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【この人に聞きたい!】パッケージデザインが「好かれるか?」を計測可能に プラグ 小川亮社長

【2019年7月3日】プラグは今年4月、AI で商品パッケージデザインの評価ができる「パッケージデザイン好意度評価予測AI」のサービス提供を開始した。

プラグはパッケージデザイン開発とマーケティングリサーチの両方を行う会社。これまで、毎年春と秋に「パッケージデザイン調査」を行ってきたが、この成果である4,100 商品、410 万人分のデータから今回の「パッケージデザインAI 」を開発した。
このサービス、消費者が商品のデザインが好きかどうか表わす「好意度」を測るというこれまでにないもの。

今回は、同社の小川亮社長に、サービス開発の経緯や反響、そして今後の展開について聞いた。

 

蓄積から生まれたサービス

――貴社についてお教えください
2014年にリサーチ会社とデザイン会社が合併してできた会社です。リサーチ会社は1957年から、デザイン会社も1989年創業の会社で、いずれも社歴が長い会社です。
社名は顧客のブランドと生活者を繋ぐ存在になるという意味で「プラグ」としました。

商品デザインについて、さまざまな調査を行っていますが、2015年から独自に「パッケージデザインランキング」という消費者が新商品のパッケージデザインをどの程度好むか大規模な調査をしてきました。このデータがかなり蓄積されており、4,100 商品、410万人分のデータがあります。この調査は今後も春と秋の2回実施し、年間1000商品以上、100万人以上のデータが蓄積されていく予定です。
これが「デザイン評価」に関して当社の大きな強みです。

 

 

――開発の経緯と背景は
当社の強みである「デザイン評価の大量の蓄積データ」を活かす方法として、システムを作れないかという考えから開発を始めました。
実は過去のいいデザインから、デザイン評価を予測するという考え方自体は消費者調査のアプローチと似ています。
人は過去のいいと思うデザインやよく見てきたデザイン(これはヒット商品やロングセラー商品が多いですが)を元に、新商品のデザインを評価します。
だとすれば「大量の調査データから評価を予測するプログラムができるのではないか」と考えたのが開発のきっかけです。

お客様が持つ「デザインをどうしたらいいのか」という、純粋な疑問に応えたい気持ちも以前からありました。
また、「AI技術をデザイン制作に活かせないか」というマーケターが多く、その声にも応えたかったのです。
現在、AI技術の発達は目覚ましく、さまざまな関連プログラムがオープンにされており、これらを活用できる環境が整っていたことも、このシステムの開発を後押ししました。

AI技術を使うにはそれを構築するためにしっかりしたデータが必要で、パッケージデザインに関してはそのデータを持っているのが当社だけという自負がありました。

 

好意度=売れるなのか?

――システムの開発はどうされましたか

システムに関しては、完全に自社開発で、当社の副社長がAIを勉強しながら、ほぼ一人で作り上げたものです。
完成までには2年かかりました。開発期間の多くは、どのような方法であれば、実際の消費者調査の「好意度」の実測値に近づくのか、あてはまりをよくするための試行錯誤の連続でした。

 

――システムの使い方は
このサービスはブラウザ上で利用でき、パソコンでデザイン案をアップロードするだけで、その好意度予測値が算出されるという、非常に簡単に使えるものです。

使い方は「デザイン案をアップロード」し、「対象カテゴリーの選択」を行い、最後に「会社名とブランド名のヤフーによる検索件数を入力」をするだけ。これで2~3分後には「好意度の予測値」が算出されます。

システムの製品化にあたり、パッケージデザインランキングで調査している23カテゴリーの中で、予測精度の高い11カテゴリーまで絞り込みました。
好意度は、過去のデータに照らし合わせて、画像を何枚かの特徴量に分割して、予測します。

「会社名とブランド名のヤフーによる検索件数を入力」をするのは、そのブランドの知名度を「ブランドスコア」として使用するためです。

 

――デザイン評価の好意度と売り上げは連動するのでしょうか
好意度と売り上げが比例しやすいカテゴリーと、しづらいカテゴリーがあります。
例えば、氷菓(アイス)のように比例しやすいカテゴリーもあれば、ビールのように好意度と売れ行きとが比例しないものもあります。

アイスクリームはPOPなどをつけられない冷凍庫で売られているため、一目見て手に取ってもらわなければなりません。また、TVCMが入るような商品も限られているため、好意度と売り上げが連動しやすいのだと推測しています。

