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【この人に聞きたい】シール・ラベル業界初のマニュアル本刊行 著者の金光雅志氏に聞く(丸紀印刷社長)

【2021年2月1日】書籍「新人オペレーター必見! 1 冊ですべて身につくシール印刷の基礎知識と基本マニュアル」が2月1日、日報クリエイトから刊行される。

同書は、シール・ラベル印刷で必要な印刷の基礎技術から日常業務手順などをまとめて紹介したラベル印刷業界初のマニュアル本。
内容は、シール・ラベル印刷のオペレーターが知るべき、印刷の基本事項や概念に始まり、印刷技術から後加工技術までを丁寧に紹介している。

今回は、この本の著者、丸紀印刷社長で、自身も印刷オペレーターの金光雅志氏に、執筆の経緯や著書への思い、読者へのメッセージなどを聞いた。

最初は〇〇のつもりだった!?

――書籍刊行とのことですが、どんな内容でしょうか
最初から最後まで読めば、シール・ラベル業界がどのような業界で、どういった仕事をするのかが分かるという内容です。
業界を取り巻く環境や専門用語の説明から始まり、読み進めればシールができるまでの流れを体験するように知ることができます。

――業界初のマニュアル本の刊行。どのような思いで、いつごろから準備されたのですか
私の持っている知識をまとめる作業は、いつかやりたいという思いがありました。先輩たちから受け継いだものをまとめておかないと、いつか失われてしまうでしょうし、今までも形に残るものはありませんでした。
はるか昔に知識をまとめた冊子があったと聞きますが、おそらく今の時代ではほとんど使えない内容になっていると思います。
そんな時に新型コロナウイルス感染拡大で、会社にいる時間が長くなり、特に5月のゴールデンウィークはどこにも行けず、そのあたりからポツポツまとめ始めたという感じです。

――やはり、1冊の本を作ることは相当大変だったのでは
私が主催する「金光塾」で行った内容や、自身のブログに書き綴っていた内容をまとめていったので、ある程度、頭の中で形はできており、再編集で構成できるというアドバンテージがありました。このため、他の方がやるよりは楽だったのではないでしょうか。
しかし、当初は市場に流通させる書籍を作るつもりではなかったんです。

――え!何に使おうと思っていたんですか
自社内の教育ツールで、社員さんやパートさんに読んでもらおうと書き始めました。また、業界内の親しい仲間内で読んでもらえればというくらいに考えていました。
ですから最初は、私がざっとWordで文章をまとめていき、かなりの量ができたところで、当社にいるDTPオペレーターに再編集と説明用のイラストやカットを入れてもらいました。
うちのオペレーターが優秀で、この再編集の段階を見て「なんだ、これなら本にできる」と出版を思いついたのです。

 

自分が欲しかった「指針」

――なるほど。特にここを読んでほしいという部分はありますか
もちろん全部です(笑)。全部なんですが、特にと言われれば、色に関する話に力を入れて書きました。
私が講師を務めるセミナーで聞いても、若い子らは色に関して知らないことが多いですし、かなり腕のあるオペレーターさんも感覚的にはわかっていても、理論までは知らないという方もいました。
私自身も、しっかり調べ直し、RGBやCMYK、Lab色空間、色の混合などを詳しく書いています。
オペレーターをやる中で、理屈が分かっていると、しなくていい苦労をしないで済みますし、5年後、10年後に力量に差が出ます。

――オペレーターが一人前になるまでにはどのくらいの期間が必要なのでしょうか
早い子で3カ月、普通で1年もあれば簡単なものはできます。だいたいなんでもできるようになるには3年前後かかります。

――こういったオペレーションについて、印刷業界ではどのように教えているのでしょう
印刷機や加工機は、作業手順書や取扱説明書はあっても、うまく使う方法は書いてありません。このため、先輩のオペレーターが口伝えで教えることがほとんどですね。
例えば、新人さんに簡単な操作法だけ教えて「まあ使ってみ」と機械を渡す。できれば良し、できなければ「ここが違うな」と言ってあげて刷り直させる、この繰り返しです。

失敗した点を教えてくれるのはいい方で、「違う」と言って先輩がパパっと刷り直して終わりというケース、これが最悪です。任された新人はどこが違うかもわからず、次の作業に向かいます…。まあこれ、ウチの親父と私の話なんですけどね(笑)。

