【2025年3月5日】2024年は8年ぶりに「drupa」が開催され、多くのメーカーが最新のデジタル印刷機を展示。多くの人がデジタル印刷の未来を考える年となった。
そこで「デジタルプリント潮流」のテーマで、改めて日本の印刷会社を取材し、その現状をレポートしていく。
第3弾は九州を中心にものづくりスペース「DIGTAL Craft Studio」を展開するグッデイに登場いただく。
DIGITAL Craft Studio姪浜店
グッデイでは2016年、ものづくりスペース「GOODAY FAB(グッデイファブ)」を開設。「長尾店」「姪浜店」「久留米野中店」「ひびきの店」「基山弥生が丘店」の5店舗で運営してきた。今年9月、これを「DIGITAL Craft Studio」(以下、デジクラ)に名称変更し、新たなスタートを切った。
この施設は、ホームセンター内の一コーナーを使った「デジタルファブリケーション」の施設。この施設の価値はひとつのコーナーにとどまらず本業とのシナジーも含めて同社にとって重要という。
ホームセンター グッデイは1978年3月福岡県大野城市に1号店を出店。現在は九州を中心に60店舗以上を構える。
実は同社、1949年の創業時はラジオ・アマチュア無線パーツ小売事業からスタートした。このデジクラを運営する嘉穂無線ホールディングスが親会社という関係だ。
「嘉穂無線に行けば電子部品が揃う」と言われるほど、九州では電気機器の部材マニアには知られた企業でもあった。
実は、この取材の前に訪問した印刷会社の社長も嘉穂無線のおもちゃ「エレキット」という商品を買ったことがきっかけで理系に進んだという。
「エレキット」は電子部品を組み合わせて、ラジオやロボットを作成できるという電子工作キット。同社ではこのおもちゃの販売を継続しており、今も人気の商品の一つ。
嘉穂無線ホールディングスマーケティング部課長の島村菜見子氏は「ものづくりは当社の原点」と話す。
同社のヒット商品「エレキット」
この日は、福岡ペイペイドームに近い姪浜店にお邪魔したが、店内は非常に明るく広く、おしゃれな雰囲気。
このコーナーを担当するグッデイ営業本部DIGITAL Craft Studioリーダーの齊田葉月さんは「「お客様との接点になる場所なので、できるだけ入店のハードルを下げるように入りやすい雰囲気にしています」と話す。
店内にはインクジェットプリンタ(姪浜店には設置なし)をはじめ、カッティングプロッタやレーザー加工機、3Dプリンタなどが設置されている。
グッデイは2016年に「GOODAY FAB」をデジタルファブリケーションの店舗として、長尾店にオープン。ホームセンターの中という立地は、その場で材料を揃えられるためデジタルファブリケーションには相性がよく、多くの顧客から利用されてきた。
ユーザーは、本格的な工作好きはもちろん、グッズを作りたいという初心者のファミリー層や女性、子供など、幅広い層から支持を得ている。
オリジナルの記念品や子供の手描きをグッズやキャンバスに出力して飾りたいという要望もかなえている。
明るい雰囲気の「デジクラ」店内
この「GOODAY FAB」が今年10月から、デジタルものづくりのノウハウを活用したオーダーメイドサービスを拡充し「デジクラ」へと生まれ変わった。
従来は店内でユーザー自らが、機器を使い、物品を作成することがメインだったが、今回のリニューアルで、オーダーグッズ製作の需要も取り込む。
10月1日から、グッデイ全店でユーザーからのオーダー注文を受けており、基本のデザインテンプレートも用意されており、スタッフに相談しながらカタチにできるようになった。これにより、今まで以上にユーザーの想いやアイデアを形にするサービスを整え、デジタルものづくりのノウハウを活用したオーダーメイドサービスを拡充するサービスへと生まれ変わるという。
このサービスは、デジクラがある店舗だけでなく、全店舗から申し込むことが可能で、このためのカタログも制作され各店に配布されている。
