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【この人に聞きたい】ゲイン 杉山伸一社長 印刷業界のデジタル化に貢献 「”変わらなければ”を形に」

【2021年3月22日】今、あらためてデジタル印刷が注目されている。
新型コロナウイルス感染拡大により、イベントの開催の有無が直近までわからない中、短納期、少量、版なしという機能性からクライアントに選ばれることが多くなった。
また、SDGsの観点からも、余分な印刷物を出さないデジタル印刷の利点は、大いに注目を集めている。

そこで出てくる課題が、デジタル印刷の後加工と拡販だ。印刷まではデジタルで、その後がアナログでは、何かちぐはぐ。さらに言えば、デジタル印刷を使ったビジネス、BtoBはもちろん、BtoC、BtoBtoCまでを考えていくことが重要となる。

今回は、印刷業界のデジタル化の推進に貢献してきたゲインの杉山伸一社長に自身のかかわったデジタル化とその考え方、自身の会社「ゲイン」について話を聞いた。

 

印刷業界のデジタル化「草創期」

1970年代、東洋インキ製造(現・東洋インキ)の若手社員だった私は、印刷業界のデジタル化を推進する目的で、同社と富士通の合弁会社であるペティに出向し、プログラミングやシステム設計を学びました。これが、印刷とデジタルを結び付ける仕事の始まりでした。
事業では、コンピューターの活用により電子的に組版するCTS(Computer Typesetting System、)の開発に従事しました。

その後、1979年末から東洋インキがイスラエルサイテックス社と始めた電子製版システム(レスポンス)の国内販売事業に当初より関わり、1997年末までの18年間の日本サイテックスでの経験が私の人生を決めました。
イスラエルというと日本人にはあまりなじみがないかもしれませんが、私はなぜか彼らと気が合いました。彼らは優秀で個々の能力が高く、仕事がしやすい。さらに多くの苦難を経験した民族のせいか、どこか優しいところがあって、私を仲間として受け入れてくれ、困ったときはこちらが何も言わなくとも助けてくれるのです。
そんな風に一緒に仕事をする中で、知人が増え、そこから海外との仕事が広がっていきました。

日本サイテックスではCEPS(color electronic prepress system)による画像処理システムやフラットベッドスキャナ、CTPの販売支援、アプリ開発および需要開拓を推進しました。
この時期に日本の大手印刷企業と一緒に製版のデジタル化など大きなプロジェクトを推進。そこで出会った当時課長クラスの優秀な社員の方たち、また、進歩的製版会社、印刷会社の経営者の方々とのやりとりを経ての信頼関係構築し、それが、大切な財産となりました。

 

ゲイン設立

1997年末に思うところがあり、25年間勤務しました東洋インキ(実際は、ペティと日本サイッテックへの出向)を退社しました。
翌年の1998年には起業し、ゲインを設立、印刷会社様のデジタル化推進、ソフトインフラ構築のコンサル業務をメインに活動してきました。
また、開業と同時に、日本印刷技術協会(JAGAT)の客員研究員を拝命し、会報誌への執筆はもちろん、多くのセミナーで講師も務めさせていただきました。

2004年くらいまでは国内コンサルが中心でしたが、同年に海外企業から日本進出の支援をしてほしいとの要請があり、そのお手伝いをするようになりました。
最初に手掛けたのは、イスラエルHumanEyes社のレンチキュラーレンズ用2Dチェンジングまたは3D表現を可能にする画像処理ソフトウェアの販売代理店でした。

2005年には、やはりイスラエルのWeb to Printソフトウェアを提供する会社から声がかかり国内販売サポートをやっていただける代理店様の開拓を行いました。これもデジタル化にかかわる内容でしたが、少し時代に先行しすぎていたせいか、事業自体は成功とはいえないものでした。ブラウザからテンプレートを選択し、発注者自体が必要項目の入力、画像の割り当てを行い、プレビュー後印刷発注できるというシステムは、以降の印刷業界に影響を与えたと思います。

その後、2008年イスラエルAVT社のグラビヤ、フレキソおよびシール、ラベル印刷用検査装置の国内展開支援に関わりました。

 