一方、ビールについては、新商品がでたとき、大量のTVCMが投下されることが多いです。また、営業が非常に強く、新商品は全国の小売店に一度は並ぶという特性があります。さらに、ビール好きな方は、新商品を一度は購入してみて、味が「合う」「合わない」を判断するので、初回ロットはパッケージの良し悪しにかかわらず、そこそこ売れる傾向があります。

ビールについては「好意度」が高ければ、売れる商品になるわけではなく、売れるための「要因の一つ」というのが、我々の考えです。

 

もう人はいらない?

――パッケージデザイン制作は、このシステムでできてしまう?
いや、そうではありません。
システム自体がAIでデザインを作り出すのではなく、デザインに隠された暗黙のルールのようなものを読み取り、そのデザインが消費者にどの程度好まれそうかを予測するものです。これを次のデザイン開発に活かそうというものです。

つまり、まっさらなところから、まったく新しい、パッケージを作り出すことはできませんし、そういったことはこれまで通り、クリエイティブの仕事であることに変わりはありません。

先程も申しましたように経験則だった『売れるためのデザインとは何か』が「見える化」された部分はあります。
例えば、顔がパッケージに印刷されているものは、軒並み評価が低いという結果がそれで、AIで出た結果をどう活かすかはクリエイティブの腕にかかっています。

 

――どういったところに利用していただきたいですか
これまで、アンケート調査を実施できなかった中小のブランドオーナーにお試しいただきたいと考えています。

実際に、好意度を調べるには調査会社を使いアンケートを取るなど、1回に数十万円から数百万円が必要です。それがこのサービスを活用すれば、1画像検索するのに15,000円、使い放題のプランでは最大で年間600万円ですみます。

大手ブランドメーカーでも、予算は限られています。そのため調査の際は、数十あるデザイン案から数点に絞り込んでアンケートしています。「調査にかけなかったデザイン案の中にいいものがあったかもしれない」そんな担当者の思いを、このサービスでは解決できるのです。

もちろん、従来から良いデザインを採用してきた会社も、デザイン案を改良するたびに、AIにかけて、さらによりよいデザインを開発をすすめることが可能です。

 

さらに機能向上へ

――発表後の反響は
最初に参考出品したのは「TOKYO PACK 2018」でしたが、その時点でも引き合いが多く、「いつ発売するのか」「完成したら見せてほしい」という声を多くいただきました。

今回はシステム提供開始直後に取材いただいたので、反響はこれからという感じですが、訪問して紹介した企業なども含めて、大きな手ごたえを感じています。

また、現在、無料で10個のデザイン案の「好意度」予測値が算出できるお試しプランを提供しており、ここにもアクセスが増えています。

このシステムをお使いいただくのは、新商品の発売前にデザイン案が上がってきた時だと思いますので、商品開発のご担当者がこのシステムを使ってくれたときに、さらに反響は大きくなるのではないでしょうか。
当社からも、各ブランドオーナーを訪問し、このシステムのPRも行っていきたいと考えています。

 

――今後の展開は
これからAIのバージョンアップを目指して、東京大学との共同開発がはじまります。その結果などを積極的に活用して、来年の夏頃を目処に、「男女」や「年代」など、属性別の好意度予測値が算出できるようにする予定です。また、「可愛い」「クール」「美味しそう」など評価されたキーワードがでるようにしたいと考えています。
さらに、評価された部分がどこなのか確認できるようにしたいと思います。

分析の点では、評価結果の散らばり具合から、そのデザインが消費者に平均的に好まれるものなのか、それとも、好き嫌いが分かれるものかなども確認できるようにし、商品デザインの性格も浮き彫りにしたいと考えます。
こういった機能がすべてそろうのが、来年の夏以降となる予定です。

また、情報管理を徹底してやっていかなければならないと感じています。このシステムでテストするのは、発売前の商品のパッケージで、ブランドオーナーとしては絶対に表に出したくないものです。強力なハードルを設けて情報漏洩を防止していきます。

今後、多くの方に利用いただき、日本のデザインをボトムアップできればうれしいです。

なお「パッケージデザインAI」は現在、1 企業 10 画像分を無料テストできる。

パッケージデザインAI
https://hp.package-ai.jp

 

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