【2021年2月10日】日本HPは2009年、世界初の大判Latexプリンタを発売して以来、性能はもちろん、環境に配慮し、ユーザビリティーに優れた製品を提供し続けている。
大判プリンタだけでなく、オフセット代替のデジタル印刷機なども手掛け、それらをクラウドでつなぐことで印刷プロセスを大幅に効率化する「HP PrintOS」も用意している。
また、昨年は新型コロナウイルスの影響から、展示会やセミナーが中止になったことから、8月から9月末まで、同社の特設サイト上で「HP 大判プリンターサミット オンライン2020」を開催した。
同イベントでは、同社社員がセミナーを行うとともに、ほぼ毎日、関連企業から講師を招き、それぞれの分野の最新情報を発信した。
今回はこのイベントを担当した、同社プリンティングシステムズ事業統括 Latexビジネス本部 プリセールス大型プリンターエバンジェリストの霄洋明氏に話を聞いた。
――現在の大判プリンタについて、最新製品を分野別に教えてください
水性プリンタは昨年、「HP DesignJet Z9」「HP DesignJet Z6」を発売しました。より生産性が高い「DesignJet Z6810」もあります。
ラテックスインクでは「HP Latex 315, 365, 560, 570」、さらにボリュームユーザー向けには3.2m機の「HP Latex 1500」や「HP Latex 3600」があります
水性の「HP DesignJet Z9」とラテックス「HP Latex 560」
――昇華転写で初のサーマルヘッド搭載の「Stitch」シリーズは?
ありがたいことに、コロナ禍の中でも、「Stitch」は注目を集めています。
日本では、やはりサイン&ディスプレイの会社で採用されています。主にのぼりやバナーなどの制作が中心だと聞いています。
――ソフトサイネージ(布による広告)はまだないですか?
これからだと思います。新しい商業施設では着実に増えていると思います。成熟している日本市場で既存のサイン躯体の改修をどのように進めて行くか、がテーマと思います。「フレームがなくビジュアルを100%訴求できるところを推していきたいです。
また、欧米だけでなくアジアでもファッションやテキスタイルでの採用が進んでいます。とにかく日本はまだこれからですね。
――リジッドタイプの動きは?
「HP Latex R2000 Plus」リジッドは日本でも数台を納入しました。プリント&プロモーションさんでも取り上げていただきましたよね(参照:【プリントの現場】「大蔵プロセス」 技術でチャレンジし成長へ「HP Latex R2000」を導入https://p-prom.com/company/?p=38089)。
これは海外の動きですが、欧米やニュージーランドでは1台を入れてみて、それが好調だったことから、複数台を追加してプリントしている会社もあります。
米国の「PrintingUnited2019」で展示された「HP Latex R2000 Plus」
――なぜ追加するケースが増えているのですか
オフセット印刷のような高い画質と無臭インクであることと、使いやすく高品質で、幅広いメディアへの出力が可能ということで、採用が増えていると考えます。
ボードなど厚手の素材を中心に、一般的な紙はもちろん、壁材や木材、などにもプリントできます。
また、「マイクロショートラン」というくくりで、極少量のパッケージを作成できることも、リジッドの強みで、HP全体でこの分野を攻めています。
――「マイクロショートラン」はどのくらいの数量でしょう
紙箱などのパッケージを100~300枚程度作成します。ボール紙に加えて、かなり厚手の段ボールでもプリント可能です。シルバーメタリックの用紙へのプリントにも対応しており、プルーフだけでなく本格的な製品、オリジナルパッケージの作成に活用されています。
「ZUND」などのカッティングプロッタで抜き加工を施せば、飛び出す絵本のような複雑な仕掛けをつけた箱も作成可能です。この箱は数百個のサンプルを作って、世界のHP拠点に配布しました。HP Latex Rシリーズで何ができるかわかりやすく説明できますね。
――ロールも含めてラテックスに関して、日本でも認知が進んできた印象ですね
ロールタイプのラテックスは300~500万円と手ごろで、後加工も乾燥時間も短いので、主流ですね。
それに発売したころと比べて80%くらい効率が良くなっているんです。発売初期に触れた方は、改めてプリントしていただくとその違いが分かると思います。
――他社がラテックス分野へ参入しました。これに関しては
純粋に嬉しく、非常に歓迎しています。
これまでは競合がなく、比較・検討の対象がない状態でした。「ラテックス」という一つの分野として、ユーザーに見ていただき、それぞれに触れていただき、違いを感じていただければと思っています。
もう一つ、他社の参入によって「我々の進んできた道は間違いではない」ということも確信できました。
――それはどういうことでしょう
当社がラテックスインクを採用したときは、ソルベント(溶剤)系が主流で、ラテックスはほとんどユーザーの意識にはありませんでした。ただ、当社では地球環境や作業環境を考えた場合、多くのユーザーがいずれそこからは離れていくだろうと考えていました。
