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【工夫と創造この企業】イメージ・マジックのDTF「Trans Jet」 ヘッドのトラブル解消 業界全体で品質の向上を!

【2022年8月23日】イメージ・マジックは2021年9月、DTF(Digital to Film)機「Trans Jet」シリーズを発売した。
DTFは、テキスタイルプリント用の転写シートを作成できるシステム。
このシステムで作成され
るオンデマンド転写シートは、従来の転写シートに比べ、作業時間や作成コストを数分の一にするという画期的なもの。世界のデジタルガーメントプリント市場では、同様のシステムが一挙に広がり、急速に置き換えが始まっている。

一方、イメージ・マジックでは、一時期インクによるヘッドの詰まりなどがあり、販売よりも改良を優先する方針をとった。
その後のインク改良と真空パック化により、この問題を解消した同社。今回、これらの経緯や現状、今後の展開について、山川誠社長と情報コミュニケーション本部 ソリューション事業部の新町光宏部長に話を聞いた。


山川誠社長と新町光宏部長

 

ヘッドの詰まりは解消!

――現在のDTFラインアップを教えてください
山川 「Trans Jet DTTS-600」と「Trans Jet mini DTTS-300」。それに加えて今年7月に「Trans Jet DTTS-302」を追加しました。

「Trans Jet DTTS-600」と「Trans Jet mini DTTS-300」

――それぞれの違いは?
新町 「Trans Jet DTTS-600」はプリント工場などで利用が想定される最も大きなサイズのシステム。「Trans Jet mini DTTS-300」は小型でオフィス・店舗用を想定した省スペース型です。
最新の「Trans Jet DTTS-302」は小型でありながらも工場利用に対応した高速モデルともいえるものです。

「Trans Jet DTTS-302」

――ラインアップが整い、本格的な販売ですね。それに合わせてお聞きしたかったのがヘッドの詰まりに関する問題です。どのようなことが起きたのでしょうか
山川 まず発売後、利用環境や頻度によってバンディングが発生しご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。

また、気温と湿度が下がった12月くらいから、詰まりの発生が報告されました。これが何社も続き、あるユーザーでは2、3週間に1回ヘッド交換というケースもありました。
この状況は、我々の責任だと認識し、ヘッドに関してはほとんどの場合、当社負担で交換させていただきました。
また、とにかくお客さまの仕事を止めないように、当社にあるシステムも活用し、プリントをバックアップするという対応をさせていただきました。

この間に、インクの改良に着手していましたが、かなりご迷惑をおかけしたと思います。これは本当に痛恨の極みでした。

 

問題解消そして…

――この問題は解消されたのでしょうか
山川 今年4月、インクの成分を徹底的に改良し続け、さらに真空アルミパウチに充填する方式に変更しました。
インクの成分によってヘッドへの影響が大きく変わります。また、空気に触れることでさまざまな問題が発生しますので、その点を徹底して改良し処々の課題を解消したものです。
さらに、パウチにしたことで、直接インクを補充できるので、人が頻繁にプリンタへインクを補充する必要がなくなり、スムーズな連続出力が可能になりました。

――確認しますが、今はインクのトラブルはないということでしょうか
新町 はい。真空パウチにしてからは、インク起因でのヘッドの交換はゼロです。

山川 これはわかっていただきたいのですが、ヘッド詰まりの現象が確認された時期、当社では機器の販売に関しては、購入希望客と相談を重ねインクが改良される4月まで待って頂くなど慎重な対応をとっていました。
それが少し違う伝わり方をして
「イメージ・マジックのDTFは発売中止になった」とか
「DTFはインク詰まりのトラブルが多い」といった誇張された情報が流れてしまったようです。
現在は解消されており、受注分のシステムは出荷しています。
一方で、残念なのは他にインクの問題が解消せず、ヘッドの詰まりによるバンディングが発生し続けているDTFシステムも多くあり「DTF自体が使えない」という認識が一部にできつつあることです。
これに私は、心を痛めています。

――貴社はトラブルを解消したけれど、他社のシステムはインク詰まりがあるということですか?
山川 他社のことなので私からは詳細を言えませんが、先ほども申しましたように、インクの成分がヘッドの詰まりに大きく影響します。さらにインクが空気に触れることでさまざまな問題が発生し、バンディングが発生しやすくなります。当然ながら、インクを真空パック化しているもの以外は、すべてバンディングの発生頻度が非常に高く、ヘッドへの負担も大きいことから、結果的にヘッド交換頻度も高まります。

新町 当社はインク自体も独自に開発しており、DTFの特性を活かしつつも、ヘッドの負荷を軽減する配合を何度も実験しながら試しました。
一方で、中国からシステムとインクをそのまま輸入し使用している場合や、そのままコピーしてインクを作る場合は、インクトラブルが起こる可能性が高いと思います。

山川 中国製品は欧州では禁止の防腐剤が入っているなどの場合があり、輸出規制がかかる可能性があります。当社のインクはグローバルで使用できない薬剤などは一切含まれておらず、この問題もありません。

 

新機種&インクパックも販売

――インクの問題が解消して万を持しての「DTTS-302」だったということですね。「DTTS-600」よりさらに小さくて問題はないのでしょうか
新町 工場モデルでありながら小型化したもので、プリンタもバインダーも中身の性能は従来機と変わりません。プリント幅が60㎝から30㎝になりましたが、30㎝でも生産できるというユーザーの声があり、これに応えたものです。

