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【工夫と創造この企業】「薄紙印刷」のトップランナー 岩岡印刷工業 佐藤和雄取締役と増田尚久執行役員に聞く

【2021年7月7日】薄紙へのプリントで新たな境地を生み出した企業がある。
岩岡印刷工業は今年5月、薄紙に特化した「うすかるプリント」のサービスをオンラインで開始。は、100枚からオーダーが可能で、多種多様な薄紙をラインアップしたこのサービスは高級品のパッケージとして注目されているという。
このサービスの誕生や技術について、同社経営管理室の佐藤和雄取締役と営業部部長の増田尚久執行役員に話を聞いた。

 

きっかけは保険の約款

――薄紙印刷の開発経緯は
増田 もともと当社は、オフセット輪転機での生産が主業です。その中で、保険会社の約款を記載した冊子なども手がけていました。


営業部部長 増田尚久執行役員

佐藤 そうですね。30年前くらい前から薄紙の印刷は行っていますが、以前は特にこれを武器にはしていませんでした。

増田 10年ほど前、保険業界で保険金の不払いが問題になり、それとともに契約時の約款も見直す動きがありました。
小さくて見えにくいと言われた約款の文字をどんどん大きくしたため、冊子もどんどん厚くなりました。厚くなれば、重くなり、当然配送料金も上がります。そこで当社に「軽くして欲しい」との依頼が入りました。

佐藤 冊子を薄くするには、用紙を薄くするしかない。そこから薄くても印刷できるスキルを磨いていき、「薄い紙=岩岡印刷工業」と言われるようになりました。

増田 当初33gほどの重さだった約款ですが、薄紙化により30gにし、27g、25gと重量を減らし、今は米坪で18gという、ごく薄い紙に印刷できるようになっています。技術的には14gまで可能ですが、郵便のコストが変わらないので18gで止めています。

――すごい!でも相当大変そうな技術ですよね
佐藤 印刷が分かる方なら、薄紙の大変さは分かっていただけると思います。輪転機ですと紙にテンションがかかりますし、破れやすい。破れてしまうと印刷機の中に残ってしまい、掃除が大変なんです。
まあ、人が嫌がることをやってきた結果が「薄紙の岩岡」と指名をいただけるようになったということです。


同社経営管理室 佐藤和雄取締役

――薄紙専用の印刷機を導入しているのですか
佐藤 いいえ。一般的なオフセット印刷機を使用し、薄紙用としています。もちろん細かな改良は加えていますが。
薄紙ができる印刷機は3台が稼働しています。

――そういった技術は他になかったのでしょうか?
増田 まったくないわけではないと思いますが、ここまで薄い紙を印刷する技術は当社だけだと思います。
お客さまからは、他社から「こんなに薄い紙はできない」と言われたというお話を聞いています。
最近は困りごとがあった場合、ネットで検索しますよね。その時に「薄紙」というキーワードを入れると当社が上位に検索されるのです。当社サイトには実際、薄紙の製品を多く載せているので、安心感を持ってご依頼いただいています。

 

商品作りのお手伝いを

――どのようなお客さまが多いのですか
増田 高級品や嗜好品など、こだわりの商品と言われるようなアイテムを販売するブランドオーナーや通販の会社からのお問い合わせを多くいただいています。
また、最近はデザイナーが自ら「物販をしたい」「商品をよりよく見せたい」という依頼も来ています。
お客様の商品への思いやこだわりを一緒に表現することで、他にはない薄紙の良さが伝われば嬉しいです。

――こだわりを持った方の場合、その思いを受けて仕事を進めるのは大変ではないですか
増田 もともと他社との差別化で薄紙印刷を行ってきたので、他社がやらない仕事を多くいただきます。特殊な紙を使った特殊な仕事ですから、その辺りは「覚悟の上」という感じです。
当初、薄紙も印刷通販的にできるかとも思いましたが、実際にはそのようなわけにはいかず。一件ずつ、しっかりコンサルティングさせていただきながら、商品づくりのお手伝いをしています。コンサルはメールや電話で完結する場合もありますし、直接お目にかかりご相談に乗るケースもあります。

佐藤 そして今回、最初に取材いただいた「うすかるプリント」は、こういった方はもっといるだろうと考えて、サンプルを送付できるようにしたものです。
実際、サンプルがないと紙の質感や印刷された場合の色合いなどわからないですからね。

増田 サンプルを見ながら方向性も検討できます。その上で1to1でお話ししないと分からないことが多いです。印刷業界じゃない方に、紙の名前だけを見せて「どうぞ紙をお選びください」と言っても、とても注文できませんから。

――それも「うすかるプリント」の100枚単位というのは、かなり少ないですよね。オフセット印刷でコストが見合うのでしょうか
増田 当社では「台数単価」と言って100枚でも最低限の金額はいただきますので、1部当たりの単価は上がってしまいますが、つくることは問題ありません。

佐藤 他社様の多くは、特色はなしのプロセス印刷のみです。当社は、お客様が必要というなら、特色を入れることも可能ですが100枚ではちょっと金額が合わないかもしれませんね。

――実際の事例などを教えてください
佐藤 宝飾品などの高級品やブランド品の包み紙で活用されるケースが多いです。
あとは高級ホテルで、お部屋のアメニティーのカップを包むのに、ホテルのロゴを入れて使用するなどといった事例もありました。
また、かなりこだわった通信販売のアパレルやコスメのパッケージ、美術品とのコラボなどもあります。

 

アフターコロナに向けて

――コロナの影響はありましたか
佐藤 当然ですが、旅行のパンフレットなどは大幅に減りました。コストダウンでWebのみに記載し、配布をやめたという会社もありました。

――それは厳しいですね
佐藤 しかし、Webサイトにはない紙の良さもあります。パンフレットはパラパラめくれば、今まで候補としていなかった旅行先やプランが見つかる場合があります。紙は気づきがあるのです。
また、パンフレットのように、モノを渡すという行為も重要です。渡されたもので心は動きます。
ただ、我々もそうですが、コロナ禍で対面営業ができない、渡せない状況が続いています。そこで当社もサンプルを作って配布を始めたという面もあるのです。

――派生商品もあると聞きました
佐藤 PALEVEIL(ペールベール)ブランドの「超薄紙メモパッド」や「ノート」などがそれです。受託して印刷するだけでなく、商品を作成したいと考え、文具を作ってみました。ご覧になった方からは「薄くて、かわいい」「きれいだ」などの感想をいただいています。
商品はメモパッド2種、ノート13種をラインアップしています。

――お客様にメッセージを
佐藤 薄紙は見た目が美しく、感触が楽しい以外にも、環境対応という利点もあります。「薄いのは無理」と、ほかの会社さんで断られても当社へご相談ください。

増田 「薄紙」を代表にオペレーターにとっては、やりたくない仕事というのはありますが、当社は果敢にチャレンジします。ぜひ薄紙印刷をご活用ください。

 

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