームを建てるときの記念品なのか、それとも建築確認という実用でしょうか
記念品のようなエモーショナルな使い方も、確認用で家具などを置いた姿を見るという実用品としての活用も、両方需要があると思っています。
――納期や価格は
完全データの入稿から最短で3、4日でできますが、一般的には1週間程度の納期をいただいています。
模型の造形時間だけで言えば、13時間くらいですが、サポート材を抜くなどの後処理や乾燥、細かいチェックなどが必要なのでやはり1週間程度の時間は必要ですね。
価格はカラー模型が66,000円~、白模型が42,000円~です。
――3Dプリントの課題と可能性を教えてください
課題は、やはりコストが高いことですね。
材料コストもそうですが、後処理で粉を落としたり、200度以上で出力されるので自然冷却に時間がかかります。また、サポート材をきれいに落とすには化石の発掘のような作業が必要となるため、このあたりは自動化できない部分で人件費がかかります。
可能性で言えば、旧車のパーツなどは、一から金型を作れば数十万円~数百万円かかりますが、データさえあれば、3Dプリントなら10,000円から作れます。
こういった3Dプリントでしか作れないものに活用するのが正しい使い方の1つと考えています。
まとめると、パーソナライズされて、3Dプリントでしか作れないもので、多くを必要としないものが適していると思います。またコストが下がってくれば、量産可能な製造技術の1つとして確立していくと思います。
――今後の展望やユーザーへのメッセージをお願いします
3Dプリントをするにはデータを作る人が必要です。そのデータづくりができる人、したいと思う人を増やしていかなければなりません。
これには、今自分の課題を解決する際の最適解の一つが3Dプリントだということを頭に思い浮かべていただくような地道な啓発が必要だと感じています。
その認識が広まれば、あとはDMMが得意とする強力な会員プラットフォームやIPコンテンツ、マーケティングで、3Dプリント市場を作っていけると思います。
また、認知を広げていくために、目的に応じて対象とするユーザーをセグメントしたうえでコミュニケーションしていくことも考えています。
毎日お客様から注文頂いたデータをコツコツ造形させて頂いております。お時間お待たせすることも多いですが、少しでも早く高品質の物をお届けしたいと考えています。また、価格を下げる努力も継続していこうと考えておりますので、今後ともDMM.make 3Dプリントサービスを宜しくお願いします。
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