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【工夫と創造この企業】印刷の未来を「場」から再構築する グーフ岡本幸憲氏が描く「グーフキャンパス」の構想

【2026年8月24日】デジタルと紙の融合を掲げ、印刷の新たな価値創出に挑み続けるグーフ代表の岡本幸憲氏。その拠点となる「グーフキャンパス」は、単なる生産工場でも研究施設でもない。岡本氏が構想するのは、印刷という基盤技術を再定義し、業界の構造そのものを変えていくための「共創の場」である。

岡本氏は、東京都大田区出身。実家は印刷・複写関連の事業を営むいわゆる印刷会社で、大学卒業後の20代前半に単身渡米。シリコンバレーなどでインターネット黎明期のIT/WEB関連プロジェクトに複数関わった。グーフの設立は2012年「すべてのITと連携する紙」「紙媒体のアプリケーション化」をテーマに、従来の「機械を持つ」印刷モデルから脱却し、「機械を持たない」中立的なプラットフォームを構築した。
その岡本氏が「工場を持った」という話を聞き、驚きをもってこの場所を訪れた。

「キャンパス」は開かれた拠点に

同キャンパスが設置されたのは横浜市都筑区。都市と産業が交差するこの地で、「閉じた工場ではなく、人と技術とアイデアが混ざり合う場所にしたかった」と岡本氏は語る。
ここには、印刷会社やデザイナー、ITエンジニア、さらには異業種のプレイヤーまでが関わり、案件単位で価値を生み出す“開かれた拠点”として機能している。

グーフ代表の岡本幸憲氏。壁に彼の好きな言葉が書かれているグーフキャンパス内の階段踊り場

「キャンパス」という名称にも、岡本氏の強い意志が表れている。「これまで30年かけて積み上げてきた知識や経験は、お金に換えられない価値だ。それを自分たちだけで抱え込むのではなく、次の世代やパートナーに循環させたい」同氏はそう語り、学びと実践が往復する場としての役割を重視し、単なる施設ではなく、人材と知見が育つ“土壌”として位置付けている。
実際、キャンパスには25人以上のワーカーがいるが、社員は数人、オペレーターなどは他社からの出向や学生もおり、まさに学びながら働いている印象だ。さらには取材中にも印刷機や加工機のメーカー4社とすれ違った。彼らは機械の調整はもちろん、製造にかかわる実験や新たなサンプルの作成などを行っていた。

これらの取り組みは、データを軸にした印刷ビジネスの再設計にある。受注から生産、納品、請求に至るまで、すべての工程をデータでトレースし、可視化する仕組みを構築するというのだ。
従来、印刷会社は「顧客からできるだけ多くの仕事を受注し、できるだけ正確に印刷し、期日までに納品する」スタイルだった。これに対し「ここでは顧客の必要とするもの一緒に考えた上で、どこで、誰が、何を、どれだけ生み出し、どれだけの効果があったのか、すべてわかるようにし、印刷の価値を正しく評価できるようになる」と岡本氏は強調する。この透明性を基盤に、金融機能との連携や新たな収益モデルの構築にも踏み込む。

共創による拡張へ

設備面ではインクジェットを中心としたデジタル印刷機を導入しつつ、特定メーカーに依存しない構成を採用する。「重要なのは機械ではなく、どうつなぐかだ。機械を持つことが価値だった時代は終わり、機能を組み合わせて価値を生む時代になった」と指摘する。その思想は、グーフが掲げてきた“機械を持たない印刷”の延長線上にある。

機材はキヤノンプロダクションプリンティングシステムズの枚葉インクジェットデジタル印刷機「varioPRINT iX3200」やHPの「Indigo7K」などがあり、帳合や製本の加工機は少量の場合ホリゾンを、中量以上をデュプロという使い分けを行う。

岡本氏は「『varioPRINT iX3200』はトナー機12台分の仕事をする。仕事の比率で考えれば利回りが全く違う。これは計算すればわかることで、インクジェットの方が圧倒的に効率がいい」と話す。
このほかラベルやパッケージ印刷用には、エプソンの「Surepress L-4733AW」を導入、またTシャツなどのテキスタイルプリント用にはエプソンのDTG「F2250」を2台用意した。

さらにこれらの機器に関しては、三菱HCと「所有から利用」という機械を印刷会社が持たない形での
での導入を実験している。
これにより市場変容を俊敏に対応できるサブスクリプションを実現し、印刷会社の環境投資とバランスシートという課題解決を目指すという
岡本氏は「能力があり、意志も高い印刷会社であっても、設備及び人材環境が市場とのギャップが起きるとコモダタイズが加速する。…これを乗り越え、全国の敵地生産パートナーを増やす時、彼らの基礎力を尊重し選出するためにも、ファイナンスに新たな選択肢を提供し、共に持続的成長を実現する」と話す。
ちなみに、この地は岡本氏が前職で印刷工場を運営していた場所で、あえてそこを買い戻した形だ。

これまでグーフは工場を持たず、データ連携による分散型印刷「Print of Things」を展開し、グローバルで実績を積み上げてきた。最適な場所で、最適なタイミングと量で生産する仕組みは、物流や在庫の無駄を抑えると同時に、新たなビジネス機会を生み出している。「印刷は社会のほぼすべての産業に関わる基盤技術」というのが岡本氏の考えで、だからこそ、まだまだ潜在市場は大きいという結論になる。

その一方で、その大きな市場について「一社のみでその可能性をすべて取り切ることは不可能だ」とも断言する。だからこそキャンパスを起点に、役割分担による成長モデルを描く。
「縦の成長、つまり基盤や仕組みは私たちが実験しながらつくる。一方で横の展開、地域での広がりは各地のパートナーに担ってもらう」と岡本氏。つまり、キャンパスでの実験で成功したことを、横展開しながらグループ化し、大動脈と毛細血管のように機能するネットワークを全国そして全世界へ構築し、全体で価値を生み出す構造を目指す。
「500億円規模の市場をつくるアイデアはある。ただし一人ではできない。だからこそ、透明性の高い仕組みを前提に、みんなで成長できる形にしたい」。個社の競争から、共創による拡張へ―その転換こそが、日本の印刷業界に必要だと岡本氏は考えている。

印刷をもっと自由に

岡本氏の言葉で繰り返し語られるのが「市場」という視点だ。「印刷は人間社会に密接した超基幹の技術。印刷を使っていない製品を探すほうが難しいでしょ」。その上で「だからこそ、やり方次第でまだいくらでも価値は生み出せる」。

AIの進化によって、データ活用の可能性は一気に広がった。「AIが何をもたらすかはまだ見えない部分もあるが、ポテンシャルは誰もが感じている。その中で、自分たちが持っているデータや経験をどう活かすかが問われている」。紙は単なるアウトプットではなく、データと結びついた“アプリケーション”へと進化するというのが岡本氏の見立てだ。

グーフキャンパスは、その思想を具体化する実験場であり、同時に未来への提案でもある。「印刷をもっと自由に、もっと社会に役立つものにしたい」。岡本氏の言葉には、長年業界に向き合ってきた実感と、次の時代への確かな意思がにじんでいる。

 

グーフ
https://www.goof.buzz/

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