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goof.labセミナーイベント 日本が取り残される⁉「サーキュラーエコノミー」を印刷業から


【2019年11月29日】セミナーイベント「SDGsで世界が変わる。『印刷』で変える!」が11月28日、品川区大崎のgoofコミュニティースペースで開催され、印刷業や広告代理店、マーケティング会社などから、40人以上が参加した。
主催はgoof.labとサーキュラーエコノミージャパン。

同セミナーでは、欧米で定着している「サーキュラーエコノミー」の概念を中心に、「SDGs」や「未来の印刷メディアの役割」などについてセミナーを行い、講師と参加者が交流した。

冒頭、主催者の一人であるグーフの岡本幸憲社長が「私は、今日、講演していただく中石さんのお話を最初に聞いた時、非常に感動した。その思いを皆様にも伝えたくて、今回この会を開くことにした。セミナーはしっかり時間をとっているので、ぜひ内容を持ち帰ってほしい」とあいさつした。

 

セミナー① 中石和良氏

「未来がサーキュラーエコノミーへの移行を要求している〜世界の潮流と取り残される日本の現状〜」のテーマで、中石和良氏(サーキュラーエコノミージャパン代表理事)が講演した。

私はこの問題について、日本の企業が「横並びで沈んでいくのか?」ということを考えている。日本はこれまで、横並びで、他社の多くが新しいことを始めた後に「自分たちも」と言って始めていた。しかし「サーキュラーエコノミー」に関しては、これをやっていては間に合わない。

2050年、世界人口は100億人、廃棄物は廃棄物34億トン(現在20億トン)で、持続不可能な世界になり、もちろん企業の事業継続も無理になる。解決するには、「人間の幸福、経済成長」と「資源使用、環境負荷」を切り離す「デカップリング(Decoupling)」が必要になる。

2015年に「SDGs」が制定されて以来、資金がESG投資に向いており、2018年は30億ドルにも上っている。これはアメリカのGDPと比べて1.5倍だ。
いままでは「採って、作って、使って、捨てる」リニアエコノミーだったが、今後は「採って、作って、使い、作り続ける」というサーキュラーエコノミーに変わっていかなければならない。

必要なのは、廃棄物を生み出さない設計を行い、製品や原料を繰り返し使い続けるシステムを作ることだ。
循環の仕方は「クレイドルtoクレイドル(ゆりかごからゆりかごまで)」という形になる。生み出す経済機会は2030年までに500兆円、2050年までに2700兆円と莫大だ。
EUは2015年に政策を出し、欧州経済の停滞をこの施策によるリーダーシップで乗り越えたいという思いがある。米国やカナダ、中国、東南アジアもこの考えで動き始めており、動いていないのは日本だけという状態になっている。

印刷関連では「LOOP」というモデルが、ロンドンやパリ、トロントなどで始まっており、来年には日本でも開始される。

この取り組みでは、さまざまな容器を、使い捨てにせず、回収して、洗浄して使用する。
また、ドイツを中心に「ヘルシープリンティング」という枠組みがある。ここでも、印刷物が「クレイドルtoクレイドル認証」をとり始めている。

ここで「横並び」を気にしていて、リーダーシップをとれなければ、日本は沈んでいく。今ならまだ間に合う、ぜひ皆さんもすぐに取り組みを始めてほしい。

 

セミナー② 仲川文隆氏

つづいて「サーキュラー・エコノミー流の印刷がブランド価値を高める」のテーマで、仲川文隆氏(CIRCULAR ECONOMY JAPAN 印刷委員会リーダー、伸和印刷 代表取締役)が講演した。

当社は、創業70年弱で私は3代目になる。私は大学卒業後、コンサルティング会社に入社、その後、2008年のリーマンショック後に会社の業績が厳しくなったことから入社した。

ブランディングが上手な企業と言えば、アップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどがあるが、それぞれ「紙の使用」に関して方針を打ち出している。
アップルは「ペーパー&パッケージングストラテジー」を発表し、どれくらい紙を再生したかなどを、誰でも見えるところで公開している。

アマゾンは、メーカーと取り組み、パッケージを使わず商品をそのまま段ボールに入れる施策を進めている。段ボールに入れたときに振動などのデータをとり、破損などがないようにしている。そもそもEコマースの割合が高まると陳列をしないため、目立つ箱は必要なくなる。

ブランドトップ企業がこのような施策をしているのは、欧米では環境に対する取り組みを「やらないとマイナス」という評価を受けるからだ。しかし日本はまだ行っていない企業がほとんどで「やればプラス」くらいの認識だ。

