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【最前線リポート】「日本版OOHメジャメントデータ」の計測が開始 屋外広告の接触を統一指標で可視化

【2026年8月25日】日本のOOH広告業界を横断する組織「一般社団法人 日本OOHメジャメント協会(JOAA)」は、OOH(アウトオブホーム)の広告接触を客観的な共通基準で評価できる「メジャメントデータ」の計測を今年3月30日に開始した。本格公開はまだ先になるものの、まずは計測の開始をもって業界の新たなフェーズが始まった。
また、この取り組みが評価され、日本広告業協会(JAAA)「第61回吉田秀雄記念賞(グループ賞)」を受賞している。

左から山田ひとみ氏(ビデオリサーチ)、中野僚氏(同)、波多野友美氏(NKB)、宮本守氏(ジェイアール東日本企画)

バラバラだった評価基準 約3年の議論を経て統一へ

日本のOOH広告市場では長年、各媒体事業者社が独自の基準でデータを運用してきた。広告主・広告会社・媒体社の間で評価基準にばらつきが生じており、同一基準での出稿判断や取引の最適化が難しい状況が続いていた。
「それぞれが独自のデータを持っていたため、広告主から見ると何を基準に判断すればいいかわからない状態だった」と関係者は振り返る。

海外の市場ではメジャメント指標の導入によりOOH広告市場がV字回した

英国や米国など海外の主要市場では、業界共通のメジャメント指標の導入によりOOH広告市場がV字回復を遂げている。共通指標が存在する地域では、効果の推測をしやすく広告主が信頼し予算配分を合理的に行ったとされる。
「海外では共通メジャメント指標の導入が市場拡大および市場回復の大きな要因になっている。日本でも同じことができるはずだという思いが出発点だった」。

これらを踏まえて2023年4月、国内でも同様のデータインフラ整備を目的として、業界横断の議論が本格化し、JOAAの前身となる日本版OOHメジャメント標準化検討会が発足。媒体社・広告会社の両者が、共通課題として一つのテーブルに着き議論を重ねた。約3年にわたる議論を経て共通データを構築し、今回の計測開始に至った。

取り組みは大きな評価を得て、日本広告業協会(JAAA)「第61回吉田秀雄記念賞(グループ賞)」を受賞。「OOH共通指標策定の取組みを広告業界内で認めていただけたという意味でも、受賞は大きな励みになりました。今回の受賞を契機に、JOAAメジャメントデータの活用が業界全体に広がることを期待しています。」と同協会の波多野友美氏(NKB)は話す。

提供する指標と計測の仕組み

提供する指標は「インプレッション」「リーチ」「フリークエンシー」の3種類で、1時間単位・365日24時間で取得され、性別・年代(10代刻み)別に算出される。「任意の期間で、単独または複数の広告媒体におけるVAC(Visibility adjusted Contact ※見たと推定できる人)ベースのユニーク数と延べ数を提供できるようになる。将来的にはリテールメディアなどもメジャメントデータとして提供できるようになる」と宮本氏は説明する。

OOHは、テレビやYouTubeのように視聴者が能動的に選んで見るメディアとは異なり、街中や交通機関の中で受動的に接触するメディアだ。「テレビやYouTubeは能動的に接触するメディアだが、OOHは受動的な接触が基本。その特性を踏まえたうえで、どのくらいの属性の人にどのくらいの量で広告を見ているかを可視化することに意味がある」と宮本氏。
ビルボードとバス停広告など媒体形式によって計算方法とパラメーターが異なる点も、現実の接触実態に即した設計の表れだ。


計算方式で中心となるのはVAC(Visibility Adjusted Contacts)。
VACの算出法は
「媒体周辺にいる人数(OTC=Opportunity To Contact)×視認調整係数(VA)」
通勤・通学など反復的な動線による接触も計算に組み込まれており、OOHならではの生活動線との親和性を数値化するものとなっている。

日本版のデータ生成にはNTTドコモ、unerry、ブログウォッチャー、Allunite A/Sの4社が保有する多様なデータソースを統合した独自の推計ロジックが用いられる。複数のデータソースを組み合わせることで、単一データでは捉えきれない人流の実態をより精度高く推計することを目指している。
現時点での計測対象媒体は、エムシードゥコー、ジェイアール東日本企画、東急エージェンシー、パス・コミュニケーションズ、メトロアドエージェンシー、LIVE BOARDの6社が保有する屋外広告・バス停広告。交通広告を中心とした媒体。対象エリアは関東(1都6県)・関西(2府4県)・東海(3県)となっている。
「まずは東京・大阪・名古屋の主要3エリアから始め、OOHを取り扱う事業者・媒体社に会員として加わってもらいながら、計測の輪を広げていきたい」と宮本氏は話す。

今後は駅広告媒体の拡大と車両広告媒体の追加、第3四半期GPS・ビーコンデータを用いたモデル強化、第4四半期には全国展開を予定する。データはJOAA会員企業向けに専用ダッシュボードおよびAPI(予定)で提供される。

デジタル広告の環境変化が追い風に

JOAAの会員の対象はOOHを取り扱う媒体事業社・広告会社など。会費は各社のOOH広告年間売り上げに一定の係数を乗じる設定となっており、計測にかかる費用はこの会費で賄われる。
宮本氏は「OOH市場はロングテールで、大手から中小まで幅広い事業者がいる。売り上げに応じた会費体系にすることで、規模に関わらず参加しやすい仕組みにした」という。

今後は、大阪の広告業組合など地域の業界団体との連携も視野に入れており、アナログサイネージを含む幅広い媒体への対応も今後の課題として挙げられている。

Cookie規制をはじめとするデジタル広告の環境変化を背景に、かつて一世を風靡したMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)が再び注目を集めつつある。MMMは、テレビCM、Web広告、OOH広告、SNSなど、複数の施策や外部要因が売上にどれだけ貢献したかを統計的に分析・数値化する手法。ROI(投資対効果)の可視化や、最適な予算配分を導き出すために活用されている。

現在、全盛のインターネット広告は、Cookie問題などでデジタル計測の精度が問われている。一方で、MMMは総合的な効果測定が可能なため見直されていることから「OOHの共通指標が加わることで、統合的なマーケティング効果の把握がより現実的になる」との声も上がっている。

JOAAでは、OOHに関する質と量の両面でデータを出すことで、広告会社が独自の分析や提案できる業界共通の土台づくりを進めていくとしており、計測開始を起点に、OOH広告を定量的な根拠を持って語れるメディアへと転換させるこの取り組みは、始まったばかりといえる。

日本OOHメジャメント協会(JOAA)
https://www.joaa.jp/

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