そんな最悪は少ないでしょうが、基本的な使い方を覚えたら、あとはイレギュラーが発生するたびに自分で考えて修正、またイレギュラーが起こって修正という形でオペレーターが成長していくイメージです。


金光社長は自身もオペレーターとして印刷業務を行っている

――「放り出して、技は盗め」というのは、昔ながらの職人さんの教え方ですよね
そうです。でもね「俺の様子を見て真似ろよ」というのは、手順を教えることをこちらが放棄しているんです。
さらに、印刷機の使い方を一通り覚えて「もう少し上手くなりたい」「がんばって印刷をきれいにしたい」と思った時に、これまでは参考になる最低限の指針すらありませんでした。もちろん、ネットで調べても「シール印刷を上手くやる方法」なんて出てきません。
これじゃあ、若い人は続かない。しかし、私も私の仲間も、若い人にたくさんこの仕事に就いてほしいし、この仕事を続けてほしいと思っています。
自分自身「あの時に最低限の基本、指針になる何かが欲しかった」という思いで、書籍を作りました。

 

10年、20年後のオペレーターへ

――ラベルの生産は、印刷から後加工まで一人で行える。そして紙の種類、粘着の種類、加工の種類も多い。網羅するのは大変だったのではないでしょうか
はい。書こうと思えば、題材は多く、細かい部分はいくらでも書けますが、あくまでも新人さんが指針としやすい「基本」が中心で、中堅やベテランオペレータにとってはおさらいになる内容です。
技術書になりすぎないように、専門用語を羅列することを避けました。

――価格の2000円(税別)は安すぎるんじゃないですか
いやいや、あくまでも基本的な内容なので、この価格です。何よりも、たくさんの人に読んでいただきたいと思っているので、経費が出ればいいと思いこの価格にしました。
それに書籍では珍しく、広告も掲載しています。印刷関連のサプライヤーに声がけし、トータル20社が広告を出稿してくれました。声をかけたほとんどの会社が快く引き受けてくれたので、初期の制作費は賄えました。

――印刷関連のサプライヤー、特に大手では、新入社員もリモートワークとなり、現場を知る機会が減っているそうです。そういった方にもお読みいただける内容でしょうか
もちろんです。
シール印刷会社の営業、工務、総務、事務の方などは、ぜひ読んでいただきたいですね。
一通り、資機材の名前や印刷手順が分かれば、発注をもらった時に現場へのアドバイスができるようになり、失敗が減ると思います。仕上げなどパートの方も、全体を理解して仕事をするのと、その部分だけしか知らないのでは、仕事に対するスタンス、やりがいも違うはずです。


書籍の目次。シール・ラベル印刷に関して網羅されている

――自社のマニュアル、ある意味秘密の部分を公開される内容で、業界外からの参入のきっかけになりそうですが、そのあたりの心配は?
もちろん、参入ウェルカムです(笑)。
組合も業界も「人が減って困る」と言っています。アウトサイダーに入ってもらえるなら大歓迎ですよ。マニュアル本が出て助かったという話は聞きますが、会社がつぶれたなんて話は聞いたことがありません。基本の書籍が出たぐらいで、潰れるとしたら「その会社の価値って何だったの?」ということになりませんか。

だいたい、このシール・ラベル業界は、ちゃんと勉強している会社が多いのです。基本を教えたくらいでは、我々の技術やノウハウに追いつけませんし「その先を知りたいなら、ぜひ業界の組合に入って一緒に勉強しましょう」と言いたいです。

私自身も、この本で書いたことは、業界の勉強会で先輩に教えていただいたことがほとんどです。ですから、本はこの道をつないでいく道標のようなものだと思っています。
このため、書籍は出版後、全日本シール印刷協同組合連合会の全会員に寄付させていただきます。

――読者にメッセージを
コロナ禍の中でも、やれることは多いし、シール業界は面白いんです。発展し続けるとまでは言いませんが、もっと面白く、繁栄を長く続けることはできると考えています。
だから、待っているだけでなく、自分たちから若い世代へ呼びかけていきましょう。
この本はその“やれること”の一つです。
これを基本として、分からないことがあったらこの本に立ち返ってほしい。そして10年後、20年後、これよりもっと深い技術や考え方を、その時代のオペレーターたちが理解している状況になればいいと思っています。

聞き手・プリント&プロモーション中村
2021年1月 オンラインで

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