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【導入レポート】キングプリンティング  オフセットからデジタルへ転換目指す 「JETI TAURO H3300 LED」のアジア1号機を導入


【2022年1月14日】大阪府堺市のキングプリンティングは昨年9月、本社工場に、日本アグフア・ゲバルトの超大型インクジェットプリンタ(IJP)「JETI TAURO H3300 LED」を導入した。
同機の導入はアジア1号機になるもので、コロナ禍で影響が出ているデジタルプリンティングの業界でも、久しぶりの華やかな話題となった。

 

映画看板から超大判印刷へ

キングプリンティングは1917年、手描きの看板工房として創業し、映画全盛期には、映画看板の注文が殺到した。このため、手描きより効率よく大量生産することを目的に、海外製の紙幣用オフセット印刷機を輸入し、看板用に改造。これを使用して映画看板を作成したことから、日本でも珍しい超大判の印刷会社として知られるようになった。
1990年代には、5m幅のIJP国内1号機を導入。現在もアグフア・ゲバルトの「JETI MIRA」をはじめ、さまざまなサイズのIJP 30台以上が同社本社で稼働している。


キングプリンティングでは大型のフラッグや店舗用の大判ポスターの仕事が多い

製造しているのは、ビルボードなどの大判の屋外広告はもちろん、商業施設の装飾や店頭タペストリー、イベントなどの演出に使われるプリント物。コロナ禍でも、大手チェーン店舗からの受注が減らず、同社の売り上げは順調に推移している。

また、仕事の7割が関東圏であることから、2020年には東京・大森に東京ファクトリーをオープンし、消費地に近い場所での生産も実現した。


東京・大森の東京ファクトリー

今回導入の「JETI TAURO H3300 LED」は、出力幅が3.3mの超大型IJPで、ロールとフラットベッドの両方に対応したハイブリッド搬送が可能。1.6mのロールを2本搬送し、それぞれ異なるジョブのプリントにも対応する。プリントヘッドはリコー「GEN5」を60個搭載し、最高453㎡/時の生産能力がある。今回の導入機では、インク色をCMYK+Wに加えてLc(ライトシアン)とLk(ライトブラック)を採用し、高い色再現性も併せ持つ。

搬送部分はロールとフラットベッドの両方の機能があるハイブリッド方式。ジャンボロール対応で直径60cm、重量700kgまで搬送でき、ロール交換作業を削減し、300~400mの連続印刷に対応する。

 

可変・納期で印刷の付加価値高める

キングプリンティングでは、数年前からオフセットの代替になるのではないかと、高速インクジェットプリンタの調査を始めた。当初はシングルパスの超高速プリンタを視野に入れたが、同社の想定する速度より生産性が高いことはよいのだが、初期コストが高く、品質はオフセット印刷のレベルではなかった。そこで、安定性や品質面で優れるマルチパスの検討を開始したという。

導入候補は複数のメーカーがあったが、すでに2台の導入実績があるアグフアの技術や保守サービスに信頼を感じていたこともあり「JETI TAURO」に決定した。
ただ、コロナ禍で実物のデモンストレーションを見ることがかなわず、リモートでテストプリントを繰り返しながらの選定となり、導入は予定よりも少し遅くなった。


光弘祐紀専務

同社の光弘祐紀専務は2021年9月16日に行われた記者発表で以下のように述べた。
「JETI TAUROの用途は、主に多店舗展開する企業へ、少量・多品種の印刷物を短納期で提供すること。インクジェットがオフセット印刷と変わりない品質となっており、大量に生産できればオフの代替も可能ではないかと考えている。版替えやインクの入れ替え、調整など、ダウンタイムを考えた場合には同等か、少量・多品種の場合にはIJPのほうが速い場合もある」。

搬送がハイブリット方式のプリンタの場合、日本ではフラットベッドで運用されるケースが多いが、同社では主にロールでの使用を想定している。これは同社での出力物が、全国チェーンの店舗で使用されるポスターなどが中心だからだ。こういったジョブでは、出力する数量は多い時で1000~2000部、少ない場合は数十、中には1点物のプリントをすることもある。頻出の数量は200~300枚で、この数量にIJPは適しているというのが同社の見方だ。

導入の狙いは、印刷メディアの付加価値を高めること。
デジタルサイネージなどの登場で、一部が置き換えられつつある印刷メディア。ところがIJPを活用すれば、1点ずつ異なる情報を載せる可変プリントや、データ入稿からその日のうちに出荷するような短納期にも対応できる。しかし、このことがクライアントには、まだ知られていないという現実もある。
キングプリンティングでは、これを変えていき、クライアントや広告を見る人が「付加価値」を実感できるようにしたいという。

 

オフは縮小、工場集約そして

さらに同社では将来、オフセット印刷の部門は縮小し、デジタルへの投資を拡大していくことも明言した。デジタルプリント化で、現在堺市内に4カ所ある工場の集約も行う。
デジタルプリントはオフセット印刷とは異なり、オペレーターの人数は1人で済み、自動運転も可能な上、熟練度も求められない。これらにより工場は省力化・標準化が可能となる。「今回のJETI TAURO導入は、実験的な意味もあり、日本アグフア・ゲバルトからの全面的な支援も得ている。成功することにより、一気にオフからのデジタル移行が加速するだろう」と光弘専務は将来を見据える。

同社では、クライアントに依頼された広告デザインのデータ作成から、出力はもちろん、多店舗展開の企業には、エリアごと、マーケティングごとに異なるグラフィックを提供する。従来は県単位のような大きなエリア分けだった販促物が、市町村単位でも変更できるのがデジタルプリントの良さだ。

また、印刷するだけでなく、デザインデータの作成から、店舗ごとに必要な印刷物を仕分けしての発送業務も行う。今後はさらに、印刷にかかわる前後の作業や顧客の困りごとを同社がワンストップで解決する「フルフィルメント」への事業進化も進める考えだ。

光弘専務は、「デジタルプリントの特性を生かし、広告主の地域性やトレンドを反映させるなども行いたい。極少量のプリントができるので、それに付随するクライアントの店舗が必要とする作業も取り込みたい。多くの人に印刷物の楽しさや美しさを知ってもらえるようにデジタルプリントを活用したい」と意気込みを語ってくれた。

 

 


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