【2025年10月16日】日本印刷産業連合会(日印産連)は10月15日、千代田区神田神保町の出版クラブホールで、印刷業界の環境配慮に関する取り組みを顕彰する「2025GP環境大賞等表彰式」を開催。
表彰式後に「印刷と私」をテーマにしたトークショーを開催した。
式典の記事は以下から
日印産連 「2025GP環境大賞等表彰式」を開催 9団体を表彰 環境大賞ゴールドプライズに「あわしま堂」
併せて開催されたトークショー「印刷と私」では、放送作家・脚本家で大阪万博パビリオン「EARTH MART」のプロデュースを手掛ける小山薫堂氏と、『トヨタ物語』『伊藤忠 商人の心得』などの著作で知られるノンフィクション作家の野地秩嘉(のじつねよし)氏が登壇し、野地氏の取材した企業の話を中心に、企業や経営者の在り方について述べた。
内容は以下のとおり(要約)。
野地 トヨタ関連では、なぜノーベル賞取らないかという技術に「QRコード」がある。あれは生産の時間を短くするためのもの。トヨタ車は4日あれば作れるそうで在庫ゼロ。他社は在庫を売っているために、売れないクルマの分高くなっている。
QRはトヨタの部品のすべての箱についている。かつては文字が書いてあったものがバーコードになったが、バーコードは明るく正対しないと読み取れない、QRは暗くて汚れの出る工場でも使える。
QRは発明というより改善だが、良い会社はイノベーションを起こす会社だと思う。
例えばコンビニのおにぎりも1978年までは海苔がパリパリではなかった。セブンイレブンのどこかの店でパリパリした海苔のオニギリが欲しいということで、あの形に包装が改善され、それ以降日本のどこに行ってもパリパリの海苔のおにぎりが食べられるようになった。これがイノベーションだろう。
小山 数年前に湯川秀樹の家を買わないかと言われて見に行ったが、湯川さんの書で「1日生きることは一歩進むこと」と書いてあった。1日生きて1ミリすすめば、これもイノベーションということだと思う。
野地 伊藤忠もイノベーションがある。あの会社は岡藤正広会長がサラリーマンとしては異例の15年経営している。なぜそんなことが可能か?彼はまず社員の待遇をよくしようとしているからだ。
同社には一流ホテルのようなシャワー室と仮眠室があり、バスタオルの銘柄まで会長が決めている。
また、社内には、ファミリーマートがあり、朝食用にお弁当3つまで無料で提供している。
岡藤会長とトヨタの豊田章男会長が、似ているのは「長期で会社のことを考えていること」。
サラリーマン社長の任期4年では会社は変わらないし伸びない。
小山 熊本の再春館製薬は会長の席が社員食堂の横にあり、会長は社員食堂の厨房に入り、写植を作っている。昼食時には社員の顔を見て「顔色悪いな。何かあったか?」「元気出せ」などと声をかけている。知らない人が見れば、社食のおばちゃんだが、こういった形で社員に気を配っている。
野地 そう!細かいところを考えるのが大事。長期で計画を立てるには、頭が緻密でないとできない。
1年後といった近くで考える目標は低いものになりがちだ。
岡藤会長はサラリーマン社長が長くやる秘訣として「社会のため」と考えてやることと言っている。逆に親族経営の場合は「一族のため」と考えた方がパフォーマンスが上がる。
ただ親族経営だが、トヨタの場合はちょっと違う。
小山 なぜサラリーマン社長は社会のためと言わないといけないのか。
野地 「社会のため」で反対する人はいないでしょ。(笑)
小山 いい会社になるには何から?
野地 労働環境の整備だ。狭くてボロボロの部屋で、古いパソコン渡されても誰も働けない。
就職人気を上げることが大事。それにはまず女性が働きやすい環境にすることが大事だ。
小山 私も十数年前に京都の料亭を引き継いだが、最初に変えたのは藝舞妓さんの控室を作ったこと。それまでは控室は汚い土間のようなところだったが、部屋をきれいにして芸妓さん舞妓さんに使ってもらった。「あそこは良くなった」と彼女たちの口に上るのが大事だ。
野地 トヨタは数字を追っていない。販売店は「その街で一番の販売店になってほしい」と言っている。豊田章男氏は他人や他社と比較しない。社長就任時も「トヨタはいいクルマを作ろう」と言った。普通なら「ワーゲンが900万台なら901万台売ろう」などというのだが、それは言わない。
小山 いい考えですね。
万博のパビリオンのユニフォームでは、一澤信三郎帆布という会社の製品を使った。そこも売上目標がなく。「この層を狙いに行こう」みたいなことは言わない。社員がこういうの作りたいというと「使うてみ」と言って1年使わせる。そこで出てきた改善点を加えて商品化する。
野地 数値追うと疲れる。
小山 前年比という言葉がよくない。前年を下回っていれば悪じゃなくて、下回ってもそこで次にジャンプするヒントが見つかればいいのではないかと思う。
野地 数字を見るよりお客さんを見ることが大事だ。
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