今回、ラテックスに他社が参入してきたことで、あらためて私たちのやってきたことは正しかったと証明されたのではないでしょうか。
お客様からも、購入検討の際に、競合の比較対象ができないと言われていたので、その課題が解決し、ラテックスという分野が確立されたことがうれしいですね。
――「Stitch」シリーズで採用したユーザーによるヘッド交換も他社が追随していますね
ユーザーはダウンタイムの抑制をしたいと願っています。それに応えるには、サービスマンを呼ばなくとも自分で取り換えられるのが一番です。
先ほども申し上げたように、他社が同じことを始めるのは、それが正しいということの証明だと思っています。
「ITMA2019」での「Stitch」展示。多くの観客を集めた
――2016年に発表された「PrintOS」に関しては
例えばデータベースですが、当社のユーザーであれば、PrintOS Boxというアプリで容量無制限、無期限で、大量のデータをクライアントから受け取ることができます。このほかにも豊富な機能の多くを無償で提供。アプリケーションは多数あり、どんどん増えています。開発者ががんばっているので、私が知らないものもあるほど多くの機能があり、プリンタメーカーの枠を超える内容になっています。
――「HP 大判プリンターサミット オンライン2020」開催の経緯と目標は
「HPのサミットも、やっぱりやらないの?」というお客さまの声をいただきました。というのも昨年は「JAPAN SHOP」や「サイン&ディスプレイショウ」が中止になり、当社で毎年行っていた「HP 大判プリンターサミットも同様か」という残念がる声が寄せられたのです。
それに、グローバルのHPでは数年前からウェビナーの活用を推進していたのです。ただ、日本ではまだオンラインセミナーだけでなく、インターネット会議自体も一般的でなかったので、積極的に行っていませんでした。
一方、国土の広い国では、行き来が簡単にできないため、ウェビナーを早くから始めていました。オーストラリアなどは、コロナ以前から2週間に1回、パートナー様向けと顧客向けのウェビナーを開催していました。
会社としてこのような背景があったので、日本で実施を決めてから、社内の協力も得られ、短時間で準備ができたと思います。
オンラインセミナーの様子。この日は、シンガポールとの中継を行った
――今回の参加社数とセミナーの数は
当社の呼び掛けに応じてくださり、後加工機メーカーや資材サプライヤー、販売代理店、施工業者など、約40社に参加いただきました。
セミナーの数も45以上で、平日はほぼ毎日開催させていただきました。
開催途中で存在を知り、途中から参加してくれた会社もあり、非常に感謝しています。
気が付いたら、他社のセミナーを入れすぎて、自社のキャンペーンを入れ忘れていました。やるからには売り上げにつなげなければならないとは思っていたのですが…(笑)。
――そういったことはいずれ返ってくる日があるかと思います。ネット配信は難しかったですか
インターネットの配信自体はそれほど難しいものではありません。しかし、アクセスしてもらうことは難しく、多くの関連企業と一緒にできたことはこの面で非常に助かりました。
また、せっかく見ていただくのであれば、見やすいようにと、デモンストレーションでは、画面の角度に気を使う、的確な場所を見てもらうなどのために複数台のカメラを設置しスイッチングで切り替えるなどの工夫も行いました。
――手ごたえは
参加者数は平均100人ぐらい、多い時で200人以上が参加するセミナーもありました。Webの流入初回としてはなかなかだと評価しています。
もともとのユーザーに加え、新規顧客となる方も参加いただいたようで、その効果は非常に高いと感じています。
オンラインセミナーは、私自身が進行役を行うことが多く、さまざまな方の最新情報を聞けたことも、今後の活動の役に立つものでした。
参加者からも「今後も継続してほしい」といううれしい声をいただいています。
先ほども言いましたが、東京以外から参加される方にとっては、移動時間なし、コストなしというのは「本当に助かる」そうで、場所や時間の制約を超えられたという点ではかつてない成果ではないでしょうか。
しかし、やはり実際に品質を間近に観て、触っていただきたいので、早くリアルな開催をしたいです。今後はリアル開催であっても、オンラインLIVE配信とオンデマンド視聴を実施したいと考えています。
――今後の開催や展望は
私もそうですが、コロナだからできなくなったことが多い反面、今まではできなかったことができるようになった、ということも多いのではないでしょうか。そういった「やれること」をポジティブにとらえ、実行していきたいです。
今後もセミナーを続けていくので、どんどんご参加いただき、たくさん質問やコメントいただければと思っています。
なお、同社では今日2月10日、午後4時から、「HP Latexプリンター新製品オンライン発表会」を開催する。
申し込みは以下から
また、「HP 大判プリンターサミット オンライン2020」セミナーのアーカイブ配信も以下で行っている
https://jp.ext.hp.com/printers/large-format-printers/event/
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