【2022年3月10日】OpenFactory(オープンファクトリー)は今年1月、「Printio API(プリンティオエーピーアイ)」を発表した。
「Printio(プリンティオ)」は、全国のプリント工場をつなぎ、1点からのオンデマンドプリントを実現するサイトとそのシステム。インターネットとデジタルプリントを使い、ユーザーと工場のビジネスをオンデマンド化し、オーダーから製造、販売までデジタルへの転換を目指すという。
堀江賢司代表は、のぼりや旗、幕などを作成する堀江織物が実家。自身はOpenFactoryの代表として、東京の青山にオリジナルグッズや1mから独自デザインの布を作成できるデジタルファブリケーションの場を提供している。
2020年2月には「Printio」をティザーオープンし、その存在を発信し始めた。
今回は、OpenFactoryの堀江代表に「Printio」のサービスについて話を聞いた。
Printio
https://printio.me/
――Printio開設の目的は
開設の目的は大まかに2つあります。
一つ目は、全国のプリント工場に対して、参加者が協同組合のように横並びで利用できるシステムを提供し、各社が十分な利益を得ながら、製品の販売を可能にすることです。
参加企業に対しては、初期費用は無料とし、注文時に売上に応じてシステム利用料をいただきます。
従来のIT系や大手企業が元請けとなるシステムは、元請けが大きな利益を上げる一方で、工場を持つ会社は、製品を割安に提供しなければならない傾向がありました。
「Printio」では、これを解消したいと思っています。
2020年2月にティザーサイトがオープンした「Printio」
――もう一つは?
ユーザーに対しては、大量生産ではなくオンデマンド生産を提供できます。
大量生産するものを1個からつくれるようにすることは「印刷の新しいあたり前をつくる」ということにつながります。
また「どこで作ったらいいかわからない」という方たちにも、分かりやすくオリジナルのプリント物をつくれる場所を提供したいと思っています。
さらに印刷・プリント物が経費となる「間接材」ではなく、商品や投資の対象となる「直接材」として使用されることを想定し、在庫を持たずに商品を販売できる「ドロップシッピングサービス」の提供も可能になると思っています。
――ユーザーに売り場の提供も行うということですか?
基本的には製品・商品作成までを「Printio」が請負い、販売はエンドユーザーが行う形になると思いますが、販売するフロントエンドの作成も可能です。
メーカーが中間の業者を通さずに消費者へ商品を提供する「D2C」のブランドを、在庫のリスクなく運営するためのバックアップを提供していけると考えます。
――ユーザーは、これまでそれができなかった?
まったくできなかったわけではないですが、いまだに製造の部分は「大量生産に在庫を持ってください。そうしないと高くなりますよ」という作り方がほとんどです。
私は以前から「一番遅れているのは、発注から製造の部分で大量生産が必要なことではないか?」と考えており、この大量生産の部分を改善したかったのです。
「Printio」では、1個からでも適正な価格で作れる。1種1000枚でも、1000種類各1枚でも、依頼者が負担を感じることなく作成できる。そんなサービスを目指しています。
――それを工場が実践するには負担が大きいのでは?
