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【レポート3】紙のエレクトロニクス応用研究会 鉄道きっぷを”お宝”に変身させたあの印刷会社が登場!

【2016年9月28日】紙のエレクトロニクス応用研究会の「第8回技術研究発表&交流会」は9月26日、東京都千代田区外神田の「3331Arts」で行われた。

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紙のエレクトロニクス応用研究会は、銀ナノインクによる電子回路のプリントを中心に、紙を加工した技術やサービスについて研究している。
レポート3では山口誉夫さん(山口証券印刷インセンクス事業部 Creative&Printing ディレクター)が講演した「鉄道切符の変遷と共に学んだ重要なこと」についてまとめた。

山口誉夫氏 「鉄道切符の変遷と共に学んだ重要なこと」

山口証券印刷は1921年(大正10年)創業の老舗印刷会社。鉄道きっぷの印刷を中心に発展し、磁気カードやICカードも手掛けている。

紙のエレクトロニクス

講演では、まずきっぷと発券機の歴史について触れた。
現在のきっぷの原型は、英国のトーマス・エドモントソンまでさかのぼるという。
初めて聞いた名前なので、調べてみたところ、彼はニューカッスル・アンド・カーライル鉄道ミルトン駅駅長だった時に、新タイプのきっぷを考案したそうだ。厚紙を使用した今のA型(長さ3cm、幅5.75cmの横長)と呼ばれるきっぷがそれで、今のJRや私鉄の近距離きっぷはみなこの大きさ。さらにエドモントソンは足踏み式で、きっぷに日付を刻印できる装置も開発し、財を成したという。

さて、山口証券印刷は東京を中心とした鉄道や地下鉄の発展とともに成長してきた会社。
しかし、きっぷから磁気カード、ICカードへと乗車方法が変遷する中で「いずれ、きっぷがなくなるのではないか」という予測を立て、新たな施策を打ち出してきた。

紙のエレクトロニクス研究会

従来、きっぷは列車に乗る際の行先や日付という「情報伝達」の手段だったが、今はそのデザインやある場所でしか買えないなどの「付加価値」を持った商品として生まれ変わりつつある。
山口証券印刷では、駅や列車の周年記念やさよなら記念きっぷ、アニメや漫画などの“聖地”とコラボレーションしたきっぷなど、多くの企画に参加して、ヒット商品を生み出している。

山口さんは「きっぷは活字の印刷物で、そのスタイルは一つのデザインになっている。ICカードなどにより、きっぷレスなる一方で、活字媒体は“お宝化”し始めた」とその変遷を振り返り、これらは可変印刷が可能というきっぷの特性を生かした「パーソナルオンデマンドビジネス」にもなるうるという。

山口証券印刷では、コンビニエンスストアなどで販売しているプリペイドカードも「手がけており、「iTunesカード」や「Vプリカカード」などは、同社も製造している。これらのカードは本来の金券の代わりという目的はもちろん、描かれたキャラクターの愛らしさや希少性といった面でもファンがおり「使った後も捨てない人が多い」そうだ。


イメージ
コンビニエンスストアでは多くのプリペイドカードが販売されている

山口さんは「バリアブルでデザイン性の高い商材を手掛けるには、従来の印刷業が行っていた元請けと下請けといったような印刷業界のシステムではついていけない。マーケターやディレクターと印刷会社がパートナーとなり、直接クライアントに会って話をするという仕組みを作っていかなければならない」と呼びかける。

なるほど、クライアントから代理店、代理店から印刷会社、印刷会社から下請けという伝言ゲームのせいで、まったく違ったものができるというのはよく聞く話。

山口さん自身、「Creative&Printing ディレクター」という肩書を使っているのは、「単なる印刷業を脱する」意識の表れなのだという。

紙のエレクトロニクス研究会

ぜひ、山口証券印刷のサイトをご覧いただきたい。興味を持った読者には新しい発見があるかも?

山口証券印刷
http://www.yamaguchi-card.com/

 

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