【2025年11月7日】丸紀印刷(大阪市平野区)は1970年創業のラベル印刷業者。創業から半世紀以上にわたり、シール・ラベル分野で確かな技術と柔軟な対応力を武器に、業界内で存在感を高めてきた。2014年の法人設立以降は、少量試作から大量ロットまで幅広く対応する生産体制を整え、オンデマンド印刷や打ち抜き加工など多様な設備を駆使して、顧客のニーズに応えている。
社長の金光雅志氏は近年、本社を移転、九州工場を新設し、ラベル印刷に関するコンサルや本の出版も行った。デジタル印刷機を導入してさらに躍進する同社について金光社長に話を聞いた。

――印刷関連のコンサルの仕事を始めたそうですね。ラベル印刷会社の経営者としては珍しいですよね。きっかけは?
きっかけはコロナです。
もともとラベルの組合などで勉強会の講師をしており、ラベル印刷の技術に関して他社から「教えてほしい」という声もありました。私自身も後進指導のためにコーチをしたいと思っていたのですが、仕事が忙しく「リタイアした後に」と思っていたのです。
しかし、新型コロナの感染拡大を機に、オンラインで遠くの人と話をする機会が増えました。そこで「これがあれば、本業をしながらでも他の方の支援ができるんじゃないか?」と考えるようになったのです。
「コンサル開始」の宣言をしたところ、エプソンさんが比較的早く手を挙げてくれました。
――印刷会社ではなく、まずメーカーがというところもすごいですね
彼らとすれば、シール印刷会社の知見がまだまだ必要なので、実際に使っている会社が教えてくれるなら聞いてみたいと思ったのでしょう。メーカーの場合は機密条項もあり、2社をコンサルするというわけにはいかないので「他メーカーに取られたくない」と思ってくれたのかもしれません(笑)。
同社は出版の際も、本に広告を出して支援してくれました。
――なるほど。出版もされましたね。ラベル印刷業界では本を出される方も珍しいです。こちらもなぜ?
最初は社内教育ツールとして作成しました。これもコロナの期間中、外に出られなかったので、仕事の技術や進め方、考え方をマニュアルとしてまとめました。私が主催している「金光塾」で解説した内容や、自身のブログに書いたものがあり、それを再編集したものです。
Wordでつくったものを、うちのDTPオペレーターに渡し、カットなどを入れてもらった上で冊子にしてもらいました。
出来を見て「これなら本にできる」と出版に至ったわけです。

――出版からさらにセミナーなどのお仕事が増えたと聞いています。さらに2019年には新本社に移転されましたね
かつては新旧本社の2拠点でやっていたのですが、仕事量が増えて行き来が大変だったのと、両方とも手狭になってきたことが理由です。もう一つは、近所にちょうど良い物件が出たタイミングで、年商が3億円超えたこともあり、思い切って新しい本社に移転しました。
――2019年というと、コロナ禍の直前でした。投資のタイミングとしては大丈夫だったのでしょうか?
コロナの時に考えたのは「他と逆を行こう」ということでした。
他社が守りに入るならあえて攻めようと考え、当社はコロナの自粛期間で印刷機を3、4台買っています。また、営業担当者も新たに採用して、受注を増やす努力もしました。

コロナ禍の中、新たな印刷機を導入。これには先を見据えた金光社長の思いがあった
――それは大胆ですね。私ならじっとコロナ明けを待ってしまいます
コロナはいつか終わるのは分かっていました。だから仕事量が戻ってきたときに戦える体制が欲しかったんです。
仕事が増えれば印刷機は足りなくなりますし、仕事を進めるために営業は絶対に欲しい。
実際、業界をよく知った営業マンが入ってくれて、大阪を飛び回ってくれています。これまでのお客様はもちろん、彼が縁のあるお客様に営業をかけてもらって売り上げを増やしているのが現状です。
高校新卒も去年は1人、今年は2人採用し、従業員は29人になりました。コロナ前2.5億円程度だった売上は、今期4億円に到達出来るかもしれない水準まで伸ばすことが出来ました。
――8月に第2工場をオープンしてショールームの機能も持たせたそうですね。そこにデジタル印刷機も置くと聞きました
第2工場は6月末には稼働を始めて、8月には開所しました。そこにエプソンの「Surepress L-4733AW」を導入したんです。

開設した第2工場にはエプソンの「Surepress L-4733AW」を導入
――デジタル機を入れた理由を教えてください。またどんな仕事をしていくのでしょうか
現在、アナログ機は効率化できるいっぱいまで稼働させています。そこには500枚以下の少量の注文も来るのですが、それをデジタル印刷機で行えば最適化できると考えています。
また、新規の仕事の見本刷りなども、このマシンでできると思います。カラーで改版が多い仕事もデジタルむきでしょう。
さらに今年は入った新卒の社員はDTPの求人で来た子なので、簡単なデザインが出来ます。その子にデザインしてもらったものをデジタル印刷機でシールにして、SNSなどで拡散もできないかとも思っています。
今はBtoBの取引がほとんどですが、そのうちにBtoCも取り込んでいきたいと思っているので、そこで力になるとも考えています。
カッティングプロッタも導入しており、これで少量の抜き加工が可能になりました。ぜひ生かしていきたいと考えています。
――丸紀印刷はどのような方向にむかっていきますか?
少し前に経営理念を作り直しました
・感謝の気持を忘れず努力を積み重ね成長の喜びを味わう
・お客様から信頼され感謝される存在で有り続ける
・シール印刷業界の発展に貢献しすべてのステークホルダーの笑顔を集める
これらを掲げ、「シール屋のプロフェッショナル」として業界の発展に寄与したいと考えています。
私が常に言っていることは「従業員の給料を増やしたい」です。中小零細でこんなに利益あげ、たくさん給料が出ている、そんな企業にしたいと思っています。
売り上げは着実に伸びているので、今からは中身を整えていくステージに入っています。
本業はシールに据えてますが、仲間と一緒に異なる仕事にもチャレンジしていきたいです。
「丸紀印刷なら困ったときに相談すれば、なにがしかの形にしてくれる」そんな風に言われる会社を目指しています。
――シール・ラベルやパッケージ、印刷業界全体はどのような動きで、そこに提言はありますか?
クライアントは、今まで安いところを探そうという動きばかりでしたが、安くてもまったく品質がダメというケースが多くあり、彼らはそれに懲り始めています。
つくる側も安いからといって、品質安定しないものを出せば、自分たちのバリューを落としているのです。大手ほどその傾向がありますが、これはやめた方がいい。
もう一度自分たちの価値を見直し、業界自体の価値の底上げをしなければと思っています。
その一助になれればうれしいです。
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