SDGsも「できていないことを取り組んでいかなければならない」のに、企業の報告書では「これとこれがもうできている」ということを報告して終わりにしている企業が多く、これでは何の意味もない。

印刷会社の場合は、「1文字間違えて全部廃棄」といったことが行われているが、果たしてこんな無駄が必要だろうか。
「A4チラシコート1000枚」はCo2が12㎏~15㎏を排出してつくられている、紙の重さは6.5㎏なので、紙よりも重い量を排出しているということだ。こういったことを、顧客と話し合い、うまく環境負荷を低減させなければならない。

印刷会社に必要なことは以下のことだ。
必要な価値が与えられていない印刷物の削減を進める
リサイクルの品質を上げる
自然界に不要なものを入れない

こういったことを実現するには「ビジョン~組織と仕組みづくり~取り組み」の順番で行わなくてはならない。

 

セミナー③ 岡本幸憲氏

「『人が人である事を忘れないために使う紙メディア』〜テクノロジー×印刷、コネクテッドプリンティングで世界を豊かに!」のテーマで、岡本幸憲氏(グーフ 代表取締役)が講演し、後半は今回登壇した講演者と意見を交換した。

現在、「テクノロジーで紙の新たな価値を作る」ことをテーマに、仲間を集めている。
デジタルは動的で瞬間的だが、記憶とリアルに残るメディアは紙だと思う。しかし、印刷メディアしかなかった時代に、大量に作っていた印刷物のままでは意味がない。

今は印刷物をベストタイミング、ベストメディア、ベストマインドで伝えることが必要だ。あまり価値のないバラまきメディア、ばらまきチラシは減っていくだろう。

当社では「print of Things」を提供しており、代表的なものでは昨年DM大賞を受賞したディノス・セシールの事例がある。また「D.o.C.」というシステムでは、各地の印刷会社が分散処理を行えば、デジタル印刷でもスピード対応でき、急速なボリューム増にも対応できるようにした。

かつて、地方から東京に出てきて、仕事を受注し、それを地方の自社工場で印刷するというビジネスモデルがあった。しかし近年、物流コストが上がって、地方の自社工場で生産していては利益が出ないケースが増えてきた。こういった課題もパートナーシップを組んで最適な場所で作りそこから発送すれば解決できる。
郵便局との提携を考えているが、郵便局もしくは近隣で印刷しそれを送った場合、9700リットルのガソリンが削減でき、CO2は28%削減される。
また「ADプラットフォーム」というシステムでは、広告主とメディアオーナー、プリント企業をつなぐ仕事ができるという構想も持っている。

 

意見交換

岡本 アマゾンが箱を作っているが、これをどう思うか。

仲川 アマゾンで何でも作るし、なんでもできる。これは当然のことだと思う。

岡本 アマゾンのPODはそこら辺の印刷会社じゃ太刀打ちできないくらい安い。全体最適考えるから安くできる。普通の会社は「まず無駄をなくすところから始めよう」と呼びかけたいが、こういったことはサーキュラーエコノミー的にはありなのか?

中石
 その発想はあり。囲い込みでは・できないから、業界全部で共有したほうがいい。印刷業界も同じ「このエコシステムに入るかどうか?」がポイントだと思う。

岡本 よく「お前がブローカーになって仕切るのか?」と言われるが違う。今まで通り、大手から下請けに流す形で、数十%マージンが取られて、実際に仕事をするところは何の儲けもないようなことはやめようと言っているだけ。我々のシステムなら、これを横に展開できる。
ある調査では、ドラッグストアに送られてきたPOPが使用せずに68.2%が廃棄されているというのがあった。こんなものブランドオーナーがお金をどぶに捨てているのと同じだし、印刷会社にとってもよくない。

仲川 捨てられるようなPOPは「効果がない」とされて、いつかなくなってしまう。我々はその先を見越して、一歩先の提案をしておく必要がある。しっかりとデータを取り、効く印刷を行えば、今後もお金をいただけるはずだ。

中石 そうやって捨てられる印刷物は、企業が損するだけの問題ではなくなってしまっていると思う。

岡本
 「どぶに捨てているお金を、別の使い方ができます」というのが我々の仕事。仕事は囲い込むのではなく、他社も交えて展開していくことが大事。紙は使い慣れたツールだが、目標を達成できているかが怪しいと見られている。そこを大事にし、変えていけば、もっと世の中もよくなるはずだ。
「うちの会社も何かしたい」という思いがある方は、声をかけていただきたい。どんどんこの輪を広げて強くしていこう。

 


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