【2016年11月1日】インクの世界に「デジタルインク」という新たな考え方を提唱し始めたイベント「Connected Ink(コネクテッド・インク)」が10月27日、東京都中央区のベルサール汐留で開催された。
主催は米国・デラウェア州に設立されたばかりの非営利団体「デジタルステーショナリー コンソーシアム インク(dsc、デジタル文具協会)」。
レポート2では、ワコムのハイディ・ワン テクノロジーマーケティング担当副社長が、ワコムの立ち上げたプラットフォーム「WILL」について、さらに同社の出井信孝テクノロジーソリューション事業部長が電子ペンの概念を変える「ユニバーサルペン」について講演した。スピーチを紹介する。
ハイディ・ワン テクノロジーマーケティング担当副社長は「広範囲な用途を持つ21世紀のインク『WILL』」と題して、ワコムが進めるデジタルインクシステムについて語った。
「WILL」とは、技術に依存せず、デバイスにも依存せず、ユーザーが自由に手描きのデータを交換できるシステム。
OSや端末が異なっても、このシステムを使ったアプリやブラウザなどを使用すれば、それを感じることなく「デジタルインク」を利用でき、情報交換やリアルタイムのコラボレーションも可能になる。
また、データも蓄積されるため、集まったデータを活用することも可能だ。
これまでデータというと、文字や写真が中心。もちろんイラストもあったが、そのイラストを誰もが自由に書き換えたり、古いデータの再活用をしたりといったことは難しかった。しかし「WILL」の世界ではこれを当たり前にできるという。
同じくワコムの井出信孝テクノロジーソリューション事業部長は「ユニバーサルペンがもたらす新しい体験」のテーマで話した。
井出氏は「電子ペンは現在、広がりを見せている」という。
従来の電子ペンは端末やOSとひも付けされており、使用に制限があるものが多い。
これに対してワコムが目指す「電子ペン」は、3つの取り組みでこれを自由なものにするという。
まずは、電子ペンの基幹部分「ペンカートリッジ」を小型化し、ボールペンの替え芯サイズに収める。これにより、さまざまな形状の電子ペンを制作でき「お気に入りの一本」や「使い分け」が可能になる。
「実現すればペンケースの中に、普通のペンのように電子ペンをたくさん入れて、気分でどれか選ぶことができる」と井出氏。
さらに「ユニバーサルペンフレームワーク」では、どんなディスプレー、端末でも電子ペの信号を共有し、ワコムのペンに限らず使用できる環境にするコンパチブル(互換性)とする。また、紙に書くと同時に電子媒体にも記録されるシステムにより、アナログとデジタルを融合する。
最後に「ペンIDナンバー」をすべての電子ペンに付与することで、「だれがどのペンで書いたのかを整理できる」。記録にデジタルの裏付けを持たせられる取り組みは、デザインだけでなく、学術や法曹系の需要もありそうだ。
将来的には、アナログのペンを使うように、電子ペンを使う社会の構築が目標で「デジタル文具の世界を広げていきたい」と井出氏は期待を込める。
このほか、デジタルステーショナリーコンソーシアム インクのパートナー企業3社が講演を行った。
また、パネルディスカッション「デジタルペンとインクについて」を、ワコムとこれらパートナー企業の担当者が行った(パート3で掲載予定)。
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