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矢野経済研究所 2022年の飲料用容器市場規模 前年比102.0%の756億3,000万本を見込む

【2023年1月20日】矢野経済研究所はこのほど、国内の飲料及び食品用容器の市場動向を調査し、製品セグメント別や参入市場の動向を明らかにした。
ここでは、飲料用容器の国内出荷量について公表する。

 

概況

2022年の飲料用容器市場規模(国内出荷量ベース)は、前年比102.0%の756億3,000万本を見込む。
種類別にみると、飲料用紙カップはコンビニエンスストア(CVS)やコーヒーチェーン等に加え、ホームパーティーやキャンプなど家庭・レジャー用の需要も好調であり、前年比111.2%と大きく成長する見込み。

コロナ禍での行動制限の緩和や夏場の猛暑の影響からPETボトルも同104.9%と堅調である。また、ガラスびんは同101.7%、紙カートンは同100.1%と微増または前年並みの需要を確保するものと見込む。一方、アルミ缶は飲食店での外飲みが復活したことでアルコール飲料向け需要が減少し同99.3%、需要減少が続くスチール缶は同93.0%と前年を下回る見込みである。

 

コロナ需要が終了

2020年からのコロナ禍は飲料用容器の需要にも大きく影響した。ただ、必ずしもマイナスの影響ばかりだったわけではない。
2020年の緊急事態発出に伴う行動制限による人流抑制は、CVSや自販機、カフェなど外出先で消費されるプラスチック軽量容器、飲料用紙カップ、小型PETボトル、清涼飲料用のアルミ缶や紙カートンの需要縮小につながった。

一方で、家庭内備蓄用のミネラルウォーターで使用される大型PETボトル、牛乳・加工乳用の紙カートン、家飲み需要を取り込んだアルコール飲料用のアルミ缶や紙カートンはプラス成長となった。

2021年に入ると行動制限が少しずつ緩み、人流が回復し始めたことで、巣ごもり需要で拡大した飲料用容器の多くは前年比マイナスに転じ、代わって2020年に縮小した容器の需要が回復し始めた。2022年には消費者の行動がコロナ禍前に近いレベルに戻ったことで、飲料用容器市場はプラス・マイナス両面での「コロナ特需」が終了し、3年ぶりに通常に戻ったと言える。

 

将来展望

コロナ禍にあっても変わらずに容器メーカーに求められてきたのが環境対応である。
容器のユーザー企業であるブランドオーナーやCVS、スーパーマーケット(SM)などの流通業各社では、自社で扱う商品の環境に与える影響が自社の企業イメージに直結するとして、商品の顔である容器のサステナブル化を積極的に推進している。

さらに、国を挙げての2050年カーボンニュートラル(CN)の実現に向け、事業者にはScope3を含めたサプライチェーン全体でのGHG(温室効果ガス)排出量の管理が求められるようになった。脱化石由来原料化やリサイクル材の使用などによる環境配慮は、ユーザー企業が容器を選ぶ際に価格と共に、時には価格以上に重要視されるポイントとなっている。

少し前までは、容器メーカーでもユーザー企業サイドでも、リサイクル材やバイオマス原料などの「サステナブル材」の採用と、利益の確保・拡大とは別のベクトルで語られてきた。多くの企業にとってサステナブルはCSRの一環であり、自社のフラッグシップ的な一部の商品での採用に限られていたため、容器メーカーサイドでもそこで利益が出なくてもやむを得ないとされていたきらいもある。

しかし、国の枠を超えて環境問題解決に向けた認識の共有や連携の確認、行動計画への合意が行われ、グローバル規模で消費者の環境に対する意識が大きく前進する中、サステナブル材の使用は必須となった。リサイクル材やバイオマス原料などサステナブル材を使用した環境配慮型プラスチックの採用拡大や、パッケージ(容器)の設計・素材構成の見直しによるリサイクル性の向上、プラスチック代替素材の提案など、CO2排出削減とユーザー企業の環境対応を後押しする製品の開発・製造・供給は、容器包材メーカーが生き残る条件ともなっている。また、CO2排出削減や再生可能という付加価値を最終製品の価格に転嫁していくという価格戦略も、必要となってくるだろうと予測している。

今後、容器包材メーカーにはサステナブル素材の使用を前提とした事業利益の確保と、「サステナブル」を自社のビジネスの拡大に結び付け、新たな製品開発と提案のチャンスにつなげることが求められていると考える。

 

調査要綱

1.調査期間: 2022年11月~12月
2.調査対象: 飲料容器及び食品用容器メーカー等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2022年12月28日

矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/

 

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