【2020年3月12日】電通の「2019年 日本の広告費」が発表されました。詳しい解説なんかは、これをまとめた北原さんがしてらっしゃるので、ご覧ください。
「2019年 日本の広告費」解説―インターネット広告費が6年連続2桁成長、テレビメディアを上回る
私の方は勝手にプリント&プロモーションに関連しそうな部分をピックアップして、あれこれお話してみます。
さて、この「日本の広告費」は、「わが国の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した」もの。これによると2019年(1~12月)の日本の総広告費は6兆9,381億円。今年から、「物販系ECプラットフォーム広告費」と「イベント」領域を追加しているそうで、前年同様の推定方法では6兆6,514億円(前年比101.9%)と、8年連続のプラス成長でした。
この新たに加わった二つの領域ですが「物販系ECプラットフォーム広告費」とは、物販ECが、プラットフォーム内に投下した広告費のことだそうです。これが2018年は822億円(参考値)だったものが、2019年には1,064億円(参考前年比129.4%)になったそうです。
リアル店舗が、アマゾンなどのECのショールーム化しているというのは、さんざん言われていることです。店頭まで交通費をかけて行って「ほしい商品がない」「店員にしつこくされる」「高い値段で買っちゃった」という経験をするより、サイトで比較して、評価コメントを読んでポチッた方が明らかに便利ですし、当たり前に登録した住所へ一部は無料で配送してくれます。
大型店で家電を見たりするのは、明らかにポチるための補完作業です。アマゾンなら30日以内返品可能ですし、ショールーミングすら不要になる日も近いかもしれません。そこに付随する、POPやディスプレイ、カタログ、チラシなどの印刷物も当然不要になりそうです。
大型店が町の電気店を駆逐して、その大型店が今度はインターネットの無店舗電気店に駆逐されるというのは、実家が電気屋だった記者にとって、なかなか感慨深い時代の流れです。
もう一つ追加された「イベント・展示・映像ほか」は、販促キャンペーンも含む広告業が手掛ける各種イベントや展示会、博覧会、PR館などでの「製作費、シネアド、ビデオなどの制作費と上映費など」を合計したもの、だそうです。こちらは2019年が1,803億円で、なかなかの存在感を見せています。
これまで、他の広告費と一緒に計算されていた「展示会費」や「内覧会費」などを切り分けたものですけど、皮肉にも、コロナショック下で来年はマイナス確実でしょう。ただでさえ五輪の影響でビッグサイトが使えないので、厳しくなっていたのですが…。
とにかく、リアルで会うというのが危険な世の中になってきているので、展示会も含め、それに付随するものはしばらくは減っていくと思われます。
プリント&プロモーションに一番かかわりが深いのはこの領域の媒体です。
看板などの屋外広告な度が含まれる「プロモーションメディア広告費」は、前年同様の推定方法の場合、2兆436億円(前年比98.8%、新推定法方だと2兆2,239億円)と微減でした。
看板屋さんがこんな風にぼやいていました「デジタルサイネージが伸びてきて、大判プリントの仕事がなくなるのではないか?」。
ただ、どうなのでしょう?看板のライバルはデジタルサイネージではない気がします。最近は列車内にもデジタルサイネージがありますが、あまり見られていない。みんなが見ているのはスマホ。新幹線も電光ニュースがなくなると聞きました。目玉は2つ、見るものはスマホにPCそして夢、たまに車窓という感じです。対策としては魅力的なコンテンツをつくるか、目玉を増やすかどちらかしかありません。
ちなみに「屋外広告」だけの広告費は、3,219億円(前年比100.6%)、「交通広告」も2,062億円(前年比101.8%)と増加しています。
ただ、ここにきて、コロナ禍によって非常に苦しい状況になることも見えてきてしまいました。今後はインスタ映えする、マスコミに取り上げられるというような魅力的な媒体発信が求められているのは間違いないようです。
印刷系でも「折込」は3,559億円(前年比91.0%)。新聞の落ち込み具合いとほぼ比例しているので、ここは仕方がないのかと。一方で「その他広告」に分類されている「ポスティング市場」は1,207億円(前年比106.9%)と伸びています。「折込」は新聞と一緒に死ぬか、別の方法で生き残るか迫られています。新聞販売店は出前・デリバリーの事業に進出したところもあるとか。チラシって、別に新聞に入れなくても勝手に配布してもいいんですよね。まあ、あんまり自分に関係ないものが来ると紙ごみが増えてしまいますが。
意外だったのは「DM(ダイレクト・メール)」が3,642億円(前年比99.0%)と微減していること。インターネットと相性がいい媒体で、効果測定もしやすいのに、この結果はちょっと残念です。業界がその魅力を伝えきれていないのではないかと考えます(DM大賞をやっている日本郵便はいろいろ大変だったし…)。
「フリーペーパー・電話帳」は2,110億円(前年比92.3%)。言うまでもなくネットに食われた媒体で、なかなか今後は厳しい。東京メトロのフリーペーパーみたいにすごくレベルの高いものもあるし、結構好きなので残念なのですが、この流れは止まらないでしょう。
「POP」は1,970億円(前年比98.5%)。マスCMが効かない中で、商品を買わせるのはPOPの力だったりするのですが、その店舗もECに売り上げを奪われていく中で、POPも厳しい立場ということなのでしょうか。
そうそう、毎年「日本の広告費」を見て思うのは、「パッケージ」「シール・ラベル」も広告費に入れてほしいということ。
だって、お店で買うときに何を見て買ってますか?CMや商品の評価を思い出して一直線にその商品に向かって突き進んで、レジに直行する人はそうはいないでしょう。決め手はパッケージということは結構多いと思うんです。それって広告じゃないのでしょうか?
