【2025年1月17日】今年も年が明けてしまいました。明けてしまったというのも、なんですが、記者は年始が好きじゃありません…というのは「年始はあまりニュースがない!」。
だいたい明けて5日くらいまでは企業が動いていないので、ニュースになるような発信がほぼないし、昨年のニュースを書くと、ほんの1週間前なのに「ずいぶん古いこと書いているなあ」という印象になってしまうからです。
そこで載せるのが、前年にいただいておいた「年頭所感」。企業・団体などから頂いたトップのご挨拶を載せています。
以前はこれも、「年頭所感下さい」とお願いして載せていたのですが、今は先方から送っていただいたもので関連の深い企業・団体のものをセレクトして掲載させていただいています。
上場企業はPRのためにしっかりとした年頭のあいさつをお送りいただくケースが多いです。一方で組合などの団体はこちらからお願いしないとお送りいただけません。最近は「でもまあいいか!」になっています。「内輪の団体なので外にお出しするようなお話はありません」ということなのだと理解しているのと、どれもあまり面白くないからです。
この大予言、毎年だんだん出す日が遅くなってしまっているのですが、理由はちょっと内容が過激になりすぎて調整に手間取っているから…です(けっこう書いては消しを繰り返しています)。完全版が知りたい方は、ぜひ記者をセミナー講師としてお招きいただくか、飲みに誘って直接聞いてみてください(笑)。
前置きが長くなりすぎました。そろそろ本題「2025年の大予言」を始めましょう。
昨年のプリンティング業界、トピックスで最も大きかったものの一つに「drupa2024」があります。
何度も触れていますがこのイベント、期間中の来場者数は約17万人でした。前回の2016年が26万人で、9万人の減少、出展者も前回からマイナス200社でした。ちなみにピークの1990年が44万人、そこからは半分以上に来場者が減っています。
さて、これだけ来場者も減り、出展者も減った「drupa」ですが、ネット社会になった現代で海外の展示会は、もう意味がないのでしょうか?
記者はそう思いません。
コロナ禍による世界的な封鎖が起こったのが2020年~2023年前半、「drupa」も2020年が中止になったため、2016年を最後に行われていませんでした。その間、ほとんどの人が海外からの情報を間接的にしか知ることができなかったのです。
「体感」というのは大事で、この「drupa」、記者も行くことによって得るものが大きかったです。展示会そのものもそうですが、日本のおかれた現状なども見えてきました。
ショックだったのは空港でのコーラの値段でした。1本3.2ユーロ、1ユーロ170円の時だったので日本円にすると約540円…頭がクラクラしました。
為替で円が弱くなり、さらに賃金もここ30年上がっておらず、日本が「貧乏な国」になったことをひしひしと感じることができました。
今回初めて民泊に泊り、日本から食材(下の写真)を持って行き、外食はほぼゼロにしました。それでも以前の3倍くらいのお金が飛んでいきました。
肝心の「drupa」ですが、来場者や出展者が減った理由が見えました。
この展示会、ドイツのオフセット印刷の組合が後援者として名を連ねています。展示の構成も大手のオフセット印刷機のメーカーが中心で、その周りに関連する後加工機や資材の展示があるというもの。
このため適切なゾーニングがなく、非常に見づらいのです。一部テキスタイルプリントのコーナーなどもありましたが、そこに関連メーカーや資機材が集中しているわけではなく、世界中を席巻しているDTF(Direct To Film)などのブースはバラバラで、各ホールのすみっこに点在していました。
また、中国メーカーの出展が圧倒的に多く「China drupa」という印象も強烈でした。行った人からは「これなら、中国の展示会に行けばもっと面白いもの見られるよ」という声も聞こえてきました。
昨年11月には、中国へのビザなし渡航が解禁となりました。おそらく今年は中国の展示会に行く人が増えるでしょう。そこから中国をはじめとした海外のプリンティング資機材が日本に入ってくる機会も増えると思うのです。ただし、為替が円安に振れれば欧米の資機材は厳しくなるでしょう。
第一の予言「海外の情報と製品がきっとくる」。2025年はそういう年になりそうです。
近年、取材していて面白いと感じる話に「異なるビジネスからのプリンティング業態(界隈)への転身」の事例があります。
一昨年には、サイン業からグッズプリントへ参入した会社、印刷業からサイン業に転身した会社を取材。去年は水引の業者からグッズプリント業界に転身した会社や、ソフトウェアメーカーから3Dプリントに参入した会社を取材しました。
まあ取材をさせていただける会社なので、当然「うまくいっている」「業績の良い」会社さんなのですが、逆説的に言えば、業界を超えて仕事をするような意欲のある会社は伸びているということだと思います。
「drupa2024」の9万人減を見て思ったことですが、「紙への印刷だけ」では限界があるし、すでにオフセット印刷業界だけにとどまっている会社は、機械の更新にも興味がなく、海外の展示会も見に来ないほどに疲弊していると感じます。
