【2025年12月24日】TOPPANは、国産の大規模言語モデル(LLM)を活用した次世代自動同時通訳システムの実証実験を、熊本城ミュージアム「わくわく座」(熊本市中央区)で実施した。
実証期間は11月23日から12月22日までで、外国人来場者向けに多言語字幕を投影し、翻訳精度や表示速度などを検証した。
同実証では、NICTが進める事業「グローバルサウス連携におけるスタンドアローン同時通訳の実証」の一環として、NICT製の国産LLMを用いた自動同時通訳エンジンを使用した。LLMによる同時多人数(1対N)への自動同時通訳の実証は日本初としている。

検証の舞台となったのは、わくわく座2階「ものがたり御殿」で上演される「熊本城VRガイド」。演目中のセリフやナレーションを対象に、英語、中国語(繁体字)、韓国語の3言語へ自動同時通訳し、舞台横の字幕スクリーンに同時表示した。来場者の母語に応じて複数言語を並列表示する方式とした。
実証結果では、各言語において翻訳内容の理解度や体験価値の向上が確認された。一方で、発話速度や言語によっては字幕表示が追従しきれない場面もあり、今後の改善課題として整理された。また、多くの来場者から、他施設への展開を期待する声が寄せられたという。
同実証で用いたシステムは、翻訳用途に特化して軽量化した小型LLMを採用し、ノートブック型PCのみで稼働するスタンドアローン構成とした。インターネット接続を必要とせずに自動同時通訳を実施できる点も特徴である。
わくわく座では、外国人観光客の増加を背景に、多言語対応による鑑賞体験の向上を進めてきた。今回の実証を踏まえ、同館では実証期間終了後も2026年2月27日まで同システムを稼働させ、引き続き効果検証を行うとしている。
TOPPANは今後、LLMを活用した次世代自動同時通訳システムの開発を進め、2026年度中の実用化を目指す。将来的には、展示施設やイベント、インバウンド対応など幅広い場面への展開を図り、多言語サービス全体での事業拡大につなげる考えだ。
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