オーダー注文サービスのメニュー(左)と表札の見本(右)わかりやすく「できること」を説明している
デジクラ大宰府店には、ローランドディー.ジー.のUVインクジェットプリンタ「VersaUV LEF-12i」を設備(一般公開は行っておらず、店舗によっては設置がない)。同機はUV硬化インク搭載。専用用紙だけでなく、プラスチックや金属、木材、ガラス、革などに直接プリント可能。記念日のメモリアルプレートや結婚式のウェルカムボード、名入れ文房具、キーホルダーなどに使われている。
デジクラ大宰府店には、ローランドディー.ジー.の「VersaUV LEF-12i」を設備。↑写真差し替えの可能性あり(先方用意遅れのため)
「ものづくりを重視し、最先端の技術や機器を使うが、できたものの仕上がりは暖かみがあることを知ってほしい」と齊田さん。
プリンタをはじめ、カッティングプロッタやレーザー加工機などを活用するが、それは「ものづくりの楽しさ」と「できたグッズの暖かみ」を伝えたいというグッデイが培ってきた思いがあるからだ。
このためスタッフには、すべての機器の操作ができ、ユーザーにそれを的確に伝えられる能力が求められる。
設置されているレーザー加工機と3Dプリンタ(姪浜店)
齊田さんは「スタッフは最低でも1カ月ほどの研修が必要で、利用者との高いコミュニケーション能力も求められる」と教えてくれた。スタッフは女性がほとんどで、これも機材の操作に不安な初心者ユーザーの敷居を下げているのではないかと感じる。
一方で、グッデイを退職した職員の男性が再雇用でスタッフになっている店舗もあり、資機材の特性や使用法に詳しいことから、さまざまな使い方を提案しているという。
島村さんは「資機材でこんなことができるのか!という使用法をパッと提案してくれるので、周りの若いスタッフも驚きながら勉強になっている」と話し、こういった情報やできた作品の情報は全店で共有し、ユーザーに還元している。
子供の絵をキャンバスにプリントした作品
実際、店内ではこの日もマンツーマンでスタッフが利用者にレーザー加工機などの使い方を説明しており、実際にグッズを作りながらの指導は、非常に理解度や納得度が高いであろうと感じた。
また、デジクラでは月に数回のワークショップを開催しており、これも好評だ。夏休みにはグッデイ全店舗で子供向けの工作教室を行っており、こちらは一番の人気企画になっている。
実はホームセンターは、スーパーやドラッグストアに比べてプライベートブランド(PB)が少ない。「だからPBを目当てにして来店する人は少なく、PBによる差別化は難しい。そういった中でデジクラの役割は重要」と前出の齊田さんは言う。
地域の人がものづくりをしたい時に「デジクラに行けば思った通りのものができるかもしれない」「デジクラで聞けば教えてくれるよ」というモノづくりの拠点としての地位が確実に固まりつつある。
出張ワークショップも行っており、昨年はイベント全体で1万人を超える参加者を集めた。
「デジクラ」ではワークショップを随時開催し、デジタル機器でのモノづくりを広めている
もともと、同社のキャッチコピーは「グッデイならできる」。デジクラは、それをさらに進めて実現している。
齊田さんも「お客さんからの『グッディさんてこんなこともできるし、やってるんだ』という反応がうれしい」「完全オリジナルは敷居が高いが、セミオーダーでオリジナルを作りたいという要望があれば『デジクラ』を思い出していただきたい」と呼びかける。
リニューアルで、デジタルファブリケーションに加え、オーダーグッズビジネスにも参入したこの店舗。プリントや加工を中心にさらに「できる」を増やしていく予定だ。
「デジクラ」担当のグッデイ営業本部DIGITAL Craft Studioリーダーの齊田葉月さん
Copyright © 2025 プリント&プロモーション . ALL Rights Reserved.