そうそう、近々の取材ではオフセット印刷機をすべて廃棄し、デジタル印刷機のみに舵を切った会社も訪問しました。
印刷するものによって異なるとは思いますし、使いどころによってはオフセット印刷が活きてくることも間違いない、そして印刷はなくなるということはないと思うのですが、「うちはオフセット印刷屋だから」「うちはグラビア印刷の会社だから」「うちはサイングラフィックス一本だ」という業の区切りを前面に出した会社は伸びしろが少ないのは間違いないでしょう。
自分の主業と異なる分野も情報取集し、躊躇なく他の分野へ飛び込んでいくこと、これが求められる時代です。日本の人口は減少しつつあり、少なくなったパイの中での生き残りを迫られています。
昨年の流行語の中に「界隈」という言葉がありました。これはネットミーム(用語)で、分野を規定せず、ゆるくその周辺までを表す言葉です。「自然界隈」といえば、キャンプやアウトドア、バーベキュー、山登りなどを含めた趣味の人たちのこと。細かく細分化された分野をゆるっとまとめ上げる言葉として使われています。
我々も印刷の中の細かな分野や、サイン、グッズ、テキスタイルといった紙以外へのプリントも含めて「プリンティング界隈」として捉えることが大事になってきたと感じます。
第2の予言として、今年は「業界」から「界隈」へ、意識を変化させる年になるでしょう。
プリント&プロモーションは10年前から「デジタルプリンティング界隈」をゆるっとまとめてニュースを配信してきたので「界隈先駆者」と言ってもいいのかと自負しています(誰も褒めてくれないので自画自賛)。
テレビ業界でも今、「業界人」の常識が普通の非常識として叩かれていますが、「業界」を意識した会社や団体は、フジテレビを見ても分かるように追い詰められていくでしょう。
さて、どこの会社を訪問してもよく聞く話は「人手不足」。「採用したくても人がいない」「採用しても辞めてしまう」「せっかく育ったオペレーターが退職した」こんな話ばかり。
さらには「賃金上昇」が中小企業には追い打ちとなっています。
政府は「最低賃金を2030年代半ばまでに1500円する」という目標を掲げています。また、ユニクロは大卒初任給を33万円に、ゲームメーカーのカプコンも30万円にするなど、新入社員を厚遇する傾向が大手や有名企業で始まっています。
これってつまり「このくらいの賃金を払えない会社は退場してください」という国や時代の意思なのです。
さてどうしたらいいか、給料を上げるにも限界があるし、上げたところで職業選択の自由がある限り、社員の離職リスクは避けられません。もちろん社会から退場するなんてもってのほかでしょう。
そう思っていた中、昨年のこんなニュースが飛び込んできました。
イメージ・マジック 白糸にインクジェット出力でフルカラー刺繍 「DTEカメラシステム」の先行予約を開始(2024年8月27日)
イメージ・マジックの「DTE(Direct To Embroidery)カメラシステム」。
これはブラザーのガーメントプリンタ「GTX」にカメラとセンサーをプラスしたもの。白糸の刺繍をカメラで読み込み、上からフルカラーでインクジェットプリント可能。高精度カメラシステムにより、プラテン(テーブル)上のどこにどのような角度で置いても、刺繍位置を自動的に認識しプリントできます。
つまり、ポンと置くだけでプリントできてしまうシステムをカメラとセンサーで実現したということ。
中国のデモンストレーションでは、プリントするものをバラバラっと投げて出力するというのもやっていたらしいです。
これまでは、しっかりと位置を調整したり、治具を使ったりで、そこそこ精密な作業が必要だったプリントをものすごく簡単にしているのです。
これは刺繍だけにとどまる話ではありません。さまざまなグッズやサインのような大きなものまで、カメラとセンサーがあれば、同じようなことができるだろう。
「人手不足」と「賃金上昇」による会社の危機。これを回避する方法の一つとして、自動化が推進される「待ったなしの自動化」が3つ目の予言です。
難しい技術を導入するというのではなく、今あるプリンタなどに何かを付け加えることや、搬送装置を置いて、工場をライン化する、単純にデジタル印刷機の導入だけでも大幅な自動化になります。
コロナ禍が開けて、海外の展示会への視察が多くなりそうな今年、やはりそこで見てきたものからの影響が多くなりそうと感じています。
自動化と絡めて、やはり中国からの資機材の流入はあるでしょう。しかし、単純に導入とはいかないのも現実で、日本でしっかりと保守サービスを受けられる環境を持った販社から購入したいものです。
それにはやはりアンテナを高く持ち、国内外の情報を仕入れ、目利きとしての能力を持つことが経営者に求められる。
ぜひ情報収集の一つとして当サイト「プリント&プロモーション」を活用いただきたいと思います。
今年もよろしくお願いいたします。
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