このほか、注目すべき市場として電通さんが挙げているのが「商業印刷市場」が1兆9,900億円(前年比99.5%)で、このうち、ポスター・チラシ・パンフレットの市場は1兆2,300億円(同99.4%)と減少傾向。うーん、大幅に増えたか、激減しているわけでもなく微妙に減少してるのに注目されても、業界困っちゃうという感じです。
日本の広告の中心だった「マスコミ四媒体広告費」が2兆6,094億円で5年連続の減少。これに「インターネット広告費」が2兆1,048億円と迫っており、「テレビメディア広告費」単体を抜き去りました。
マスへ落とす広告って、テレビCMも含めて「個別の商品を売る」という点では、あんましリーチしなくなってますよね。記者は家庭用洗剤のCM見ても買いませんし、かわいらしい化粧品やブラジャーの広告見ても購入できません(してもいいけどさ)。実際に個別の商品に関してテレビCMを投下しない大手ブランドオーナーも出てきています。
一方、社名やイメージを浸透させるブランディングの点では、いまだに優れていますし拡散力も抜群です。
マス四媒体の中では、特に印刷に関係の深い「新聞広告費」が4,547億円(前年比95.0%)、「雑誌広告費」は1,675億円(前年比91.0%)と、毎年のように5%、10%ずつ減らしており、最盛期の半分程度の規模にまで縮小しています。よく看板屋さんが「雑誌やラジオより屋外広告の方が売上規模が上なんだから、看板をマスに入れろ」と冗談で言っていましたが、本当にもう、この二つは「元マス媒体」といってもいいくらいかもしれません。
新聞・雑誌に関しては「なんでいまさら、得た情報を印刷して運搬しなきゃならんの?」と考えるのは、ネット時代に生きる人すべての思いではないでしょうか。某所でつぶやかれていたのは「ニュース速報がスマホにバンバン飛び込んでくる中、一昨日の“ニュース”が載っている新聞というのは、もうギャグでしかない」という言葉。元業界紙記者の自分には心が痛い内容でもありますが、妥当かなとも思います。
ちなみに有名投資家で小さなころ新聞配達をしていたウォーレン・バフェット氏も、新聞への愛着から保有していた、米地方紙80紙の株をすべて売却してしまいました。「新聞は課題があるが、可能性がある」とは、いまだにおっしゃっていますが、その言葉は記者が情報流通業者として、別の在り方を見つけたときに生きてくるのだと思います。
というわけで、マス四媒体が減少する中、「インターネット広告」は1兆9,984億円(前年比113.6%、新設項目を除外した前年同様の推定方法の場合)と2桁の伸びを見せ、今年もインターネット無双が続いています。
これも皮肉というかなんというか、マスコミ四媒体事業者もネット広告に出稿しており、その「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」が前年比122.9%と大幅に増加。新設項目の「物販系ECプラットフォーム広告費」も非常に伸びています。
ちょっと長めの文章にお付き合いいただきありがとうございます。消化できていない部分もあるので、言葉足らず(言い過ぎ)の部分があればお許しください。
「日本の広告費」は毎年、春先、桜の咲く前にこの発表があるんですが、今年は発表する方も複雑な気持ちだったのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの感染拡大のおかげで、経済の状況が激変し、このデータと、今後の見込みは、たぶんほとんど地続きじゃなくなってしまいました。「広告は経済のカガミ」なんて申しますが、やっぱり経済が落ち込めば、広告費が削られてしまいます。予言してもいいですが、来年の今頃発表される「2020年度の広告費」はかつてないぐらいのマイナスでしょう(誰でもわかりますが)。
だからと言って、悲観していても始まりません。
ある会社のトップは「どうせコロナでみんなマイナスなんだから、今こそ投資して新しいことやろうよ。赤字出したってコロナのせいだし!」と非常に強気な?発言をしておられました。
このコロナショックで、世界の人の考え方は激変しました。もう時代は「アフターパンデミック」です。ピンチはチャンス、経営資源を集中して、新世界のプロモーションを発信していきましょう。
来年に続く
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