そこにも「Printio」が小ロットに最適化しているクラウド工程管理システムを提供し、製造を効率化することができます。
印刷・プリントでは、データチェックがもっとも人が介在する部分なのですが、営業マンや工務、現場のオペレーターがそれぞれチェックを行い、製品を送り出しています。ただ、これが一番コストと時間のかかる部分なので、チェックを極力少なくし効率化します。また面付なども省力化し、できるだけ人が介在する時間を減らし製品を送り出せしたいと考えています。
これからは、人を集め熟練工にすることも難しい時代なので、その解決にもつながると思います。
その第一歩が今回のAPIの投入で、受注を滑らかにし、工程を円滑にして行くことを目指します。
イメージとしては、チェーンの飲食店が、セントラルキッチンを活用して料理を出すように印刷物やプリントグッズを生産していきます。
工場という点と点をつなぎ、これを分かりやすく集めて、サイトの中で表現していきたいと考えています。
――印刷工程にまつわる課題の解決ですね。社会課題の解決もテーマと聞いています
廃棄物の問題があります。テキスタイル・アパレル市場では、世界で177トン、全体の10%が廃棄されています。テキスタイルに限らずですが、大量に作って、それを大量に捨ててしまうというということも大きな課題です。
また、従来のアナログでの染工の場合、染料などを洗い流すために4回の洗浄が必要でした、デジタルは1回で済み、大量の水を使わなくて済むという利点もあります。
SDGsやESG投資が言われる今、我々もサステナブルを考え、エシカル消費に貢献しなければならないと思っていますので、デジタルへの移行はこれらを促すものです。
――作る側の話が続きましたが、依頼するユーザー側は少量で作れること以外にメリットはありますか
印刷通販は比較的一般的になりましたが、オリジナルのグッズを作りたい、のぼり旗をつくりたい、と言った時に、ユーザーは「どこに頼んだらいいかわからない」、さらに言えば「何をどう頼んだらいいかわからない」というか、「分からない部分が、分からない」という、分からない尽くしが今の印刷・プリントの現状だと思います。
「Printio」のユーザーインタフェースやサイトの仕組みは、印刷の入稿画面が簡単で、価格や見積がすぐ出てきて分かりやすいものを目指しており、これによりプリントに対する「分からない」のマトリックスをほどいていこうと思っています
――参加の工場は初期費用無料ですが、貴社のコスト負担が大変ではないですか
確かにその分はOpenFactoryが先行投資しています。
印刷工場がDXをしているところならいいのですが、参加工場には業務効率化もこちらが無償で提供することになりそうです。
コスト負担を支える方法としては、システムを使ってBtoBの仕事をしており、売上を計上しています。これは仲間内のクローズドな取引のみですが、今後はAPIを通じて仲間を増やし、新たなサービスも増やしていきたいと思っています。
――どのような工場を仲間にしていきますか?
まずはデジタルプリンタが入っている会社というのが条件ですね。
そして、従業員を大切にしている会社です。雇用関係をしっかりしているところは印刷もしっかりしているというのが、私の印象です。
従業員が会社のことが嫌いで「どうでもいいや」と思っていれば、いい印刷物はできません。
とにかく印刷に対する愛があるのか、という部分は見たいです。
その上で「Printioの工場なら」とお客さんが任せてくれるような仕事が理想です。
――仲間を探すのは、どうしているんですか?
もともと、私が印刷屋なので仲間も多く、まずは彼らが中心になってくれています。そこから紹介いただくケース、仲間が仲間を連れてきてくれることも多いです。
あとは私自身が実際に全国の工場を回って、現場を拝見しています。やはり現場を見て、製品や従業員の方を見るのが一番です。
工場を見つけるのは大変ですが、各工場でヒアリングすると課題は共通のことも多く、非常に勉強になります。
――課題というのはどんなことでしょう
例えば、印刷が強い会社はソフトが弱いし、その逆という話もあります。採用しようとしても人が来ない、辞めてしまうといった話も聞きますね。
なによりも「自社を変革しなければ」という根本的な課題があります。
印刷業界の40代の経営者は「この先どうやって食っていこう」「このままで続けていてもダメだ」という思いが強いと感じます。「つぶれる恐怖」というのが、確実にあるんですよ。
私自身も、同じ思いで堀江織物とは別にHappyFabricを始め、OpenFactoryを立ち上げたのです。
――今後の展望を教えてください
今は、まだ家を建てる時の基礎ができた状態。今後、1年ほどはフロントサイド(受注部分)をしっかり作っていきたいと考えています。
また、工程のシステムは、デジタルプリンタや印刷機のメーカーにも入っていただき、作っていきたいとも考えています。
印刷市場が5兆円弱そのうち、オンデマンドプリントの市場は200億円程度です。
まだまだ伸びしろがあり、可能性の大きい市場だと思います。
今回の「Printio API」の発表も、この市場に貢献できればと思って始めたことです。多くの会社に参加していただき、このプロジェクトを実現したいと考えています。
Printio
https://printio.me/
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