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【インタビュー】日本アグフア・ゲバルトが「エコスリージャパン」に社名変更 岡本勝弘社長に聞く

【2023年6月20日】日本アグフア・ゲバルトは6月1日、「エコスリージャパン株式会社」に社名を変更した。

この社名変更は、アグフア・ゲバルトグループのオフセット部門が昨年9月、ドイツのAURELIUS(アウレリウス)グループへ事業譲渡されたことから行われ、これに合わせて、日本法人も社名が変更された。

今回は、岡本勝弘社長に、社名変更や現在の環境、アグフア・ゲバルトが権利を有しているインクジェットプリント部門について話を聞いた。
岡本社長は、「自動化、効率化や生産性向上に合わせてインクジェットは伸びている」と自身が深くかかわってきたインクジェット事業について述べている。

 

新社名「ECO3」とは?

――新社名で、新ブランドでもある「ECO3(エコスリー)」についてお教えください
この「ECO3」という社名は「Economical(経済的)」「Ecological(環境対応)
「ExtraConvenience(利便性)」という3つのコンセプトキーワードからつけられています。
このコンセプトは、以前から弊社グローバルでは使用していたもので、これを活用して社名にしたという形です。もちろん、製品開発もこのコンセプトで行っています。例えば、少量でも高濃度が印刷できる自社製インクは、お客様にとって非常に経済的であるなど、お客様の視点にたっての製品開発に力をいれております。

――今回の社名変更は、アグフア・ゲバルトが昨年9月、独AURELIUSグループへ「オフセット・ソリューションズ事業」を譲渡したことに由来するものです。環境の変化はないですか
まったく変わらないですね。弊社本部の幹部も変わらないですし、内部の体制も変わらず、日本においても体制の変更なくお客様へ製品、サービスを提供いたします。
サポート面でも変わらす、今年2月にはユーザー会も開催しました。日本のマーケットではお客様とのつながりは非常に重要であり、最も大事にしていくべきことと思っています。
コロナなどで非常に苦しかったサイン、印刷市場ですが、こういう時こそ弊社ユーザー会を通じてお客様同士が情報交換などで連携を深めていくことも大事かと思っています。特に当社のような超大型のプリンタ市場はニッチな部分があるので、密にお客様と関係を築き、お客様の生の声を聞いていきたいと考えています。

――気になるのはインクジェットプリンタ。この事業は別会社から委託されて販売という形になりますが、日本からの意見は通るのでしょうか
むしろ日本の意見は通りやすいんですよ。
というのも、日本でのインクジェットプリンタの販売が好調だということがあります。また、日本の厳しい品質や要求に耐えられれば、世界でも通用するという部分もあります。
当然ながら、これまでも日本のニーズにマッチしている製品を販売してきました。
単に製品を販売するだけでなく、お客様個別運用事情に合わせた要望にも国内でのカスタマイズ対応をしています。

――資材供給などサポート面でも心配はないですか?
よく聞くのが「海外製品は、必要な時に部品がないんじゃないか?」という声です。
海外製品ユーザーがよく経験されるのが、部品が取り寄せで2週間~3週間かかること。そこに大きな不満を感じるのはよくわかります。
当社は大きな保守部品専用倉庫を所有しており、保守部品やインクを必要十分にストックしています。これにより、日本のお客様に必要な部材などは確実に最短でお届けできる体制を整えております。

――テクニカルサービスは?
基本的に当日対応しております。お客様の空いた時間に作業するといったことも可能です。
実は当社のサービス部隊は社内で最も大きな組織となっており、多くのエンジニアが在籍しています。日本で外資が成功するにはレベルの高いサービスを提供することが必要と思っています。すべて自前のサービスなので、いつ、どこにトラブルが発生し、どのような作業をしたか、といった記録をすべて把握していています。この点でも安心いただけると思います。

 

インクジェット事業について

――インクジェットプリンタに関して、売れ行きという点では?
コロナ禍でも非常に好調でした。
政府からの補助金や助成金といった追い風もあり、ちょうど買い替えの時期に来ていたお客様が導入に動いていただいたケースが多かったと感じます。
さらには、コロナ禍で工場などの現場が人手不足に陥ったことから自動化や効率化という動きも進んでいます。コロナ後を見据えて仕事が一気に増えた際、従来の機器では対応できないという判断をされた経営者もいらっしゃいます。
大手でも複数台を導入いただき、さらに追加の発注をいただいたところもありました。

――コロナ禍の影響はまったくなかったのでしょうか
やはりありました。
影響は2つあり、一つは、人の移動が少なくなり、交通広告などが激減したことから、インクジェットプリントの主なユーザーであるサイン・ディスプレイ業の方たちの仕事も減り、インクの販売量は減りました。
もう一つはアウトサイダーのサイン部門が伸びていることです。この伸びはかなり大きく、人手不足もあり、生産が追い付かないといった事態も出ているようです。そこで高速なプリンタとロボットなどによる自動化が求められています。

――好調のインクジェットプリンタ分野ですが、売れている製品は?
特に販売が好調なのは、3.2m幅のUVインクジェットですね。ロールメディア専用タイプの「ANAPURNA RTR3200i LED」 、さらにロール専用ハイエンドの「OBERON RTR3300」などです。


「ANAPURNA RTR3200i LED」と「OBERON RTR3300」

10年前、一般的にはUVインクは固く割れやすい、メッシュにプリントできないなどの課題がありましたが、現在はこういったことが克服されたました。これが導入の促進に大きな影響を与えています。溶剤系と違いエイジング(出力後の乾燥時間)の必要がなく、生産力も最大で5~10倍を見込めます。UV臭も昔に比べて、ずいぶん抑えられました。
実際、他のインク方式からの置き換えが多く、ターゲットが広がったと思います。
また、フラッドベッドの「JETI MIRA」も引き続き販売好調ですし、自動化対応の「JETI TAURO」も引き合いが増えてきており今後の可能性を感じています。


「JETI MIRA」

――グローバル企業の貴社ですが、海外のおもしろい事例などはありますでしょうか
欧州では「JETI TAURO」という超高速機を入れて建材をプリントしている会社もあります。従来のグラビア印刷方式では不可能だった少量・多品種の生産ができることから重宝され、すでに2台目の導入も決まっています。この機械は、このユーザー用に搬送をカスタムし、専用のインクを開発するなどで要望に応えており、当社ではこのカスタム機を「InterioJET(インテリオジェット)」と呼んでいます。
「JETI TAURO」は、同様の用途で中国台湾でも導入が進んでおり、近日中に日本でも導入される動きがあります。


「JETI TAUROJeti-Tauro-H3300_LED」

――近年、盛り上がりを見せているDTFに関しては?
当社でもすでに他社向けのインクは作っていると思います。ですから、ハードを開発する可能性は十分あります。

――将来展望をお願いします
当社は、インカを買収しており、大型の高速プリンタの更なるラインナップを行いました。今後のニーズは自動化と高速化と考えています。これに合わせてロボットアームなどと組み合わせたトータルシステムの開発、インテグレーションも進める必要があると思います。また、その中でいかに付加価値の高い印刷物がつくれるかも非常に大事なポイントとして見ています。
今後もお客様の声を聞きながら、求められる製品を開発していきたいと思いまので、社名変更後も変わらずご愛顧をお願い致します。

エコスリージャパン
http://www.apogee-users.jp/

 

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