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【インタビュー】ローランドDG「TrueVISシリーズ」の新製品6モデルと同社初のDTFマシンを発売 倉橋岳史氏に聞く

【2023年3月15日】ローランド ディー.ジー.(ローランドDG)はこのほど、大判インクジェットプリンタ(IJP)「TrueVIS(トゥルービズ)シリーズ」の新製品6モデルを世界同時発表した。

発表されたのは、同社初のレジンタイプ「AP-640」や、UV タイプで優れた生産性を持つ「LG-640/540/300」、同タイプのエントリーモデル「MG-640/300」。
さらに1月には、同社初のDTF(Direct To Film)マシン、「VersaSTUDIO(バーサスタジオ) BN-20D」を発表している。
この「BN-20D」は、衣料品などへの転写を簡便にできることから近年注目を集めているDTF方式に対応したインクジェットプリンタ。

今回は同社グローバルマーケティング本部 日本セールス部 国内マーケティングユニットの倉橋岳史氏に話を聞いた。

 

初のレジンインク搭載機

――貴社初のレジンインク搭載の「AP-640」を発売されました。開発の経緯は?
当社は、プリンタを開発するほか、3Dの加工機なども製造しています。さまざまな分野に製品を提供することを目指しているというのが、当社の現状です。
その中でもレジンインクはビジュアルコミュニケーションの可能性を広げるために、以前より開発を続けてきたインクのひとつです。

――環境に対する要求などは?
もちろん欧州や米国は環境に対しての意識が高く、レジン(ラテックス)は市場から強く求められていました。当社では、これに応える形でレジンタイプのプリンタをリリースしました。
もちろん、日本でも要望は高まっており、今後需要が増えると予想しています。

――「AP-640」に関して、用途はどのようなものになりますか
壁紙や店舗内装、イベント装飾などの屋内での需要拡大に期待しています。レジンインクは、においがなく、VOC(揮発性有機化合物)が少ないため、これらの環境での使用に適しています。

既にご好評をいただいている低溶剤インクの「VG3」や「SG3」シリーズは屋外サイン(看板)系での活用が中心で、これらとの住み分けはうまくいくと思います。
レジン系の「AP-640」という機種は、ラインアップの一つで新たな選択になるものと考えています。

――特長を教えてください
仕様は発表の通りですが、出力速度や解像度は他社と比較しても遜色はないと感じています。特に表現力には拘りを持って開発しました。
AP-640は低溶剤プリンタよりも出力速度は早くUVと同様に速乾性が特長です。後加工がすぐに可能なこの「速乾」という特長があまり浸透していないことを残念に思っていますし、広めていきたいとも思っています。
当社のインクは、ラミネートと相性がよく、テスト依頼も来ています。

また、レジンインクと専用出力設定「True Rich Color 3」は色鮮やかで、色域が幅広く、4色とは思えないような仕上がりが期待できます。ローランドDG独自の広いガモットで、色彩豊かな表現を体感していただきたいです。このほか、パウチ式の大容量インクカートリッジの採用で原材料コストを下げ、廃棄物も削減しています。

――レジンインクは色のブレが心配という声もあります
当社では、それをさまざまな方法で対策しています。剛性の高いプラットフォームにより搬送性を高め、専用に開発されたインク乾燥システムで安定した乾燥温度のコントロールが可能になり、色のブレ幅を最小限にしています。

 

UVプリンタも拡充

――「LG-640/540/300」についてもお教えください
UV タイプのプリント&カットマシンのフラッグシップモデルです。
UVインク搭載ですので、当然、幅広いメディアに対応します。圧倒的な出力スピードと高精細な画質表現を実現しております。

――「MG-640/300」については
UVタイプのエントリーモデルで、「LG」シリーズとは、インク容量や出力スピードが異なります。今回、新たなプライマーを用意し「UVデカール」の作成も可能になりました。こういった新しい分野での提案もしていこうと思っています。

――UVプリンタに関しては、新規導入のお客様が多いのでしょうか
どちらかと言えば、買い替え需要が中心ですね。一方で、じわりとインクは溶剤からUVへという流れはあります。また、今回発表したレジンインクというのも先ほど申しました通り、欧米からはもちろん、日本でも要望が増え始めています。

 

DTFプリンタも発売

――こちらも貴社初となるDTF(Direct to Film)用プリンタの「BN-20D」を発売されました
「BN-20D」は、近年躍進している分野に当社が参入するため、ラインアップの一つとして投入したものです。
欧米からの要望もあり、また日本でも採用が進んでいることから、ウエアプリントで実績のある当社が製品を用意しました。
インクとフィルム、パウダーをそろえることは、実はかなり大変なのですが、技術が成熟しておらず開拓の余地がある分野で、お客様のニーズもますます高くなっていくと考えています。このDTF転写ソリューションを提供することで、より多くのお客様にこの新しい手法にチャレンジして頂きたいと思います。

――貴社の昇華転写プリンタと食い合いになるのでは
いえいえ、色の質感やプリント速度が異なることから、従来品とはニーズが違うと考えます。小回りが利き、扱いやすいので、昇華転写機の隣において、DTFのエントリー機種として使用いただきたいですね。
これらをすべて含めて、当社としても低溶剤だけではなく、UVもレジンもという風にラインアップを増やしてお客様の要望にお応えしたいと思います。

――ラインアップを増やすことがローランドDGの使命という感じでしょうか
当社のパーパスは「世界の創造(ワクワク)をデザインする」です。当社製品で作成し、できたものが楽しいと言った喜びを提供したいという思いがあります。
このパーパスにつながる製品開発で、お客様をより豊かにしていくことで、信頼を得ていきたいと考えます。
もちろん大判プリンタ製品は、画質にこだわりがあり、使い勝手と安定性に優れた製品をお届けします。

 

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