【2021年10月15日】日本HPは今年9月、グラフィクス市場向け大判プリンタの新製品として「HP DesignJet Z9+ Pro」を発売した。
「HP DesignJet Z9+ Pro」は、写真品質で、高精度で色鮮出力が特長のプリンタ。写真画質を目指す水性インクジェット大判プリンタでは最上クラスの製品となる。また出力速度でも、従来機を大幅に上回り、同社が先行してきた生産性での利点を追求している。
今回はこの「HP DesignJet Z9+ Pro」について、日本HPプリンティングシステム事業統括デザインジェットビジネス本部営業兼プロダクトマネージャーの深野修一氏に話を聞いた。
――写真品質の出力と、高精度で色鮮やかな出力など特長の多いプリンタですが、最も強調したい部分は?
当社の大判プリンタは、もともと生産性の高さが特長でした。「HP DesignJet Z6000」シリーズは発売当初、圧倒的な生産性を誇り、マイナーチェンジを繰り返しながら、その優位性を保ってきました。
ここにきて、他社製品もその出力スピードに追い付いてきたことから、フルモデルチェンジでまた引き離したということです。
――その出力速度はどのくらいでしょうか
「Z6000」シリーズの12.0㎡/h対し、「HP DesignJet Z9+ Pro」は14.1㎡/hの速度を達成しています。HPのアーティストマットキャンバス用紙をノーマルモードで出力した場合も、従来機が9㎡/hに対し、新製品は19㎡/hと2倍近い速度になりました。
ユーザーが求める「時間=コスト」の部分を追及した製品となっています。
――ダウンタイムの削減を実現する新たな機能が搭載されましたね
ダウンタイムの削減という点では、スピンドルレスでロールを置くだけでセットOK。さらに自動ロールフィードにより、ロールを自動で撒き取りプリントできる状態にします。
今までなら、メディアの端を通して巻き取らせるときに時間がかかり、苦労するオペレーターも多かったそうですが、これを解消しています。
また、スピンドル分の重さがなく、力のない方でもロールを取り付けやすく、その分の時間や労力も削減できます。
出力センターなどは24時間稼働のケースもありますが、慣れていない人がオペレーションすると時間がかかる、もしくは紙の替え方が分からず、できる人が来るのを待っていることがあるそうです。中にはスピンドル壊してしまうといった事故も…。
当社の計算では70%の作業時間抑制になるとしましたが、これらのロスを考えるともっと効果が高いかもしれません。
作業スペースの面でも、従来は取り付ける際に、ロール紙の幅に加え、スピンドルの長さ分の幅が必要でしたがこれが不要になりました。
――先日の記者発表では、生産性に加え、画質やリモート操作、セキュリティーなども強調されていました
画質向上のために「ピクセルコントロール」を採用しました。
オフセット印刷は、CMYKの版を重ねていくことで色を表現するものですよね。このため、色を重ねてみたときに色ブレしていたといったことがあり、その修正のための細かな調整でした。
「ピクセルコントロール」では、プリント時にデジタルデータのピクセルごとの色情報を、この色はこれと決め打ちしていけるのです。
――今までは、それができなかったのでしょうか
プリンタの中にはコンピューターのように、データを処理する装置が入っています。その処理速度が速くなったからこの技術が完成しました。
プリントのデジタルデータでは、ピクセルの情報を伝えているのですが、アナログ印刷の場合はこれをCMYKに一度分解し、再度カラーに合成という最低でも2カ所の変換ポイントがあります。この変換ポイントで崩れてしまった色調を、これまではオペレーターの経験則で補正していました。
「ピクセルコントロール」では、この変換ポイントがないため正確な色をそのまま表現できるのです。
――表現できる色域も広がりましたね
9色インクを搭載しており、「RGB HP Vividフォトインク」を採用することで、PANTONE色域の93%を再現でき、前世代機よりも色域が26%向上しています。
――データーセキュリティーに関しては
プリントサービスプロバイダーは、機密性の高い他人のデータを預かっていますよね。例えば、発売日前の商品や公開前のコンテンツに関する印刷物がそれにあたります。
このため、情報漏洩を恐れて、プリンタをネットワークに繋いでおらず、プリンタのネットワーク性を生かしていないユーザーも存在しました。
例えば、データをインターネットで受け取るとそのパソコンを外して、プリンタのそばに持って行って作業するというやり方です。
これではせっかくのプリンタの機能を制限して使っているようなものですし、作業効率も低いと感じます。
「HP DesignJet Z9+ Pro」では、データは暗号化されプリンタ内部でプリント処理を行います。また、マルウエアなど悪意のあるプログラムを送り込まれた場合も、正規のプログラムとそれ以外を分けて起動中止を指示します。
このあたりは、日本HPがパソコンも開発・販売している会社であることの強みです。
――HP PrintOSでは使用状況を読み取れるとか
HP PrintOSは、使用状況・内容をデータ化し、パフォーマンスの監視や問題の発見、出力オペレーションの管理など向上するものです。アプリではリモートでの監視にも対応し、ユーザーは進行中のジョブやサービスなどをリアルタイムで確認でき、オペレーションをスマートに支援します。
もちろん、先ほど申し上げたような“プリントファイルその物”のような機密性の高いデータにアクセスするものではありません。
――どのようなユーザーを想定していますか
開発にあたり想定している業種は、プリントサービスプロバイダー(PSP)や、地理情報システムの事業者などです。
日本では、もともと「Z6000」シリーズのユーザーであったPSPやフォトラボがメインの顧客と想定しています。
出力速度の向上で、よりコストを意識した生産が可能になり、事業活動の力になれると考えています。
地理情報システムの方は海外のユーザーが多く、日本ではこれからですね。
――価格や運用コストは
2,395,800円(税込み)で、先代モデルに合わせた価格です。
今回は、単体で買えば30万円程度する分光光度計が内蔵されていますので、非常にお得と感じます。
また、運用面では「無駄にインクを使わない」ということを徹底しています。プリントはもちろん、クリーニングやインクパージなどで、必要以上にインクを落とすことはありません。
大判プリンタのユーザーからよく聞くのは「プリントは大してしていないのにクリーニングばっかりお金がかかる」という話。そんなことがないようランニングコストは安価に抑えられるはずです。
――ユーザーへどのようにPRしていきますか
コロナ禍でもあり、展示会への出展はしておりませんが、デモセンターで個別にデモンストレーションを行っています。また、データやメディアをお預かりし、リモートでデモを見ていただき、サンプルをお送りすることも可能ですので、ぜひご依頼ください。
久しぶりのモデルチェンジですので、HPの製品をお使いの方もそうではない方も、一度、品質や生産性、操作性を見ていただきたいと思っております。
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