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【ちょいとコラム】「drupa」中止! どうなる?印刷機メーカとユーザーの接点 オンラインセミナーの功罪

【2020年12月5日】「drupa2021」がとうとうキャンセル(中止)になりました。
前回はケルンに泊まり、あの大聖堂を眺めたりライン川を眺めたり、3食出てくるジャガイモとアスパラに辟易したりしながら楽しんだことを思い出し、少し感傷的な気分です。

 

もう待たなくていい

「drupa」は、今年3月に2021年への延期が決定された後、ゼロックスとボブストが早々と出展を取りやめ、続くように他の企業も出展取りやめを表明していきました。
さらにハイデルベルグやHPなどホール丸ごとを借り切る超大手出展者も、展示の取りやめを発表しています。

そしてdrupaのテーマは「果たして開催したとして行く価値があるのかどうか?」ということになってしまいました。おそらく主催者も「開催する価値があるかどうか?」と悩んだことでしょう。
今回の決定は、ある意味称賛に値するものです。

 

というのも、印刷機をはじめ機械の購入検討をしていたプリント系の会社からは「メーカーはもう新製品を出し切っているのか?それとも隠し玉があるのか?」という声がで聞こえてきており、どっちつかずの状態が続いていたからです。
機械は今買ったらいいのか、来年まで待った方がいいのか、投資に意欲的で計画的な会社ほど、この悩みに陥っていたようです。

導入してしまえば、よほどのことがない限り5年ぐらいは回さないきゃならないのが大型の設備投資。導入してすぐに別のメーカーから、保有機の課題をクリアした製品が出てしまったなどと言うと、目も当てられません。
それが今回の中止によって、「もうメーカーは、drupaを待たないな」という見方をできるようになりました。

メーカーも「展示会はもうあてにならない」と感じていたようで、ハイデルベルグは今年10月19日(月)〜23日(金)に、ドイツのウィスロッホ-ヴァルドルフで、内覧会「イノベーションウィーク」を開催しました。
また、HPもオンラインセミナーとデモンストレーションを開催。そこから集客し、近隣のショールームで“個別に”製品説明を行っていくようです。

 

オンラインセミナーの評価

オンラインセミナーの賛否は、半々くらいというところでしょうが、関東地方以外の方にはおおむね評判が良いようです。もちろん、単純な話で東京近辺まで行かなくて済むのがうれしいということです。
新幹線や飛行機で移動して、宿泊し、無理やり得意先回りも足して、メーカーや業界団体のセミナーに行ってみたら「全然関係ない内容だった」ということも結構あるようで、その「喪失感を味わうことがなくなった」という喜びの声が全国から届いています。さらに「情報の東京一極集中がある意味解消された」なんて声も聞こえてきました。

セミナーを主催する側も「場所の確保」「出欠の確認」「配布物用意の時間」「お出迎えの時間と要員」「お見送りの時間と要員」がいらなくなったということで、こちらも悪くないとの評判が聞こえてきます(配布物がなくなったというのに悲鳴を上げている会社もありますが…)。

これからオンラインセミナーやデモンストレーションは、双方が欠点を補い合いながら、並行して行われるようになると感じます。

 

それでも足りない部分

ただ、オンラインは、ハンドルの遊びみたいなものがないんですよね。
旧知の人に会って「やあ〇〇さん元気?」「おや、〇〇ちゃん太った?」などというあいさつや、知り合いに新たな人を紹介してもらうようなシーンがありません。インクのにおいや機械の音、説明員にきつい質問をしたときの表情、声色などもわかりにくいものです(これは記者発表も同じ)。
アナログではあった、こんなこまごました「出会い」「フィーリング」のようなものが、デジタル(オンライン)では感じることができません。

感染の再拡大が起こっているこんな状況では、望むべくもありませんが、「セミナーや研修の後のパーティー、交流会、懇親会こそが本番」という方もいます。酒を酌み交わしながらのバカ話こそ、次につながる新しいコミュニケーションの場というのは一つの真実です。

「でも大丈夫!」とあるメーカーのマーケティング担当者。「その気のある人は最後は絶対来ます。今まで無駄撃ちをしていたのが、コロナを理由にしっかりと狙えるようになったんです」とのこと。

さて、いよいよ年明けにはワクチンが登場し、接種が始まれば、紆余曲折はあるでしょうが、今回の事態は終息に向かうでしょう。その時には、都心の空き店舗が一気に埋まり、プリント業界には大きな需要が来るはず…(たぶん2021年夏くらい)。

ちなみに次回「drupa2024」は、2024年5月28日から6月7日まで開催されます。
一方、2021年開催の代替として「virtual.drupa」を、2021年4月20日から23日まで開催するといいますが、どのような内容になるか。革新的な内容を打ち出せれば、2024年につながりそうですが、お手並み拝見と参りましょう。

drupe
https://www.drupa.com/

 

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