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【工夫と創造この企業】越後札紙 新潟のラベル印刷会社の挑戦 クリーンルーム、デジタル機、そして…

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【2022年5月11日】印刷業界ではデジタル印刷機が一般的になった…と言われるが、未だに商業印刷ではオフセット印刷機が主力、軟包装はグラビアが主力というのが現状だ。
「デジタル印刷機は、アナログ機の代替にはなりえない」と言われる中で、最もデジタル印刷機の導入が進んでいると言われるのがラベル業界、その中でもいち早くデジタル印刷機を導入した会社が新潟にある。

 

正札(呉服札)からラベルへ

越後札紙は1885年(明治18年)に新潟県の小千谷に創業された老舗企業。創業時は、「小千谷つむぎ」という着物が名産品として全国で販売されていた。同社はこの着物に付ける正札(呉服札)という値札の製造を生業にしていた。正札は小さな厚紙とそれについた”こより”が特徴の値札といえば、思い浮かぶ人もいるだろう。


ラベル業界に参入し、第二の創業を行った高野史郎社長

同社の第一の転機は1981年。ラベル印刷機を導入し、ラベル印刷業界に参入した。
高野史郎社長は「着物の需要が徐々に下火になっていく中で、なんとか会社を支えるために新規事業をやらなければならなかった」と話す。


越後札紙のある新潟県小千谷市は錦鯉で有名、また日本での有数の豪雪地帯でもある

当時、社内にはラベル印刷機を使える社員はおらず、高野社長ともう1人の職人が1日だけ印刷機メーカーの担当者から講習を受け、なんとか印刷だけはできるという状態にした。
「品質、なんてそんな生やさしい状態じゃなく、文字が出てればOKというような低いレベルの印刷。当時のお客さんには申し訳なかったが『これしかできません』と言って許してもらった。なけなしのお金で印刷機を買ったので、できるかできないかじゃなく、やらなきゃならに時だった」と振り返る。
それでも、内需拡大とバブル直前の好景気も手伝って、ラベルの需要は多く、導入から数カ月で月数百万円、1年で数千万円単位の売上が立つようになった。

「最初の1カ月はなかなか注文が入らず『これは失敗したかな』と思ったが、想定以上にラベルを必要とする会社は多く、新規事業としてはこれ以上ないほど成功した」と高野社長。昼間はオペレーターが印刷機を回し、夜は社長自身が印刷する営業との二刀流で生産を間に合わせた。

1990年、1991年には半輪転タイプのラベル印刷機を相次いで導入。1992年には製版設備一式を設備し製版を内製化している。
90年代半ばから後半には、ラベル用では高速機で大量品を生産できる輪転機を次々に導入。1996年には500㎡の第2工場を開設するなど、順調に業容を拡大しラベル事業に軸足を移した。
もちろんこの間に、独自研究や同業者から教えを乞うなどで勉強し、印刷技術も飛躍的に向上していった。

 

クリーンルームを設備

同社はラベル印刷の中でも特殊なものを製造できる設備がある。1998年に設備した「クリーンブース」がそれだ。
これは工場の一角を仕切り、内部は除塵システムでクリーンルーム化し、「クラス1000」を実現している。クラス1000とは0.3㎥の空気あたりに粒径0.3μm の粒子が1000個以下という値を現しており、手術室や精密機械の工場での値と同等だ。さらに生産の重要部分は粒径0.1㎛のミクロシリンジフィルターを使用し、より精度の高いクリーン加工が可能だ。

ラベル印刷業になぜこのクリーン施設が必要かと疑問に思う方もいるかもしれないが、半導体などの精密機械の内部管理に使用されるラベルではこのクラス1000が生きてくる。
半導体などでは、小さな塵が部材につくだけでも歩留まりが悪くなり、生産性が落ちる。この相談が精密機械メーカーから持ち込まれたことから、同社でこの設備を用意。現在、「クリーンルームラベル」のブランド名で生産品を販売している。

また、この精密機器に関する知見から2004年には、RFIDタグ(ICタグ)の生産も開始した。ラベルの後加工で使われる、貼り合わせ機能を活用し、インレイ(アンテナ)と基材を貼り合わせてタグを生産するというものだ。ラベル加工機を改造した専用機を用意し、これで比較的安価なタグを実現した。しかい、思った通りにはタグの需要は伸びず、この事業自体は現在、休止している。

高野社長は「他社でできないことをしなければ、安値勝負になる。常に他社がやらないうちに次の手を打つ。当然失敗もあるがチャレンジしなければ結果は出ない」と新規事業への意欲を忘れない。

 

デジタル印刷機で得た知見

この新たな事業への意欲から、デジタル印刷機も設備した。
2012年のエプソン「SurePress4533A」を皮切りに、「同4533AW」、昨年はコニカミノルタ「AccurioLabel 230」など計3台のデジタル印刷機を保有する。


最新設備のコニカミノルタ「AccurioLabel 230」

同社は、印刷速度がある凸版輪転機を保有しているように、比較的大量品の生産を得意としていた。しかし、デジタル印刷機の導入により、極少量の生産が可能になっている。また、デジタル印刷機ならではのロット番号を印刷する可変情報プリントの仕事も舞い込む。
同社は東京に営業所があり、ここで新規の顧客からの受注を多く獲得しているが「少量もできます、可変情報を打つことも可能という呼びかけは、新規顧客の呼び込みにつながっている」。
一方でデジタル印刷機への印象は「やはり速度が遅い、技術的に未成熟で思ったように動かないこともある」という。


エプソン「SurePress4533A」は導入時は苦労も主力機に

「SurePress4533A」も、導入時は速度の遅さやトラブルで「まったく採算が合わなかった」というが、使用する中で「アナログの印刷機とは違う使いどころがある」との知見を得て徐々に軌道に乗せていった。
高野社長は「この知見が先に導入した会社の利益になる」と早期導入の重要性を語る。
たくさんの事例とトラブルの解消法などをサプライヤーと共有すること、また自社だけでその解決法を探りだすことが次の事業の一手につながるというのだ。

同社では今後、デジタル印刷機や自動化機器を活用、IOT、AIを導入し、さらに業務の効率化を実施。現在2交代の現場を1交代に、デジタル印刷機は無人・省力での運転を可能にし、現場コストの削減を図るなどのさらなる挑戦を続けたいとしている。

越後札紙
https://fudagami.co.jp/

 

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