TAOPIX社とSCODIX社

2009年、フォト用ECプラットフォーム「TAOPIX」の開発元TAOPIX社(英国)と代理店契約を締結し、2010年2月から国内提供を開始。これが現在、当社の主力商品になっています。
「TAOPIX」は、ユーザーと印刷会社を結ぶ高機能フォトビジネス構築用プラットフォームで、ブラウザ上で写真やテキストをハイスペックで編集し、フォトブックやフォトグッズとして注文・決済ができるオールインワンのシステムです。また、配送システムとの連携も可能です。

TAOPIXに関しては、ゲインが直接代理店として市場開拓、販売、サポートを実施しています。
TAOPIX導入ユーザーは、写真業界のプロラボのようなプロを対象としたサービスを展開することもあれば、一般消費者をエンドユーザーとするBtoCまたは、BtoBtoCの形態でサービスを展開する印刷会社もあります。
動作環境もPC、MACからiPADのようなタブレット端末、さらにスマートフォン対応、大量画像編集をサポートするAIオプション機能の搭載など日々進化しています。

ただシステムを販売・納入するのではなく、お客様のビジネスに貢献できるよう考えていく、新たなビジネス展開の支援を行っていくことが、当社の仕事だと思っています。

2014年には、デジタル加飾システム「SCODIX」(イスラエル製)シリーズの日本国内販売に関し、販売代理店様の営業支援、アプリケーション支援のコンサルも始めました。

「SCODIX」は、UVインクジェットの技術で、印刷にニスや箔を高度に加飾できるマシンで、版や金型を必要とせず、1枚からデジタル加飾を行えるのが特長です。
従来の箔にはできない、細かな印刷に沿った精密な装飾も得意としており、印刷にさらに大きな付加価値をもたらす製品として認知されています。

「SCODIX」の紹介動画

「デジタル加飾することで、印刷料金は、その原材料費や手間賃以上に上がる」というケースが多く、海外のPSP(プリントサービスプロバイダー)では、複数台を導入して活用している会社もあります。

イスラエルの友人は、こんな例えで説明します。
「10億の売り上げがある会社の営業利益率が5%だとすると、5000万円の利益がある。
このうちデジタル加飾を使って全体の仕事の1割を付加価値あるもの(例えば、利益率30%)にすると、これらの仕事から1億x 30%=3,000万円の利益が上がる。残り9割の通常の仕事からは9億×5%=4,500万円の利益が上がることから、合計7,500万円の利益が見込めることになる。
7,500万円の利益をこれまでのビジネスで達成しようとしたら、なんと15億円の売り上げをあげる必要があり、なかなか至難な業となってしまいます。
付加価値ビジネスの本質はここにあるのです。

もちろん、これを実現するためには付加価値の高い商品を売る営業スタイルを持たなければなりません。まさにそれを「やる価値はあるかどうか?」と問うことが、今の印刷業界で必要なのだと思います。

 

ゲインのミッションとは

ゲインは、このようにユーザーに深くかかわる技術革新を提供し、効率化を図ると同時に、印刷会社の顧客も巻き込むインフラ構築の仕事をしていきたいと考えています。

ただ、印刷業界では、人・物・金がオフセット印刷機にバンドルされたビジネス形態が根強く、ある人はこの形態を「岩」と呼んでいました。
あくまでオフ印刷が主業の大きな岩であり、他は副業的な添え物と考える仕事の在り方です。

もちろん、圧倒的にオフ印刷売上が大部分を占めていて、これを動かしづらいことは知っています。デジタル印刷やECなどの新しい取り組みをしても、主業を活かすという名目で結果を出せないうちに抵抗にあい、最終的に消えてしまうということが繰り返されてきました。
岩は重く、大きく、動かせない、ただ、新しい技術やビジネスモデルの発生によって、長い時を経てどんどん削れ、小さくなっていく…。

ゲイン(GAIN)という社名は「Graphic Arts Information Navigator」の略で、業界をナビゲートしていこうという意味を込めてつけたものです。
わが社がクライアントの背中を押し「岩」のような事象も少しずつ力を加えて動かし、あるべき方向に導けたらと考えています。

印刷業界のデジタル化は、製版は100%、印刷は10%、加飾は1%以下という世界で、デジタル化されていない部分には、まだまだ多くの可能性があり、先行者利益があると感じています。

当社は、“「変わらなければ」を形に!”をモットーに印刷業界の変革に貢献できるよう頑張ってまいります。

ゲイン
https://www.you-gain.jp/index.php

 

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