山川 小型機は少量生産とも相性が良く、店舗のバックヤードやオフィスなどに置くことが可能です。搬入も台車と一般的なエレベーターで可能なので、設置の手間や移動の手間などが少なく、例えば「イベント会場などで使用したい」という場合でも、ユーザー自身が搬送し設置できます。電源も100V 対応で、この点でも設置のハードルが軽減されています。

新町 加工範囲は当然60㎝幅のマシンに比べて半分になりますが、受注が軌道に乗れば60cm幅機へのサイズアップ、またはDTTS-302の2台目の導入を検討していただければ嬉しいですね。

山川 当社がロフトと提携して運営している「ロフプリ」にも、このシステムを置いて店頭でプリントを行っています。

――貴社製品の販売先ですが、どのような会社が多いのですか
新町 同業が一番多いですね。我々の仲間であるオーダーグッズビジネスの会社です。このほかですとサイン・ディスプレイや軽印刷、内装、建材など今までアパレル製品を取り扱っていなかった会社からも、新たな商材拡張を目論んでの引き合いがあります。

――貴社製品の販売ですが、どのように推移していますか
新町 当初はトラブルや風評阻害があったこともあり、スタートで出遅れて、まだまだ目標を超えてはいませんが、インクを切り替えて以降は好調ですし、当社への期待の声も含め日々問い合わせをいただいています。

山川 今は本体だけでなく、インクだけの販売も行いたいと考えています。

――それはどういうことでしょう?
山川 先ほども申しましたように、当社製品ではないですが、中国から直接輸入したユーザーや他社で購入したDTFプリンタでヘッドの詰まりやバンディングなどのトラブルが多発している話を耳にします。同じヘッドを使用していることが前提ですが、当社のDTFインクとチューブやジョイントを提供することで、ヘッドの負担は大幅に軽減することがわかっています。
自社他社製品に関係なくDTFインクを提供したいと考えており海外のDTFプリンタユーザーへのDTFインク輸出も進めています。

――それだと貴社のシステムが売れなくなってしまうのでは?また、インクが研究されてしまうのでは?
山川 そこは関係ありません。
今問題なのは「DTFの性能がよくない」「DTFは使えない」という悪い評判が立っていることです。これを解消できるのであれば、当社のインクパックを提供したいと思います。研究されてしまうのも致し方ないです。当社はそれより先へ、さらに研究を重ねますので、業界全体のレベルが向上すればいいと考えています。
私はDTFを「ゲームチェンジャー」と言ってきましたが、それを理解していただけるためなら、あらゆることをします。
もちろん、当社製品を導入いただけるなら、それに越したことはありませんが。

新町 いや。ぜひ購入していただき、共に市場を拡大していただきたいです(笑)。

山川 実はシステムのレンタルも可能にしているんです。試験的に1回使ってみて、その良さを味わってほしいとも思っています。

新町 導入前のレンタル以外にも、仕事が忙しくなって、生産が追いつかない場合に「1台貸して」という要望にもお応えします。もちろんそのまま買取していただいても構わないです。

――どのくらいで設置できるんですか?
新町 早いものなら2、3日で設置可能です。「DTTS-600」の場合は、重量屋さんなどの手配があるのでもう少しお時間をいただきます。
設置が間に合わない、置く場所がないという場合は、当社が肩代わりして生産するバックアップサポートも行いますので、安心してご利用いただけます。

――イメージ・マジックのDTF担当チームは
新町 現在9人で、営業が4人、このほかが開発・サポートスタッフ、事務になります。
さらに人員や体制も充実させていきます。

 

DTF市場の今後は

――今後、DTFの市場はどのようになっていくでしょうか
山川 市場をどこまでと捉えるかで変わりますが、DTG(digital to garment)の市場はテキスタイルプリント市場の10数%と言われています。ここにDTFが出てきたことにより「割合が大幅に上がるのではないか」と言われ始めました。
個人的には、テキスタイルプリントの10%程度のシェアをDTFが取るのではないかと予測しています。
DTFは版がいらず、昇華転写と異なりシートで捨てる部分が少ないというもの良いところで、SDGsにも適うもので、持続可能社会を目指す会社にとっても素晴らしい性能があります。
もちろん、幅が広く、大きいものは捺染や昇華転写、ダイレクトプリントを使用する、というような使い分けになるかと思います。

――海外のDTFの状況は
山川 TシャツのDTGは多くがDTFに転換していくと考えます。
今年行われたプリンティングの展示会FESPAでも20社以上、米国で行われるPrintingUnitedでも10社以上がDTFシステムを出展するようです。
今年はさらにDTFの飛躍の年になると思います。この「ゲームチェンジ」に参加するのであれば、今すぐだと考えていますし、当社ユーザーは研究を進め、先行者利益を出しつつあります。
ぜひ一度、当社製品やそのサンプルを見ていただき、その違いを確認していただければと思います。


曲面のあるアイテムにもきれいにプリント可能

 

HOPE2022

なお、同社は9月7日(水)、8日(木)、北海道のアクセスサッポロで開催される「HOPE2022」に出展する。

開催概要
会期:9月7日(水)・9月8日(木)10:00~17:00(8日は16:00終了)
会場:アクセスサッポロ(札幌市白石区流通センター4丁目3番55号)
展示会 Dブース
セミナー 小展示場・レセプションホール
https://www.print.or.jp/event/hope2022.html

HOPE2022公式ガイドブック
https://www.print.or.jp/event/images/hope2022s.pdf

 

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